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【Cycle*2024 UCI世界選手権大会 男子エリート:プレビュー】チェコのスピードコースでシーズン締めくくりの世界選、絶対的大本命はファンデルプール
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか2023年(昨年)の勝者、マチュー・ファンデルプール
この冬の最高にして最後の大一番。UCIシクロクロスシーズンを華々しく締めくくる世界選手権・男子エリートが、2月4日、チェコのターボルにて開催される。12月半ば以来ほぼ一人勝ち状態のマチュー・ファンデルプールが、絶対的大本命として、新たな栄光に向かって突っ走る。
今年で75回大会を迎える伝統ある世界一決定戦には、欧州を中心に、世界26か国から計312人のアスリートが集結する。アジアから唯一の参加国である日本からも、男女・ジュニア・アンダー23・エリートあわせて計7人が参戦。なにより世界屈指のビール大国で執り行われる、冬の終わりのお祭り騒ぎには、陽気な応援団たちが大挙して詰めかけるはずだ。
すでに過去3度の世界選を迎え入れてきた要塞都市ターボルは、21世紀のシクロクロスシーンを彩ってきた2人のチャンピオンにとって、決して忘れることのできない場所だ。1人目はチェコが生んだズデネク・シュティバル。世界の頂点に3度立った偉大なるチャンピオンは、2010年、母国で人生最初の栄光を味わった。昨年末ロードレースに別れを告げた38歳は、この思い出のコースで、シクロクロス選手としてのキャリアにも幕を閉じる。
2人目は言うまでもなかろう。MVDP伝説もまた、ここから始まった。ルツェニツェ川と森に囲まれた荒野で、2015年、1枚目のレインボージャージに袖を通した。
……忘れずに書き加えておくと、ファンデルプールはジュニア時代から通算7度、ターボルを走っている。2011年ジュニアW杯1位、2012年ジュニアW杯1位、2013年U23W杯1位、2015年世界選1位、2017年欧州選1位、2018年W杯1位、2019年W杯1位。すなわち7戦7勝。そもそも苦手なコースなどないであろうマチューだが、中でもとりわけ相性が良い。
スピードの出る直線と、えげつないコーナーの連続が交互に組み合わされた全長2950mの周回コースは、言うなればシクロクロスに必要なすべての能力をバランス良く有していなければ勝てない。高ケイデンスで回し続ける走行能力、ストップ&ゴーでの爆発力、ハンドル技術、サドルの上でのバランス感覚、走行ラインを素早く見出すセンス、さらには瞬時の乗り降り判断に、自転車を担いで走るラン能力等々……。アップダウンはそれほど厳しくはなく、人工障害物はブリッジ2、階段2、ハードル1。
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【ピットでのバイク交換】辻啓のシクロクロス解説動画 第5弾
また河川敷のスポーツ公園に引かれたコースの大部分は、普段はびっしり草に覆われている。まあ、3日間かけて7レース行われる世界選手権の、大トリを飾る男子エリートの頃には、単にしっかりと練り返された土の道に変わっているに違いないのだ。通常この時期は氷点下の日々が続くため、カチカチの凍土になることも多々。幸か不幸か、大会の週末は比較的暖かいとのことだから、つまりは泥んこ大戦かもしれない。するとピットでの自転車交換も、勝負を左右する重要な鍵となる。
この地で初めて世界王者になったファンデルプールは、今年は、6枚目のアルカンシェルを獲りに来る。この冬も13戦12勝と呆れるほどに強く、負ける姿などもはや想像すらできない。しかも少年時代からの宿敵であり、1年前の虹色争奪戦でフィニッシュラインぎりぎりまで自身を苦しめたワウト・ファンアールトも、この夏マウンテンバイクで手ごわいライバルになるであろうトム・ピドコックも、今回は不在なのだ。
むしろマチューの突き進む道の上には、手練手管のシクロクロス「スペシャリスト」たちが大挙して待ち受ける。例えばベテランのラルス・ファンデルハールが、ターボルで初めて勝ったのはなんとアンダー時代の2011年のこと。計4勝を含む10回の表彰台乗りを達成しており、土地の性質を隅々まで知り尽くしている。
ファンデルハールの同僚たち、すなわちバロワーズ・トレック・ライオンズの面々も、間違いなく勝負に絡んでくる。シーズン通して安定した好成績を並べ、27歳にしてとうとうエリートでUCIワールドカップ初優勝&ナショナル選手権初優勝を手にしたヨリス・ニューエンハイスは、初めてのエリート世界選手権表彰台に飛び乗りたい。エリート完全転向1年目であっさりワールドカップ2勝を上げた若きピム・ロンハールには、当然注目すべし。2度世界選を制した偉大なる父を持つティボウ・ネイスは、1年前はアンダー23カテゴリーで世界王者になったが、今年は初めてのエリート世界選に挑戦する。
また今季はいまいち成績が安定しないが、欧州選手権は2連覇と、大一番には底力を発揮するマイケル・ヴァントゥレンハウトも決して過小評価することはできない。もちろん、エリ・イザビットを忘れてはならない。ちょうど1週間前に、人生2度目のUCIシクロクロスワールドカップ総合勝利をもぎ取ったテクニシャンは、この地でも2度の勝利経験を持つのだから。
もしかしたら、これがマチュー・ファンデルプールにとって、人生最後のシクロクロス世界選手権となるかもしれない。……などと憶測する声も現地では上がる。6枚目のチャンピオンジャージを手にすれば、エリック・デヴラーミンクの誇る史上最多7枚まで、あと1枚に迫る。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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