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【Cycle*2024 ストラーデ・ビアンケ:プレビュー】215kmのロングレースとなったストラーデ・ビアンケ、グラベル区間と激坂も増えて難易度も人気もさらに高まる
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかトスカーナ地方の美しき風景の中で繰り広げられるロマンチックな物語
春の色に染まる大地に、長く長く伸びる白い道。中世の佇まいを残した、丘の上の城郭都市。こんなイタリア・トスカーナ地方の美しき風景の中で、3月最初の土曜日、ストラーデ・ビアンケがロマンチックな物語を紡ぎ出す。
クラシックという言葉が、これほどふわしいレースがあるだろうか。開催回数はわずか18回目ながら、早くも自転車界に深く根をおろし、現代の名だたるチャンピオンたちがそのタイトルを我先に追い求めてきた。イル・ロンバルディア3連覇中のタデイ・ポガチャルから、ラ・フレーシュ・ワロンヌ3回優勝のジュリアン・アラフィリップを経て、現役パリ〜ルーベ覇者のマチュー・ファンデルプールまで……多彩な脚質に勝機が巡ってくるのも、この「第6のモニュメント」が多くの選手たちを魅了する理由のひとつ。
古都シエナを起点に、なだらかな丘陵地帯に描かれるコースは、しかも今年は距離もクラシック並みに進化した。ここ数年の184kmから、一気に215kmのロングレースへ。自ずと今大会に特別な色を添える「ストラーデ・ビアンケ=白い道」も、昨年までの11セクターから、今年は全15セクター・計71kmに増えた!
コースの基本設計はこれまでと同じ。スタート直後から繰り返しグラベル路が顔を出し、決して退屈な時間など存在しない。65km地点前後では、美味しいワインで名高い、モンタルチーノの上り(全長4km・平均5%)も立ちはだかる。
例年ならば第8セクターで、本格的に勝負が動き出したものだった。全長11.5kmの長い未舗装路の、中盤にそびえるサンテ・マリエの勾配10.3%の急坂と、そこからの下りが、いつだって本命たちを大きくふるいにかけてきた。2年前にはここからポガチャルが栄光へ向かって独走を始め、昨大会はトム・ピドコックが抜け出すと、そのまま優勝をさらった。ただしフィニッシュまでの距離が、これまでの約55kmから、77km前後へと伸びたことで、果たしてエースたちはどう動くか。
激坂も含まれる丘陵地帯
なにしろ続く第9セクターを抜けると、2024年大会は、全長30kmほどの大きな周回路に入る。自ずと激坂コッレ・ピンズート(序盤の400mにわたり勾配12%超・最大15%、第10&14セクター)と、間髪を容れず襲いかかるレ・トルフェのさらに激しい坂道を(やはり序盤400mが平均13%・最大18%、第11&15セクター)とを、今年はそれぞれ2回通過しなくてはならない。2021年大会ではファンデルプールが「最終」セクターで勝利へのアタックを決めたが、激坂が2倍に増えたことで、やはり展開に変化が起こるかもしれない。
たとえ白い道で優劣がつかずとも、道の終わりには、最高の舞台が待っている。シエナの旧市街を貫く石畳の坂道は、狭く、険しい。ラスト1kmから本格的に上り始め、そこからの500mは平均勾配12.4%・最大21%のすさまじい激坂なのだ。一旦上り詰めた先の、フィニッシュ地カンポ広場へといざなう下り坂もまたひどくトリッキーで、最後の一瞬まで気を抜くことは決して許されない。
パリ〜ニースの開幕前夜に開催されるため、残念ながら「全員集合」は不可能なのだ。それでも、今年も変わらず、幾多のクラシックハンターがストラーデ・ビアンケへと吸い寄せられた。
ディフェンディングチャンピオンのピドコックは、ゼッケン1番でスタートラインに並ぶ。しかも2度今大会を勝ち取ってきたミハウ・クフィアトコフスキに加えて、グランツールライダーとなる以前は北クラシックハンターであったゲラント・トーマスに、21歳伸び盛りのマグナス・シェフィールドと、イネオス・グレナディアーズのとてつもなく強力なチームメートたちが周囲を支える。
アラフィリップは己の才能を再証明するために、全力で今大会に挑むはずだ。昨秋グラベル世界選手権を制したマテイ・モホリッチは、この春は白い道の攻略を企てる。また「石畳に専念」するために欠場を選んだファンアールトに代わって……クリストフ・ラポルトがストラーデ・ビアンケ初参戦。ちなみに2月4日までシクロクロスを全力で転戦してきたファンデルプールは、ロード初戦はサンレモを予定しているとのこと。
昨年の優勝者トーマス・ピドコック
予算拡大&大幅補強でモチベーションマックスのリドル・トレックや、ワンデーエース格を複数擁するEFエデュケーション・イージーポストも、素敵なほどに強力な布陣で乗り込んでくる。グルパマ・FDJは昨大会2位ヴァランタン・マドゥアスはもちろん、今季すでにワンデー2勝の20歳レニー・マルティネスの快進撃にも期待したい。
そしてポガチャルにとっては、正真正銘、これが2024シーズンのレース初め。2週間後のミラノ〜サンレモ獲り=4つ目のモニュメントを狙う怪物は、絶対にいきなりエンジン全開で来る。ベテランの表彰台経験者ティム・ウェレンスに、ワンデー巧者マルク・ヒルシと、脇を固めるメンバーも頼もしい。なにより若きラヴニール王者、イサーク・デルトロとの共演も早々と実現しそうだ!
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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