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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ:プレビュー】フィニッシュ直前までぎりぎりの駆け引きが繰り広げられるユイの壁が勝者を選別する
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかユイに始まり、ユイに終わるフレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ
ユイに始まり、ユイに終わる。ワンデークラシックとしては女性版「イル・ロンバルディア」トロフェオ・アルフレド・ビンダに次ぐ歴史を誇るフレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌは、今年もいつもどおりにユイの町から走り出し、おなじみクラシック屈指のユイの壁のてっぺんで勝敗を競う。
ただし第27回大会では、3つの極めて重要な変化が、女子チャンピオンたちを待ち受ける。まずはいつもならミュール・ド・ユイの直前に立ちはだかってきたコート・ド・シュラヴ(全長1.3km、平均勾配8.1%、最大勾配13%)が、工事中のせいで今年は使用できない。つまりは集団を小さく削る役割を果たす難所が不在で、例えば男子レースは、いつもならユイ3回通過のところを4回に増やして対応する。
高低差図
一方の女子レースは、レース自体の距離を大幅に伸ばした。そもそも今年はヘント〜ウェヴェルヘムが171km、ロンド・ファン・フラーンデレンが163km、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュが153km、パリ〜ルーベが148.5km……と女子クラシックの走行距離は軒並み過去最長記録を更新。フレーシュ・ワロンヌ女子もやはり、昨大会より約18kmも距離を加え、大会史上最長の146kmで争われる。
また昨季まで見どころと言えば、終盤のコート・デレフ(2.1km、5%、9.8%)→シュラヴ→ユイの連続登坂×2回だけに凝縮されていたが、今年はスタート直後から手強い難所が襲いかかる。たった7kmほど走っただけで第1の登りコート・ド・ジヴ(2.1km 5.5%)に突き当たり、その後も立て続けに37.6km地点コート・ド・クリエール(1.4km 7.1%)、53.4km地点コート・デヴルアイユ(2.6km 5.2%)へと挑まねばならない。3つの急坂が挟まれたおかげで、レース序盤から活発なアタック合戦が巻き起こるに違いない。
それでも、フレーシュ・ワロンヌとは、なにがなんでも「ユイの壁よじ登り競争」なのだ。泣く子も黙るミュール・ド・ユイは、登坂距離こそ1.3kmと短いながらも、平均勾配は9.6%と凄まじく高い。かつての王者を讃え「クリケリオン・シケイン」と呼ばれる最難関ゾーンに至っては、最大勾配26%にも達する!
フィニッシュ直前までぎりぎりの駆け引きが繰り広げられる
そのユイの壁は、フィニッシュ直前まで、ぎりぎりの駆け引きが繰り広げられる場としても知られている。ところが1年前のデミ・フォレリングは、麓からフィニッシュまで先頭で駆け上がった。後のツール・ド・フランス総合覇者は絶対的な強さを発揮し、激坂で追いすがるライバルたちを、非情にも次々と振り払っていったのだった。
ただ昨季はストラーデ・ビアンケとドワース・ドール・フラーンデレン、さらにアムステルゴールドレースを制し、絶好調でフレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌに乗り込んだフォレリングだが、今年はいまだに両手を上げられていない。もちろん「単なる時間の問題」と本人は決してパニックには陥ってはいないし、「脚質的に最も適している」と自負するアルデンヌクラシックで、再び勝利カウンターを回し始めたいと願っている。
コースマップ
フォレリングの初戴冠を含め、過去26回大会のうち、実に13回がオランダ選手の手にわたってきた。2015年から2021年までアンナ・ファンデルブルッヘンが驚異の7連覇を果たしているが、それ以前は、間違いなくマリアンヌ・フォスの時代だった。2007年から2013年までの間に、キャリア通算251勝を誇る「女王」は、フレーシュ・ワロンヌを計5度制した(+表彰台が1度)。
36歳の春もオムループ・ヘットニュースブラット、ドワース・ドール・フラーンデレン、そして大会前週のアムステルゴールドレースを小集団スプリントで鮮やかに勝ち取り、いまだに陰りを知らぬフォスだが、どうやら大会3日前の時点ではフレーシュ・ワロンヌへの出場は未定とのこと。
パリ〜ルーベからトロフェオ・アルフレド・ビンダまであらゆる地形で勝利をもぎ取り、今季もワンデー3勝と安定した強さが光るエリーザ・ロンゴボルギーニは、フレーシュ・ワロンヌ・フェミニーヌに関しては12回の参戦で、いまだ表彰台3度止まり。自らに足りないタイトルを、この4月にこそつかみ取りたい。過去10回参戦し、表彰台に2度上がってきたカタジナ・ニエウィアドマや、6度参戦し最高位2位のセシリーウトラップ・ルドヴィグにだって、優勝のチャンスは大いにあり。
今年は大会史上初めて、男子の勝敗が決した後に、女子がフィニッシュを迎える。すっかりヒートアップしたユイの壁が、最後にもう一度、強き女性たちのアタックで燃え上がる。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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