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【Cycle*2024 ボルタ・ア・カタルーニャ:プレビュー】ポガチャル、クスらが参戦! どのステージも登坂力が問われるワールドツアー屈指の山岳ステージレース
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介最終日はバルセロナ、モンジュイックの丘で決着
パリ~ニース、ティレーノ~アドリアティコと続いたステージレース戦線は、スペインへと舞台を移す。同地に春の到来を告げるのが、北中部の地中海に面したカタルーニャ州をめぐる「ボルタ・ア・カタルーニャ」。今年は3月18日から24日までの期間で開かれる。
この大会を一言で表すなら、「上る」。ひたすら上るのである。クイーンステージを勝てばリーダージャージも舞い込んでくるかというと、必ずしもそうではない。どのステージも最低ひとつはタフな登坂区間が控えていて、それらをクリアしないことには最終目的地のバルセロナにはたどり着けない。
だから、選手もチームもありとあらゆる戦略を駆使して戦う。2021年はベストメンバーを配したイネオス・グレナディアーズがチーム戦で他を圧倒し、2022年はセルヒオ・イギータ(ボーラ・ハンスグローエ)がステージ狙いの選手と逃げて自身はリーダージャージを奪取。前回は大会初日からプリモシュ・ログリッチ(当時ユンボ・ヴィスマ)とレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)による一騎打ちの様相となり、最終的にログリッチが勝っている。
今回も例年に違わず、カタルーニャは“山岳ウィーク”である。
今年も前回までと同様にサン・フェリウ・デ・ギホルスで開幕。コースは少し変わっていて、スタートして早々に無印の上りで脚試し(当初は3級山岳と発表されていたが、後に解除されている)。以降、3つのカテゴリー山岳を越えて、スタート地へと戻ってくる。全体を通して細かい上下が多く、初日から消耗戦となりそう。残り約20kmで2級山岳アルト・デ・サントグラウに達したら、フィニッシュめがけてのテクニカルなダウンヒル。レース距離は173.9km。
第2ステージで早くも総合争いの形勢が見えてきそうだ。前日の基点であるサン・フェリウ・デ・ギホルスを通過しつつ、針路は内陸へ。186.5kmの行程中、130km地点から本格的に山岳地帯へ入る。途中で1級山岳を越えたのち、最終登坂の超級バルテル2000へ。山岳名にある「2000」は標高を表しており、フィニッシュラインが敷かれる山頂は標高2135m。この大会ではたびたび登場していて、2021年大会の第3ステージでは前述したイネオス・グレナディアーズのチーム戦が展開され、昨年の第2ステージではジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)がログリッチとレムコに先着しステージ優勝している。
舞台はスペイン、カタルーニャ州へ
176.7kmに設定される第3ステージも、山・山・山……。スタートしてすぐに1級山岳ポルト・デ・トセスに向かって上り始め、頂上通過後は長く緩やかな下り。中間スプリントポイントを挟んで再び上りに入ると、標高1715mのポルト・デ・カントへ。また下って、最後は登坂距離18.4kmのポルト・アイネへアタック。フィニッシュラインは標高1960mに設けられる。2021年に登場した際は、エステバン・チャベス(当時チームバイクエクスチェンジ)が単独で逃げ切っている。
2日間走ったピレネー山脈に別れを告げる第4ステージ。コースなかばの2級山岳で標高900mまで上がるが、その後は下ったのちにフラットなレイアウトに。主催者によれば「平坦ステージ」にカテゴライズされるようで、登坂区間を乗り切ったスプリンター陣が勝負できるチャンスステージと見られている。レース距離は169km。
第5ステージでいったん、バルセロナ近くまで戻ってくる。前後半1つずつの2級山岳にパンチがあるが、リーダージャージ争いの趨勢にはあまり影響を与えないとみられる。何より、逃げにチャンスの大きな1日と捉えるべきかもしれない。レース距離は167.3km。
続く第6ステージで、ピレネーに逆戻り。5つ設定されるカテゴリー山岳は、超級から3級まで、その難易度は幅広い。特にコース中間部にそびえる超級コル・デ・プラデル以降は個人総合争いが激化すると見られ、1級山岳をひとつはさんで、登坂距離5.8kmの1級ケラルトの頂上フィニッシュまで激しい攻撃戦が繰り広げられることだろう。誰がどこで仕掛けるか、そしてどんな駆け引きが展開されるかが大いに見もの。この日の獲得標高は4085m、レース距離は154.7km。
そして最後を飾るのは、おなじみバルセロナ・モンジュイックの周回コース。スタート後一度内陸の丘陵地をめぐって、モンジュイックへと入っていく。ただ、勇者たちの行進といったムードは一切なく、最終日の勝利をかけた激しいバトルになる。昨年は最後の最後までレムコとログリッチのマッチアップになって、レムコがステージ優勝、ログリッチの個人総合優勝確定で締めくくった。
オリーブ畑と風力発電
前回、覇権を争ったログリッチとレムコは今回欠場。彼らに代わって大きな注目を集めるのがタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)の戦いぶりだ。
開幕2日前のミラノ~サンレモを3位で終えたが、再三のアタックには「敗れてなお強し」の印象。これが今季最初のステージレースとなり、目標に据えるジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの「ダブル・ツール」に向けた山岳シミュレーションの機会になる。この大会を走るのは初めてで、いかにコースを攻略するかも興味深い。ジョアン・アルメイダ、ジェイ・ヴァイン、パヴェル・シヴァコフといった、“ポガチャル・シフト”に指名されている選手たちもメンバー入り。グランツールに向けてビルドアップを図る。
昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ制覇がいまなお印象的なセップ・クスは、ヴィスマ・リースアバイクのエースとして乗り込む。この大会での最高成績は2021年の個人総合12位だが、状態さえ問題なければ今回は上位入りすることだろう。ティレーノ~アドリアティコで好走したキアン・アイデブルックスも控えており、今回もチームレベルの高さが見られるはず。
大けがからの復調気配を示しているエガン・ベルナルは、ゲラント・トーマスとともにイネオス・グレナディアーズの中核を担う。山岳ステージでポガチャルらと競えるようだと、いよいよ完全復活がみえてくる。また、イーサン・ヘイターには平坦や丘陵区間でのステージ優勝が期待できる。
地元の雄・モビスターは、エンリク・マスとナイロ・キンタナの両輪がそろい踏み。ともに今季は目立ったところを見せていないが、このレースにはコンディションを合わせてくることだろう。このところ勢いのあるエイネルアウグスト・ルビオも山岳で強さを見せるはず。
アルウラー・ツアーを勝ったサイモン・イェーツは、おおよそ1カ月半ぶりのレース出場。春に向けて再調整を行ってきているが、その成果を今大会で見せられるか。パリ~ニースで1勝を挙げたアレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ)は、この大会を知り尽くすイギータと双頭体制を組む。
毎回確実に上位を押さえてくるミケル・ランダは、心機一転スーダル・クイックステップのエースとして参戦。前回は山岳逃げを繰り返したギヨーム・マルタン(コフィディス)、シーズンインから絶好調を維持するレニー・マルティネス(グルパマ・FDJ)、スペインのレースとの相性が良いヒュー・カーシー(EFエデュケーション・イージーポスト)、ウノエックスモビリティに今季合流し総合エースを担うアンドレアス・レックネスンあたりの走りも押さえておきたい。
前回スプリントで2勝を挙げたカーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)や、今季は上位進出多数のブライアン・コカール(コフィディス)あたりが平坦ステージでは強さを見せる。ツアー・ダウンアンダーを勝ったスティーブン・ウィリアムズ(イスラエル・プレミアテック)、5年前にマトリックスパワータグの一員として日本のレースを走っていたオールイス・アウラール(カハルラル・セグロスRGA)、アジアから世界へと羽ばたくモンゴル人ライダーのジャムバルジャムツ・サインバヤル(ブルゴス・BH)の走りも押さえておきたい。
そして、ステージ通算5勝を挙げる“カタルーニャ・マエストロ”のトーマス・デヘント(ロット・デスティニー)は、今季限りで一線を退くことを表明しており、最後のボルタ・ア・カタルーニャ出場だ。
18のUCIワールドチーム、7の同プロチーム、合わせて25チームがスタートラインに並ぶ今大会。最後に大会の歴史に触れておくと、1911年初開催で、1935年に始まったブエルタ・ア・エスパーニャより長い歴史を持つ大会である。もともとは秋に開催されていて、後に夏へ。3月下旬に時期が移ったのは2010年のこと。長くボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ協会が主催してきたが、近年はツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)が実務を行っている。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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