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サイクル ロードレース コラム 2023年11月7日

【J:COM presents 2023 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム:レビュー】まさにドリームチームのメンバーたちが2023シーズンのフィナーレを飾る

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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アンバサダーのマルセル・キッテルと清水勇人さいたま市長がスタートフラッグを持つ

アンバサダーのマルセル・キッテルと清水勇人さいたま市長がスタートフラッグを持つ

J:COM presents 2023ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」が11月5日、さいたま新都心駅周辺で開催され、ツール・ド・フランスで4年連続ヤングライダー賞を獲得しているタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が、2023ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝のセップ・クス(米国、ユンボ・ヴィスマ)を接戦の末に制して初優勝した。

ツール・ド・フランス最終日のパリ・シャンゼリゼで表彰台に登った選手らが、そのとき獲得したリーダージャージを身に着けて来日し、駅至近に特設された1周約3.5kmのサーキットを17周走って着順を競うツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。この日は季節外れの暑ささえ選手らを歓迎しているかのようで、沿道を埋め尽くした熱心なファンは世界のトップ選手の熱き戦いを満喫した。

キッズレースで子どもたちとバトルしたヴィクトル・ラフェ、カヴェンディッシュ、サガン

キッズレースで子どもたちとバトルしたヴィクトル・ラフェ、カヴェンディッシュ、サガン

2020、2021年の総合優勝者ポガチャルは、やはり日本のファンに最も注目される存在だった。優勝最有力のポガチャルをいかにして勝たせるか? UAEチームエミレーツが取った作戦は、序盤のレース活性化を他のスーパースターたちに任せることだった。

スタート直後から日本のファンを熱くさせたのは、ツール・ド・フランスさいたまのアイコン的存在、クリストファー・フルーム(英国、イスラエル・プレミアテック)だ。

2013、2015、2016、2017年の総合優勝者フルームは今回、ツール・ド・フランスクリテリウムレジェンドチームとして参加。史上最多タイ記録となるステージ34勝のマーク・カヴェンディッシュ(英国、アスタナ・カザクスタン)、ポイント賞7回獲得のペーター・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)、そしてアダム・ハンセン(オーストラリア、WSA KTMグラズ・レオモ)とチームを組んだ。

それにしてもまさにドリームチームだ。かつて世界選手権を3連覇したサガンはロード選手としてはラストイヤーなので、ロードレースを走るシーンはこの日が見納めだ。ハンセンは、グランツールに29回出場、完走26回、連続20回の完走という不滅の記録を持つ鉄人。一時は現役引退したが、現在は復帰をして登録上はこのチームに所属している。

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】J:COM presents 2023 ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム|Cycle*2023

果敢な走りを見せた新城幸也

果敢な走りを見せた新城幸也

結果的にフルームは、レース全体のアグレッシブな走りが評価され、今大会の敢闘賞を受賞した。

こうしてフルームはスタート直後から主導権を掌握した。そんなかつてのツール・ド・フランスチャンピオンに、日本の畑中勇介(キナンレーシングチーム)、藤田涼平(スペシャルチームジャパンforさいたま)ら4選手が反応した。後続集団でこの動きに反応したのは、新城幸也をエースとして起用したバーレーン・ヴィクトリアス勢だ。

クリテリウムメインレースの前に行われたチームタイムトライアルでは、バーレーン・ヴィクトリアスチームがトップタイムで優勝していた。2023ツール・ド・フランス第10ステージ優勝のペリョ・ビルバオ(スペイン)をメンバーに入れた実力チームだ。

悲願のチームタイムトライアル優勝を果たしたバーレーン・ヴィクトリアス

悲願のチームタイムトライアル優勝を果たしたバーレーン・ヴィクトリアス

「1週間前のシンガポールクリテリウムでチームタイムトライアルは3位とあとわずかだったので、この日は絶対に勝とうとチーム全員で意気込んでいた」と新城。優勝が決まったときは、ガッツポーズで喜びを表した。そしてクリテリウムレースでも、山岳スペシャリストのビルバオをアシストとした新城はポイント賞や山岳賞を積極的に狙っていく果敢な走りを見せた。

バーレーン・ヴィクトリアスのこのペースアップにより、フルームらは2周目で吸収された。カヴェンディッシュがスプリントポイントを先頭通過して、ポイントを獲得。カヴェンディッシュはその後もしっかりと得点を積み重ねて、最終的にポイント賞を獲得している。

2023シーズンのフィナーレとなるシンガポールとさいたまのツール・ド・フランスクリテリウムにおいて、トップ選手のなかで親分肌の存在となったのがカヴェンディッシュだ。

「これからのロードレース界で成長していくのはアジア圏。だからボクたちはアジアの人たちにその魅力を最大限に伝えられるように、サインやセルフィーなど気軽に応じよう」と若手選手にアドバイスしていた。来日中最もにこやかに、そして時差ボケなどの疲労を包み隠してメディア対応などをこなしていたカヴェンディッシュの姿があった。

ツール・ド・フランスでは、自転車界最強の選手と言われるエディ・メルクス(ベルギー)と並ぶステージ最多34勝。メルクスを知る日本の自転車ファンはほとんどいないと思うが、テレビ中継でよく知るカヴェンディッシュが2024ツール・ド・フランスで単独最多記録を乗り換えたとしたら、それは歴史の新たな1ページを目撃できたということなのだから、日本のファンとしてはその瞬間を心待ちにしたい。

地元女子高生が描いた黒板アートとチッコーネ

地元女子高生が描いた黒板アートとチッコーネ

純白の新人賞ジャージを着るポガチャルと同様に、レースを盛り上げた選手がいた。白地に赤い豆をあしらった山岳賞ジャージで走るジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・リドル・トレック)だ。

市街地レースのさいたまでは、ツール・ド・フランスのアルプスやピレネーほどの本格的山岳は存在しないので、JRの線路をアンダーパスする上り坂に山岳ポイントが設定される。ここで常に仕掛けたのは当然チッコーネだ。山岳賞ジャージの名誉にかけて、上り坂のポイントで負けるわけにはいかないという気概が感じられた。新城も山岳賞争いに加わったが、最終的にチッコーネがさいたまでも山岳賞を勝ち取った。

そしていよいよレースは終盤戦へ。メイン集団を常にペースメークしたUAEチームエミレーツの働きがここにきて効果を発揮した。しかし最終局面で動いたのは、この日がロード選手としてラストレースとなる、あのサガンだった。

夕日に向かって走るクス、ポガチャル、サガン

夕日に向かって走るクス、ポガチャル、サガン

サガンが残り3周で勝負に出た。先行していた選手らを一気に抜きさると、そのまま単独になり残り2周回へ。このサガンの動きに反応したのが千両役者のポガチャル、そしてツール・ド・フランスでは最大の難敵としてポガチャルの動きに追従する任務を背負ったクスだった。

クスとポガチャルが最終局面でサガンに合流すると、沿道を埋め尽くした日本のファンのボルテージが一気にヒートアップ。後続集団とのタイム差は10秒ほどだったが、3人の共通した意志により、その差を徐々に開いてファイナルラップへ。スプリント勝負では勝ち目がないクスが、起死回生のスパートで逃げを見せる。

しかしポガチャルがそれを容認するわけがない。ポガチャルが先行するクスにピッタリと食らいつくと、脚を使い果たしたサガンがここでたまらず脱落。優勝争いはポガチャルとクスに絞り込まれた。

最後のアンダーパスの上りでクスがアタックするが、グランツールだけでなくワンデーレースで数々の勝利を収めてきたポガチャルに分があった。カウンターアタックしたポガチャルが最後はクスに差をつけてガッツポーズでフィニッシュ。第9回ツール・ド・フランスさいたまは初参加のポガチャルが栄冠を掴んだのである。

さいたまクリテリウム ポガチャルがクスを抑えて優勝

ポガチャルがクスを抑えて優勝

「日本に来ることができて、そしてこの素晴らしい雰囲気の中で走ることができてとてもうれしい。日本のファンの前で勝つことができたことは、一生忘れることができない思い出となった」

人気選手だけに来日中は多忙で、その横顔に疲れを見せることもあった。それでもファンの前ではいつものポガチャル。次なるターゲットは2024ツール・ド・フランスでのマイヨ・ジョーヌ奪還であることはブレることない。

ツール・ド・フランスのスーパースターが実力をいかんなく発揮した日本でのシーズン締めくくりレース。2024年はもちろん第10回記念大会である。

文:山口 和幸

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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