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【Cycle*2023 アークティックレース・オブ・ノルウェー:プレビュー】地球上、最も北で開催される“納涼レース” 今季ブレイクのレックネスンがリーダージャージ「白夜の太陽」防衛に挑む
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介北極圏を走る 中央にはノルウェーのチーム、ウノエックス(黄色に赤のジャージ)
北極を意味する「アークティック」を冠し、その名の通りに北極圏を舞台にする。“地球上、最も北で開催される国際ステージレース”は「レースコンセプトに立ち返り」(主催者談)、今年は全ステージでノルウェー領土の北極圏内を走る。北緯66度33分(北極線)以北は、レースが実施される8月半ばでも最高気温が15度を下回る日が多く、世界的な猛暑とはどうやら無縁のようである。
まさに“納涼レース”。「アークティックレース・オブ・ノルウェー」は今年ももちろん、ノルウェー北部の美しいフィヨルドを横目にプロトンは進行する。前回はアンドレアス・レックネスン(チーム ディーエスエム・フェルメニッヒ)が、最終日に家族や友人が見守る中でロングエスケープに成功。ステージ優勝と合わせて、地元ライダーとしては8年ぶりの大会制覇を果たした。彼が今季、ジロ・デ・イタリアでマリア・ローザを5日間着用したことを思えば、ネクストブレイクへの大きな意味を持つコンペティションなのは確かである。次世代ライダーにとっては、ここでの4ステージが貴重だ。
第1ステージ
ラップランド北部文化の中心地であるカウトケイノをスタートする第1ステージ(171km)は、平坦路を北に進み、ユネスコ世界遺産「アルタの岩絵」があるアルタの街をめぐる周回コースへ。3周する間、登坂距離1.4km・平均勾配4.6%の2級山岳を越える。フィニッシュも海抜数メートルから一気に61mまで。アークティックレースではおなじみの上りスプリントで、初日の勝者を決める。
第2ステージ
アルタは第2ステージ(153.4km)のスタート地にもなり、プロトンはさらに北進。前半で3つのカテゴリー山岳をこなした後は下り基調を行き、118.2km地点の中間スプリントポイント通過直後にクバルスン橋を渡ってクバレイ島へ。ハンメルフェストのフィニッシュも、海抜数メートルから83mまで駆け上がる。視界の先に広がるは、世界最北と言われる不凍港だ。
第3ステージ
個人総合争いは、第3ステージ(167km)から本格的に動きそう。ハンメルフェストを後にし、レース半ばから針路を北へ。134.5km地点の1級山岳(登坂距離4.1km、平均勾配5.2%)、153.1km地点の2級山岳(2.6km、5.4%)を越えて、ハヴォヤ島へ渡る。ハヴォイサンの街を抜け、無数の風車が見えてきたら、1級山岳頂上のフィニッシュへ向かってのクライミング。最後の上りは距離2.2km・平均勾配10%。パンチ力のある選手たちがステージ優勝とリーダージャージを賭けてバトルを繰り広げる。
第4ステージ
最終・第4ステージ(171.5km)は、第2ステージと第3ステージで通過地となったクバルスンを出発し、前日とは逆にポルサンゲン半島の東海岸を進む。レース後半でノースケープトンネル(6870m)を通過して、マーゲロイ島へ。フィナーレは、ヨーロッパ大陸最北端を示す地球儀のモニュメントで知られるノールカップ。マーゲロイ島では2つの1級山岳を越え、それぞれ登坂距離が4.2kmと3.1km、平均勾配が5.5%と7.4%。樹木がほとんどないツンドラ地帯の美しさとは裏腹に、選手たちは最後まで厳しい戦いを強いられることになる。前日を終えた時点で僅差であろう個人総合の行方は、フィニッシュ前21kmと6kmにそびえる2カ所の上りで決着を見ることになりそうだ。
第10回記念の今大会には、6つのUCIワールドチームが参戦。ディフェンディングチャンピオンのレックネスンは、ビッグネームのひとりとしてこのレースに還る。UCI世界選手権男子エリートロードレースで7位と健闘したマチュー・ディナム、スプリンターのアルベルト・ダイネーゼもメンバー入りし、随一の戦力で挑む。
レックネスンに続けと、多くのノルウェー勢が今大会に照準を定めている。アームングルンダール・ヤンセン(チーム ジェイコ・アルウラー)は、ベテランクライマーのアレッサンドロ・デマルキとのダブルリーダー体制。マルクス・フールゴー(リドル・トレック)には、ツール・ド・ポローニュで山岳賞を獲った勢いがある。
2022年総合優勝のレックネスンはマリア・ローザを5日間着用
8チームが参戦のUCIプロチームでは、Q36.5プロサイクリングチームからカールフレドリク・ハーゲンがエントリー。北欧の雄としてツール・ド・フランスでもインパクトを残したウノエックス・プロサイクリング チームは、“大型エンジン”の異名を持つラスムス・ティレルを中心に、限りなくベストに近いメンバーをそろえる予定だ。
ノルウェーナショナルチームには、普段はEFエデュケーション・イージーポストで走るオドクリスティアン・エイキングが加わる。地元勢以外では、ギヨーム・マルタン(コフィディス)や、2017年大会の覇者であるディラン・トゥーンス(イスラエル・プレミアテック)、トップチームからの注目も篤いロジャー・アドリア(エキポ・ケルンファルマ)の走りを押さえておきたい。
アークティックレース・オブ・ノルウェーといえば、シャレの利いた各賞ジャージも見もの。個人総合はミッドナイト・サン・ジャージ……つまりは「白夜の太陽」。ヤングライダー賞はホワイトジャージ、ポイント賞はブルージャージ。人気を誇る山岳賞ジャージ「ピーコックジャージ」は、孔雀の羽をあしらったデザインだ。そしてもうひとつ、最も印象的なアシストを見せた選手に贈られる「ヴァイキングジャージ」は、北欧神話の民「ヴァイキング」のように屈強で、チームの勝利のために献身的に働いた選手に与えられる。こちらは毎ステージ、SNSによる投票で受賞者が決まる。
なお、大会はアークティックレース・オブ・ノルウェー アソシエーションが主催し、アモリ・スポル・オルガニザシオン(A.S.O.)のバックアップのもと運営される。
最大栄誉“白夜の太陽”は誰に降り注ぐか。北の大地から届く壮大なドラマをしかと見届けよう!
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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