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サイクル ロードレース コラム 2024年4月19日

【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ:レビュー】過酷な気象条件のなかカタジナ・ニエウィアドマが涙の初優勝、約5年ぶりの勝利

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ

優勝のニエウィアドマ。左がフォレリング、右がロンゴボルギーニ

27回目の開催となる女子のワンデーロードレース、フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌが2024年4月17日、ベルギーのユイを発着とする距離146kmで開催され、キャニオン・スラムレーシングのカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド)が初優勝。1770日間もロードレースでの勝利に見放され、2021年は2位、他大会を含めて53回も5位以内にゴールしてきた29歳が、久々の勝利を挙げて大泣き。「耐え忍んでいればいつかは成功する」とコメントした。

連覇を狙ったチームSDワークス・プロタイムのデミ・フォレリング(オランダ)は2秒遅れの2位。4秒遅れの3位はリドル・トレックのエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)。

フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ

序盤のフレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ

ベルギー南部のワロン地域で水曜日に同日開催される男子ロードの女子バージョン。87回目の開催となる男子と比べれば、27回と歴史は浅い女子レースだが、平均勾配9%、最大斜度26%の坂《ユイの壁》にゴールする特異な舞台設定は同じだ。男子レースがこの全長1.3kmの激坂を4度上って終了した後に、女子レースが1周半してフィニッシュする。つまりユイの壁は2回上る。

大事なことなのでもう一回記述すると、2024年はフレーシュ・ワロンヌ史上初めて、女子レースが男子の前座ではなく、その日のファイナルとして設定されたのだ。

「女子選手も男子選手と同じように注目されるべき」とレースディレクターのヤニック・タラバルドンが今回の改革を説明している。「この新しいタイムテーブルが女子の自転車競技にもたらす効果は絶大だ」

女子が男子の後にゴールすることで女子の競技距離を長くすることが可能になったという。4日後の4月21日に開催されるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュファムもこの法則が適用された。

「以前はフィニッシュが早かったため、短いコースを設定せざるを得なかったが、フレーシュとリエージュはどちらも女子自転車ロード大会のモニュメントだけに、UCI(国際自転車競技連合)が規定する女子レースの最長160kmに近づけるべきだと考えた」とレースディレクター。

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ|Cycle*2024

「フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌのスケジュール変更にとても満足している。私としては、以前のものよりもはるかにいい」とイタリアチャンピオンのロンゴボルギーニ。

「以前のスケジュールでは、私たち選手は午前5時起床と恵まれていたけど、チームスタッフはレースに備えるために前日の夜遅くまで働いていて、当日は非常に早く起きなければならなかった。この新しいスケジュールは私たちのパフォーマンスにとっていいものに変わった」

こうしてフレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌはさらに世界中の自転車ファンが注目するレースとなり、7月のツール・ド・フランスと肩を並べる189カ国に国際配信され、ソーシャルメディアチャネルと公式サイトの両方でレースをフォローできるまでになった。

今回のレースに日本選手は出場しなかったが、20年前の2004年のことを忘れてはならない。エリート男子とは別ルートで女子ロードレースのワールドカップ第5戦として女子レースが行われた。ゴールはどちらもユイの壁(ミュール・ド・ユイ)だった。オランダのファームフリッツの一員として出場した沖美穂が、レース序盤から積極的に前に飛び出し、ドイツ選手と50km以上の大逃げを決めた。最後は吸収されて42位。チームエースも優勝できなかったが、熱心なファンは沖の果敢な走りを優勝以上に賞賛していたという歴史がある。

過去26回大会のうち、実に13回がオランダ選手の手にわたってきた。2015年から2021年までアンナ・ファンデルブルッヘンが驚異の7連覇を果たし、2023年はフォレリングがユイの壁の上り始めからフィニッシュまで先頭で駆け上がった。今季は未勝利のフォレリングだが、優勝の大本命だった。世界チャンピオンのロッテ・コペッキー(ベルギー)がアシスト役に回った。

139選手が14時02分にユイの中心地にあるグランプラスからスタート。男子レースがユイの壁を4周回する時間帯は、ユイ郊外を走った。気温は5℃まで下がり、雨が雪に変わっていた。優勝を狙うチームエースたちが過酷な気象条件にたまらず脱落していく。

フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ

1回目のユイの壁で逃げる2選手

レースは超過酷で、走り始めると雨が激しく降り始め、気温もかなり低くなったことをニエウィアドマは痛感していたが、「今日は自分の日だ」と感じていたという。

「こんなハードレースの恩恵を受けているので、気象条件も味方してくれた。チームも寒さに震えながらもポジティブな雰囲気を保っていた。チームメイトは素晴らしく、私を気遣って、必要なときはいつでも私を前線に連れて行ってくれた」

それでもレース終盤は雨が止み、寒さも比較的穏やかに。1回目のユイの壁では、3選手が先行。2分半ほどで追うメイン集団は50人ほどで、チームSDワークス・プロタイムが先頭に陣取り、キャニオン・スラムレーシングもこれに加わった。決戦の舞台となる周回コースでは先行選手の吸収と逃げを打つ選手の抵抗が繰り返され、残り5kmで元オランダチャンピオンのリーアンヌ・マルクス(ヴィスマ・リースアバイク)が単独アタック。これを追ったのが連覇をかけたフォレリングだ。

勝負はやはり最後のユイの壁までもつれこんだ。残り1kmのフラムルージュを最初に通過したのはマルクスだったが、フォレリングが残り700mで追いついて抜いた。過酷な激坂でニエウィアドマとロンゴボルギーニがフォレリングに追いつく。

フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ

ユイの壁でメイン集団を牽引する有力チーム

「デミ(・フォレリング)が責任を持って上りのペースを握っているのを見てうれしかった」とニエウィアドマ。

「昨年、彼女がここで私に差をつけたことは分かっていたけど、コーチの助けを借りてトレーニングでこの対策をシミュレートし、彼女のリズムにうまく対処する準備は十分にできていた。だから今回は自信があった。もちろん、レースでは何が起こるかわからないけど、私は目が覚めて、これがその日だと信じた」(ニエウィアドマ)

残り200mでニエウィアドマが先行。3人のエースによる限界勝負となり、ニエウィアドマが最初にフィニッシュラインを通過した。

「この勝利は私にとって大きな意味がある。夢を追う全ての人たちに前進を続ける勇気が与えられたことを心から願っている。私はこれまで何度も失敗し、ニアミスも何度も経験したけど、信じることをやめなかった。努力の報いはその先にあり、私たちを待っている」

フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ

ニエウィアドマがフォレリングとロンゴボルギーニを引き離した

フィニッシュラインをトップ通過してからニエウィアドマはようやく片手を挙げた。3日前のアムステルゴールドレースでチームSDワークス・プロタイムのロレーナ・ウィーベス(オランダ)がウィニングポーズを取りながら、追い込んできたヴィスマ・リースアバイクのマリアンヌ・フォス(オランダ)に負けたことが頭にあったからだという。「残り100mで勝てたと思っても祝わないつもりだった。周りを見回してエネルギーを無駄にしたくなかった。ただ全力を尽くした」

2位のフォレリングは「昨年と同じように、最後の登りでも自分のリズムを見つけようとした。できるだけ長く、上り始めから先頭をキープし続けてそのままゴールしたかったけど、カタジナは私を逆転して勝つ力を持っていた。でも彼女が勝つのを見られてうれしかった」とゴール後に勝者を称えた。

フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ

死力を尽くしたトップ3がお互いを称える

「自分のコンディションには満足している。もちろんまだ改善の余地はあるけど、最大の目標はシーズンのもう少し先にある。アムステルでは前のレースよりもよかったし、今日はアムステルよりもよかったので、このまま続くといい。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ ファムは今日のレースとは大きく異なる結果になると思う」

ロンゴボルギーニはゴール後に、「今日の私たちのリーダーはガイア・レアリーニ(イタリア)だった」と告白した。

「彼女は寒さのせいで苦戦してしまい、最後はチャンスを掴むように私に伝えてきた。厳しい気象条件のため、とても大変な1日だったけど、チームメイトが暖かい服や温かいお茶を用意して気遣ってくれたことがとても幸運だった。ニエウィアドマは完璧な位置で最後の勝負を開始した。男女ともに残り150mで差がついた。カタジナはとても尊敬している選手で、彼女が勝利に値する選手だと思う」

文:山口和幸

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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