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【Cycle*2024 ストラーデ・ビアンケ:レビュー】大会創設以来最長81kmの独走!2位以下に大会史上最大のタイム差2分44秒で勝利したのはタデイ・ポガチャル
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかストラーデ・ビアンケ表彰台 優勝ポガチャル、2位スクインシュ、3位ファンヒルス
81kmの独走!ただ偉大なるチャンピオンだけに許されたやり方で、タデイ・ポガチャルがストラーデ・ビアンケを勝ち取った。2時間の孤独な旅の果てに、フィニッシュライン上では、自転車を空に突き上げた。ちっとも疲れてなどいないかのように。
「長くなるだろうことは覚悟していた。でもいったんタイム差さえつければ、あとは最後までやり抜くだけだとも分かっていた」
有言実行。レース前に、ポガチャルは、攻撃を仕掛ける場所を正確に宣言していた。第8セクターの、モンテ・サンテ・マリエ。つまり全長11.5kmの長い「白い道」の中盤に待ち構える、おなじみの激勾配と下り。
2年前のポガチャルも、やはりここから勝利へと飛び立った。ただ2022年大会は、フィニッシュまで残り50km地点に過ぎなかった──当時の本人は「仕掛けが早すぎたかもしれない」と後悔もしたそうだが──。2024年大会は、コースの終わりに新たに約30kmが追加されていたから、自ずとソロライドの距離も30km伸びた。
しかも3月最初の土曜日、トスカーナの美しき丘陵地帯には、冷たい雨が断続的に降り注いていた。それでも最終的にポガチャルが叩き出した平均走行時速40.344kmは、ドライコンディションだった昨大会に次ぐ、史上2番目に速い数字だった!
「スタート直後からひどく高速だった。かなり早い段階でセレクションが進んだ。こんな展開になるなんて、誰も予想していなかったんじゃないかな」
後の勝者を支えるUAEチームエミレーツこそが、最高にスピードを上げた張本人だった。序盤の逃げは、コースが半分にさえ達しないうちに吸収し、その後にクイン・シモンズが2度にわたり飛び出しを試みるも、早々に捕まえた。昨ツール・ド・ラヴニール総合覇者にして、弱冠20歳の新人イサーク・デルトロが、ポガチャルのために牽引に励み、続いてストラーデ・ビアンケ表彰台経験を持つベテランのティム・ウェレンスが、高速テンポを刻んだ。
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【ハイライト】ストラーデ・ビアンケ|Cycle*2024
集団はウェレンスのペースアップで長く伸び......
例のモンテ・サンテ・マリエに差し掛かると、ウェレンスはさらにペースを上げた。すでに30人ほどにまで絞り込まれていた一団は、上りでも、下りでも、まるで糸のように細く長く伸び、いつしか千切れ千切れになっていた。
「サンテ・マリエでは雹の嵐が吹き荒れて、厳しい状況だった。でもチームがハードに仕事をしてくれた。ある瞬間、周りがなにも見えなくなった。とてつもなく泥だらけだった。そこで決めたんだ。アタックしよう、って」
残り81km。そこまでチームメイトの背後に潜んでいたポガチャルが、前方へと潔く躍り出た。セップ・クスやシモンズも慌てて反応を試みるも、無駄だった。加速一発で、すべてを置き去りにした。
ライバルたちが決して足掻かなかったわけではない。ほんの2km先では、マキシム・ファンヒルスが単独で追走を開始した。しかし第8セクターを抜け出す時点で、すでに1分15秒以上の遅れを喫していた。10kmほど先では、ディフェンディングチャンピオンのトム・ピドコック擁するイネオス・グレナディアーズが、必至の集団牽引に乗り出した。ファンヒルスの回収には成功したが、ポガチャルとの差は縮まるどころか、ただただ広がっていくばかり。
差が2分半にまで開くと、残り60km、とうとうイネオスは追走作業を投げ出してしまった。集団内の他の選手が、協力する様子を見せなかったせいかもしれない。特にヴィスマ・リースアバイクは、25人前後のグループに最多4人を送り込みながら、まったく存在感を示さなかった。あとは牽制と散発的なアタックの繰り返し。そもそも誰かが飛び出しては、ウェレンスがつぶしにかかり、ベン・ヒーリーが出し惜しみせず幾度となく前進するも、逃げ出すことは叶わなかった。
後方のごたごたなど気にも止めずに、ポガチャルは一定リズムを刻み続けた。いつもより長い準備期間を終え、この3月2日こそがシーズン初戦だったが、まるでトレーニングの続きであるかのように黙々とペダルを回した。残り40kmで、差は3分45秒にまで大きくなった。
周回するセクターには多くのファンたちが詰めかけた
距離が伸び、グラベル最終2セクターを2回通過することになったおかげで、多くのファンたちが第10-14・第11-15セクターに詰めかけた。特に最大18%の激坂では、人が壁のように連なり、悠々と先頭を走るポガチャルにとっては、ちょっとした花道のようだった。
この第11セクターの激勾配を利用して、残り40km、ファンヒルスは改めて前方へと抜け出した。1度目は「ポガチャルに反応する脚はあったのに」と後悔するが、2度目もまた、理想的ではなかった。「誰か一緒についてきてほしいと思ったんだけど、誰もついてこなかった」からだ。後方集団に対するなけなしのリードを、しばらくは孤独に守り続けるしかなかった。
幸いにも、しばらく先で、トムス・スクインシュが追いかけてきた。残り21kmで無事に2人は合流。それぞれワールドツアーのワンデーレースで初めての表彰台乗りを実現させるために、その表彰台でポガチャルの両脇に立つために、力を合わせて先を急いだ。残り19km、第14セクターでピドコックがようやく加速に転じるも、4分半先を元気に突き進むポガチャルはもちろん、1分半先のファンヒルス&スクインシュの背中をとらえることは最後まで不可能だった。
古都シエナの、ピアッツァ・デル・カンポへと誘う坂道を、ポガチャルは笑顔で上り詰めた。2年ぶり2度目のストラーデ・ビアンケ制覇。3年連続イル・ロンバルディア勝利でシーズンを締めくくってきた25歳が、2年連続で、シーズン初日を勝利で祝った。
「シーズン最初のレースというのは、精神的に難しいんだ。自分の調子がいいのか、それとも悪いのか、はっきりと読めないからね。でも今年の冬は本当にしっかり調整が積めた。それにシーズンをいつもより少し遅く始めたから、この初戦に向けて、よりハードな練習をこなしてきた。甲斐があったというものさ」
いまだ18回目と歴史の浅い大会ながら、創設以来最長81kmの独走勝利を決めただけでなく、ポガチャルは2位以下に大会史上で最大のタイム差を押し付けた。自らが2年前につけた37秒差も、これまでの大会記録だった2012年大会の42秒差も、あっさりと吹き飛ばした。2分44秒差!
自転車を掲げるポガチャル
その2位争いは、最後の400mまでもつれ込んだ。そして1週間前のオムループ・ヘット・ニュースブラットで好走さをアピールし、このストラーデ・ビアンケでも序盤に逃げを試みたスクインシュが、途中でチームメイトのシモンズにもらい落車したにもかかわらず……見事にライバルを突き放した。やはり今季4レース目ですべてトップ5入りと絶好調のファンヒルスは、3位で長い戦いを締めくくった。
いつもよりゆっくりシーズンを始めたポガチャルは、この後に再び、2週間もレースのない日々を過ごす。過去3年間、この3月上旬にはティレーノ~アドリアティコかパリ〜ニースに出場し、そのすべてで総合優勝を収めてきた。しかし人生初のジロ・デ・イタリア行きを控え、しかもその後にツール・ド・フランスへの連戦を予定する今年は、レース日数を最小限に抑えなければならない。
つまり次はミラノ〜サンレモ。フィニッシュまで約6kmのポッジオでの加速を、2年連続で勝利に結び付けられなかったポガチャルだが……今回の独走の成功で、もっともっと手前からアタックに転じる覚悟ができただろうか!?
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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