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サイクル ロードレース コラム 2024年3月14日

【Cycle*2024 ミラノ~トリノ:レビュー】アルベルト・ベッティオルが30km独走で逃げ切り 最古のワンデーレース、ここに新たな神話が生まれる

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ミラノ〜トリノ

ミラノ〜トリノ表彰台 優勝ベッティオル、2位クリステン、3位ヒルシ

1876年に初開催、最古のワンデーレースといわれるミラノ~トリノの2024年大会は、アルベルト・ベッティオル(EFエデュケーション・イージーポスト)がフィニッシュまでの30kmを独走。集団の猛追をかわして逃げ切ってみせた。

「ミラノ~トリノは世界で最も美しいレース。イタリア統一直後に創設された背景もあって、イタリア人ライダーはみんな優勝を夢見るんだ。僕だけでなく、イタリア自転車界全体の勝利だと思っているよ」(アルベルト・ベッティオル)

ここ2年間はスプリンター向けのコースレイアウトだったが、今回は中盤から後半にかけて4つの丘越えを用意。あらゆるタイプの選手たちにチャンスがあるとされ、実際にスプリンターたちはこの区間で苦しめられることになる。

マルコ・ムルガーノ(コラテック・ヴィーニファンティーニ)、マルセル・カンプルビ(Q36.5プロサイクリングチーム)、マッテオ・ヴェルシェ(トタルエネルジー)のリードで始まったレースは、しばし彼らとメイン集団とが4分程度のタイム差で推移。フィニッシュまで100kmを切ったのを境に集団がペーシングを本格化すると、その差はあっという間に縮小。結局、終盤2つの重要な登坂区間を前に集団は3人を捕まえ、フィニッシュまでの37kmで新たな局面を迎えることとなった。

この間、2年前にこのレースを勝っているマーク・カヴェンディッシュ(アスタナカザクスタン)がリタイア。スタート前のミックスゾーンでコンディション不良を明かし、出走こそしたものの途中でバイクを降りた。胃腸の不調で走り切れる状態になかったという。

それでもレースは続く。最後から2つ目の上り、プラスコルサーノ(登坂距離3.1km、平均勾配6.9%)に入ると、UAEチームエミレーツがペースアップ。これで大多数のスプリンターが後方へと追いやられ、最前線は15人ほどまで絞り込まれる。この状況から飛び出したのがベッティオルだった。

J SPORTS サイクルロードレース【公式】 YouTubeチャンネル

【ハイライト】ミラノ〜トリノ|Cycle*2024

ミラノ〜トリノ

UAEチームエミレーツがペースアップ

UAEチームエミレーツが作るハイペースから爆発的なアタックを決めると、すぐに30秒ほどのリードを確保。得意の下りでさらに加速すると、その差は40秒まで開く。集団はボーラ・ハンスグローエの牽引に代わり、少しずつながらベッティオルとの差を詰めていく。最後の上り、コレレット・カステルヌオーヴォ(3.8km、3.9%)ではジャンルーカ・ブランビッラ(Q36.5プロサイクリングチーム)らが追撃を図ったことで、その差はさらに縮小。上り終える頃には20秒差まで縮まった。

逃げ続けるベッティオルの消耗は明らかだった。牽き続けるボーラ・ハンスグローエのペースが完全に上回っている。残り10kmを切って15秒だった差は、残り6kmで9秒に。

ところが、そこから差が縮まらなくなった。残り3kmでもタイム差は9秒。ボーラ・ハンスグローエが牽引役を使い切ると、残った集団メンバーがお見合いしてしまう。しびれを切らしたエイネルアウグスト・ルビオ(モビスター)がアタックし、これを数人がチェックするが、今度はそれらライダー間で牽制。ひたすら逃げるのみのベッティオルからすれば、一転して有利な状況となった。

「チームカーがかなり後ろにいたみたいで、無線からはノイズしか聞こえなかった。レースの流れを把握できていなかったけど、タイムトライアルのように走るだけだった。マルク・ヒルシあたりが追いついてくるかなと思っていたけど、彼らも苦しんでいたみたいだね」(ベッティオル)

残り1kmで集団からヤン・クリステン(UAEチームエミレーツ)が単独で追いかけたが、ベッティオルを捕らえるには距離が足りない。30kmにわたって逃げ続けたベッティオルは、最後の50mで勝利を確信。右こぶしを高らかに掲げてウイニングセレブレーションを決めた。

「調子自体は悪くなかったので、ティレーノ~アドリアティコを終えての脚の具合を確かめて、ミラノ~サンレモへと向かいたいと考えていた。今日のレースで自分がどの位置にいるかを把握できるとは思っていたけど、まさか勝つとはね」(ベッティオル)

ミラノ〜トリノ

トリノ県アオスタを走るミラノ〜トリノ

2019年にロンド・ファン・フラーンデレンを制し、ジロ・デ・イタリアでは2021年にステージ1勝。何といっても、一発で流れを引き寄せるパンチ力と、そこからの独走が魅力だ。ロンドもジロも、独走でフィニッシュへと到達している。どんなコースも苦にしない適応力の高さは、2018年に1シーズンだけ所属したBMCレーシングチームでグランツールレーサーとして育成する計画があったことにも表れている。

もっとも、今回のコースが決定した時点で、主催者はベッティオルを本命に挙げていたという。まさに満点回答の独走劇。由緒あるヒストリカルレースに新たな神話を作って、良いイメージで3日後のミラノ~サンレモへ向かう。

歓喜のベッティオルから7秒後、最後まで追走姿勢を崩さなかったクリステンが2番目にフィニッシュへ。昨夏にUAEチームエミレーツに合流した19歳が殊勲の走り。主要レースでは初の表彰台を収めた。

「ベッティオルは間違いなく今日一番強い選手だった。個人的には2位という結果はうれしい。プロでの初勝利が近づいている実感があるので、この先のレースがとても楽しみだよ」(ヤン・クリステン)

UAEチームエミレーツは、このレースでエースを務めていたヒルシが3位、ディエゴ・ウリッシも4位。優勝こそ逃したもののチーム力の高さは揺らいでいない。また、終盤にかけて集団を引っ張ったボーラ・ハンスグローエも19歳のエミル・ヘルツォークをチーム最上位の7位に送り込むなど、ヤングライダーの台頭も感じるレースとなった。

日本勢唯一の参戦で高い期待のもと臨んだ留目夕陽は62位で完走。ベッティオル激走で優勝チームの一員となったことが何より大きな価値といえよう。

ミラノ~トリノを終えて、いよいよシーンはミラノ~サンレモへ集中する。このレースが春の大一番へどのような意味合いをもたらしているのか、その答えはもうすぐ明らかになる。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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