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サイクル ロードレース コラム 2024年3月3日

【Cycle*2024 ティレーノ~アドリアティコ:プレビュー】グランツールやクラシックへと続く道 ツール王者ヨナス・ヴィンゲゴーも参戦の「2つの海をつなぐレース」

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ティレーノ〜アドリアティコ

「2つの海をつなぐレース」ティレーノ〜アドリアティコ

南半球や中東の暖かな環境でのシーズン序盤戦を経て、3月からは主戦場であるヨーロッパへと舞台が移っていく。ときに春とは思えない暑さもあれば、冬に逆戻りしたかのような寒さにも耐えねばならない。時期外れの降雪でレースそのものが混乱に陥ることだってある。サイクルロードレースは、自然との闘いでもある。

春の重要ステージレースの1つに挙がる、ティレーノ~アドリアティコ。その名の通りティレニア海とアドリア海、イタリア半島の東西に広がる海をつなぐ7日間のステージレース。同時期には隣国フランスでパリ~ニースが行われているが、どちらも格式のあるレースだ。ビッグネームがこの時期にどちらを選択するかは、先々の戦いを占ううえで大事なファクターにもなってくる。

特に今回は、現役ツール・ド・フランス王者のヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク)が早い段階で参戦を表明し、注目度は上がるばかり。また、同じくツールでポイント賞を獲ったヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)も乗り込む。昨年のツール4賞のうちの2人が参戦とあって、レースレベルが一気に上がることは間違いない。

彼らに詳しく触れる前に、コースを見ておこう。全7ステージの総距離は1118km(ステージ平均距離159.7km)。そして、総獲得標高は12800mにのぼる。

幕開けは、ティレニア海に面したリド・ディ・カマイオーレでの10km個人タイムトライアル。海沿いの道を南北に行き来するフラットなレイアウトで、TTスペシャリスト向き。顔見せ、脚試し、そしてここで発生したタイム差をもって次からのロードレースステージへと移っていく。

第2ステージはカマイオーレからフォッローニカまでの198km。少しばかりの丘越えはあるものの、スプリンターの脚を削るほどではない。最後の約25kmはフォッローニカを基点とする周回コースを1周半。フィニッシュ前約300mには鋭角の右コーナーが控え、スピードとハンドルさばきがポイントに。

ティレーノ〜アドリアティコ

5月のジロ・デ・イタリアの前哨戦ともいわれるティレーノ〜アドリアティコ

第3ステージでは本格的に丘陵地帯へ。グアルド・タディーノは2021年にも第3ステージのフィニッシュ地となり、そのときは上り基調の最終局面でマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)がワウト・ファンアールト(ヴィスマ・リースアバイク)らに先着し勝利。そのときは集団が47人まで絞り込まれており、今回も取りこぼしが許されないステージとなる。

大会4日目にして、プロトンは東海岸のアドリア海へ。前半に山越えをして、フィニッシュ地ジュリアノーヴァへ駆け下りる207km。最後の1.65kmは勾配5%前後の上りとあり、スプリンターよりはパンチャー系のライダーにチャンスありか。

個人総合成績をかけた戦いは、第5ステージから拍車がかかるだろう。144kmに設定される本格山岳ステージ。序盤から大小のアップダウンをこなして、コース後半にそびえるのは登坂距離11.9km・平均勾配6.2%・最大勾配11%のサン・ジャコモ。急激な変化がなく一定リズムで上れる区間ではあるが、総合系ライダーたちが何かしらのアクションは起こすことだろう。いったん下って、ヴァッレ・カステッラーナのフィニッシュまでは緩やかな上り。

そして、今大会のクイーンステージ。180kmに設定される第6ステージは、前半からラ・フォルチェッタ、ピアン・ディ・トレッビオ、モリアの3つの登坂区間をクリア。そして最後にそびえるは、モンテ・ペトラーノ。登坂距離10.1km・平均勾配8.0%、上り始めに最大勾配12%区間があり、以降は7~9%の勾配が続くイメージ。フィニッシュまで5kmを切ってから迎えるつづら折りは、選手たちのリズムや集中力を試すことに。これを上り切ったときに、覇権の行方が明確になっているはずだ。

最終・第7ステージは、この大会ではおなじみのサン・ベネデット・デル・トロントを発着地とする平坦ステージ。セオリー通りであれば、スプリントで大会のフィナーレとなる。

ティレーノ〜アドリアティコ

残雪の残るアペニン山脈を超えてアドリア海へ

これらコースで力を発揮するであろう選手たち。やはり前記した通り、ヴィンゲゴーが個人総合のマリア・アッズーラ争いで中心となる。ツールを連覇し、プロトン最高のライダーとなってティレーノへと還ってくる。前の出場は2022年で、そのときはタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)に次いで個人総合2位で終えている。今年はジロ・デ・イタリアで総合エースを務める見込みのキアン・アイデブルックスや、登坂の安定度が高いアッティラ・ヴァルテルらが脇を固めるので、山岳ステージを中心にレースをコントロールするだろう。

対抗できるとすれば、グランツールで実績を持つ選手たちが挙がる。サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルウラー)は2月にアルウラー・ツアーで勝ち、ベン・オコーナー(デカトロン・アージェードゥーゼールラモンディアル)もUAEツアーでステージ1勝を含む個人総合2位と好調。2年前のジロ・デ・イタリアを勝つなどイタリアのレースにめっぽう強いジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ)や、今年は復権を誓っているリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)も調子を合わせてくるはず。

ヴィスマ・リースアバイクとならぶスーパーチームのUAEチームエミレーツは、フアン・アユソを中心とした布陣。当初はアダム・イェーツの参加が見込まれていたが、UAEツアーでの落車による脳震盪で一時的に戦線を離脱中。若きエースのアユソへの期待が高まる。

戦い方を知るエンリク・マス(モビスター)、怪我から復帰のテイオ・ゲイガンハート(リドル・トレック)も今年のグランツールでは主役候補。このレースでも動向は押さえておきたい。今季はステージレースの個人総合争いにも注力したいというトーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)も上位戦線に顔を見せるか。

スプリンターでは、フィリプセンに加えて、UAEツアーでハットトリックのティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)、カレブ・ユアン(ジェイコ・アルウラー)といったビッグネームが集結。ジョナサン・ミラン(リドル・トレック)やビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)も状態が良ければ好勝負を演じるはず。マーク・カヴェンディッシュ(アスタナカザクスタン)もハマれば一発がある。

ティレーノ〜アドリアティコ

晴れたなら紺碧のアドリア海がプロトンを迎えてくれる

また、フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)は初日の個人TTでどんな走りをするか見ものだし、ジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)やベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)の仕上がり具合はどうか。

そして、バーレーン・ヴィクトリアスは新城幸也がメンバー入り。約1ヶ月前のレースでのアクシデントによる一時的な離脱からいよいよ復帰する。ダミアーノ・カルーゾやアントニオ・ティベリが個人総合を狙い、フィル・バウハウスでのスプリントも意識していくというチーム体制にあって、その両面でのアシストが期待されているといい、新城自身も「忙しい1週間になりそう」とコメント。実質のシーズン初戦と位置付け、ステージごとに調子を上げていきたいとしている。(2024.3.4追記)

大会の覇者には、金色の三叉の矛「トリアイナ」が授与される。ギリシャ神話においてポセイドンが水源や馬を作り出すのにトリアイナを用いていたことに由来し、2つの海を制した者の象徴として総合表彰台で贈られる。今年、“海の神”となるのは誰か!

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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