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【Cycle*2023 ジャパンカップサイクルロードレース:プレビュー】“This is it, the 30th Japan Cup” 30回目の真価を見せる、ワールドスタンダードの戦い
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介ジャパンカップサイクルロードレースの舞台は宇都宮市森林公園周回コース
10月のサイクルロードレースシーンは、これがないと締まらない。日本が世界に誇るビッグレース、ジャパンカップサイクルロードレースである。
2023年大会は第30回の記念大会。“This is it, the 30th Japan Cup”が今大会のテーマになっている。新型コロナ禍を乗り越えた前回はエモーショナルな“復活劇”だったが、これからは何にも屈しない、強く、魅力あるレースとしての使命を持つこととなる。
レースカテゴリーは、国際自転車競技連合(UCI)が設定するレースシリーズとしては上から2番目にあたる「UCIプロシリーズ」。アジア圏で開催されるワンデーレースでは最高位に位置する。
UCIプロシリーズのすごさを表す指標に、出場チームのプライオリティとバリエーションが挙げられる。最高峰チームカテゴリーであるUCIワールドチーム(第1ディヴィジョン)、同プロチーム(第2ディヴィジョン)、同コンチネンタルチーム(第3ディヴィジョン)と、国際登録しているチームであればすべてに出場資格がある。世界に幾多のチームがある中で、ジャパンカップのスタートラインに並べるのはわずか19チーム。こうして見てみると、日本に、宇都宮に、とんでもないレースが存在していると分かる。
ジャパンカップサイクルロードレース コースマップ
ジャパンカップサイクルロードレース 高低差図
その舞台となるのは、宇都宮市森林公園。ここを発着点とし、1周10.3kmのコースを16周回・164.8km。前回までの14周回から延伸し、レース距離が世界基準により近づいた。周回前半に古賀志林道のつづら折りが待っていて、これこそが世界に誇るジャパンカップの名物。世界トップクラスの選手たちが、ときに華麗なダンシングで、ときに苦しさに顔をゆがめながら急坂を駆け上がっていく。その様は、サイクルロードレースを始めて目にするという人でも惹き込まれる魅力がある。
古賀志の頂上から一気に駆け下りると、今度は平坦区間と緩やかな上り基調で宇都宮市森林公園内のコントロールラインへと戻ってくる。レース展開的には、かつては序盤のアタック合戦から数人の逃げが生まれ、中盤からUCIワールドチーム勢がコントロールしていく流れだった。しかし、昨年はスタート直後からワールドチームの選手たちが奇襲攻撃に出て、プロトンが分断する状況もあった。どのチームが主導権を握るかで、流れは大きく異なってくるだろう。
ジュリアン・アラフィリップ(中央)
出場するのは、前述のとおり19チーム。UCIワールドチームは前回から1増の7チームがやってくる。
昨年、ワン・ツーフィニッシュを果たしたEFエデュケーション・イージーポストがチャンピオンチームとして戻ってくる。前回勝ったニールソン・パウレスは欠場するが、2位を押さえたアンドレア・ピッコロが今度はエースを務めることになりそうだ。
彼らを止める一番手としては、10年ぶりに宇都宮に帰還するスーダル・クイックステップが挙がる。なんといっても、ジュリアン・アラフィリップの来日がビッグトピック。ツール・ド・フランスや名高いクラシックレースで主役を張る男だから、古賀志林道の上りだってお手のもの。先のイル・ロンバルディアで良い動きを見せたファウスト・マスナダや、この秋勝利を挙げているイラン・ファンウィルデルもメンバー入りしており、戦力は今大会ナンバーワンで間違いない。
バーレーン・ヴィクトリアスは、われらが新城幸也が今年も絶対エース。コフィディスはツール2大会連続総合トップ10入りのギヨーム・マルタン、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティはブエルタ・ア・エスパーニャでステージ勝利を挙げたルイ・コスタがやってくる。チーム ジェイコ・アルウラーはジロ・デ・イタリア個人総合7位のエディ・ダンバーが中心。リドル・トレックは、当初ジュリオ・チッコーネの参戦が見込まれていたが落車負傷で厳しい状況。代わって2015年と2019年に勝っているバウケ・モレマが3度目の優勝をかけてエースを務める公算だ。
イスラエル・プレミアテックとロット・デスティニーのUCIプロチーム勢も同ワールドチームと互角の戦力を有する。前者はクリストファー・フルームのほか、パリ~トゥールを制したばかりのライリー・シーハンがメンバー入り。後者は前回5位のマキシム・ファンヒルスが優勝候補に名を連ねる。
9チームが集う日本勢では、ホームチーム・宇都宮ブリッツェンの「赤のトレイン」が今年も見られるか。JCL TEAM UKYOには増田成幸や岡篤志、キナンレーシングチームはこの秋絶好調のライアン・カバナとドリュー・モレが控える。ヴィクトワール広島のベンジャミン・ダイボールは前回大会で3位に入っている。
宇都宮市大通りを駆け抜けるジャパンカップ クリテリウム
ロードレース前日の10月14日には、宇都宮市中心部の目抜き通りを舞台に「ジャパンカップクリテリウム」も実施される。1周2.25kmのコースは2つのヘアピンコーナーをのぞけばほぼ一直線。ロードレースに出場するメンバーの大多数が顔見せかつ脚慣らしとして臨むので、ハイスピードバトルとなるのは必至。プレイベントというには贅沢すぎるほどで、“本物のスピード”を間近で感じられる絶好のチャンス。
こちらは、エドワルト・トゥーンス(リドル・トレック)の3連覇なるかに注目。新型コロナによる大会中止期間を挟みながらも連勝を続けている。そこに、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)や小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)といった、国内屈指のスピードマンがどうチャレンジしていくかが見もの。
回を追うごとに“世界vs.日本”の構図が明確化しているジャパンカップ。ワールドクラスのチーム・選手を迎え撃つ日本勢だったジャイアントキリングのチャンスは十分にある。国内外のトップライダーたちが魅せる“本物の戦い”が、われわれのすぐ手が届くところにある。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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