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サイクル ロードレース コラム 2023年12月29日

【シクロクロス2023 WC第11戦 フルスト:プレビュー】風の国オランダ・フルストで勝率100%を誇るファンデルプール、今年最後のビッグ・スリー対決

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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バイクを担いで階段をのぼるマチュー・ファンデルプール

2023年の走り納め。年の瀬も迫りに迫った12月30日、オランダのフルストにて、UCIシクロクロスワールドカップ第11戦が開催される。クリスマス翌日に仲良く揃って表彰台に登ったばかりのビッグ・スリーが、今年最後の激突を繰り広げる!

愛称Vestingcross、日本語に訳せば「要塞」クロスは、17世紀に建立された星形要塞の一部を利用して贅沢に執り行われる。お掘の周りを縦横無尽に駆け巡るコースの目玉は、ずばり「土塁」。あるいは「斜堤」と呼ばれ、要塞の外周に沿って小高く盛られたいわゆる土手のことである。外敵の侵入を防ぐための斜面は、とんでもなく急で、時に緑の芝生に覆われた路面は、ひどく集中力を要する。土塁を延々上ったり下りたり横切ったりするうちに、確実に選手たちの脚は削られていく。

コース途中には、1792年に造られた風車も顔を出す。そう、忘れてはならない。オランダは風の国だ。しかもフルストが位置するゼーラント州は、ひときわ強風が吹き荒れることで知られている。さすがに「向かい風選手権」の舞台となる北海沿岸ほどではないにしても(しかも今年2023年大会は風が強すぎて中止)、4年前のフルスト大会直前には、突風のせいでコース脇の木が倒れるアクシデントも。幸いにも今年末のヨーロッパは比較的穏やかな日々が続き、肝心の12月30日は、風は弱めとの予報だ。

こんなコースを得意とするのは、もちろん地元オランダ出身にして、現役世界王者マチュー・ファンデルプール。過去7大会のうち5回を持ち帰り……しかも勝たなかった2回は不出場であり、すなわち勝率100%を誇るという……まるでマチューのために存在するかのような大会なのだ!

ちなみに2026年の世界選手権開催地にも選ばれているから、すべてが予定どおりに行けば、ファンデルプールの「単独史上最多」8枚目のシクロクロスアルカンシェル獲得の舞台になるのかもしれない。とにかくこの冬のファンデルプールも手のつけられないほどの無敵さを披露し、12月28日現在、ワールドカップ2勝を含む5連勝中(29日にもレース出走予定)。

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ワウト・ファンアールトだってマチュー抜きの大会は2戦2勝、マチューありきの大会は不動の2位×3回と、地球人基準で考えれば相変わらずとてつもなく強い。なにより前回26日のレースで「自分の調子に自信を深めた」と、間違いなく調子は上向き。

クリスマス前に一時体調を崩したトム・ピドコックも、順調に体調を回復している。前戦W杯はスタートで出遅れながらも、執念深く追い上げ3位表彰台に飛び乗り、28日のナイトシクロクロスでも、マチューに続く2位に食い込んだ。

つまりファンデルプール、ファンアールト、ピドコックがそれぞれ孤独に奮闘した果てに表彰台を独占した第10戦とは違って、年の瀬ワールドカップ第11戦では、本当の意味でのビッグ・スリーによる三つ巴バトルを期待したくなるというもの!

また今季10戦すべてで着実にポイントを積み重ねてきた高め安定エリ・イザビットは、クリスマス後も表彰台2回と調子を堅持。今大会なにがあろうとも、ワールドカップ総合首位として大晦日を過ごす。

日本の織田聖は、この冬ヨーロッパ3戦目。初戦となったワールドカップ第9戦は2周回を残してレース終了、47人中38位の成績がついたが、なんと108人がエントリーする大混雑の第11戦で、どこまで存在感のある走りを見せられるか。

また前戦レース中にコース上で立ち止まり、沿道のファンと写真撮影しているところをファンデルプールに押しのけられたことで、フェリペ・ニストロムはひどく有名になった。自らの行いを恥じ、「あまりにも大きなミスを犯しすぎた。世界選まで転戦したかったけど、帰宅する」とSNSで発言したところ、ファンデルプールから「誰にでもミスはある。そのせいで夢を放棄してはならない」とレース続行を促された。40歳のコスタリカ選手も、こうして無事に、シクロクロッサーとして年を越す。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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