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【Cycle*2023 UCI世界選手権大会 女子エリート 個人タイムトライアル:プレビュー】ウィメンズプロトンの中心選手が集結! 新女王誕生か、絶好調ダイガートの王座返り咲きか!?
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介UCI世界選手権大会 女子エリート個人タイムトライアル
8月3日に開幕(パラサイクリング・トラックは8月2日に競技開始)したUCI世界選手権。同5日からロード種目も始まり、同10日に女子エリートの第1弾として個人タイムトライアルが行われる。
普段は種目ごとに世界選手権や大陸選手権、国内選手権が実施される自転車競技だが、今回は初の試みとして、開催地をひとつにしての集中開催。“スーパー世界選手権”と銘打って、UCI(国際自転車競技連合)は4年に一度のペースで催す方針を打ち出している。
各種目の勝者には、世界王者の証として純白に虹色を施したスペシャルジャージ「マイヨ・アルカンシエル」が贈られる。このジャージを賭けてどの種目もいつにない熱戦が展開されているが、ロードも同様。8月6日に行われた男子エリートロードレースは、変化の多いコースと、それを攻略したマチュー・ファンデルプール(オランダ)の驚異の独走で、世界中のファンを虜にした。
その熱が冷めやらぬうちに、ウィメンズレースも続きたい。女子エリート個人タイムトライアルは、先のツール・ド・フランス ファムで活躍した選手たちを中心に、いまのプロトンの構図を示すハイクオリティな戦いとなりそうだ。
個の走力を図る戦いは、レース距離36.2km・獲得標高242mのコースで争われる。グラスゴーから北西に移ったスターリングを発着地とし、前半は西向きに進行。後半は東向きに進んでスターリングへと戻ってくる。大きく言えば、行って戻って……といった具合。
中盤まではおおむねフラットなレイアウトだが、後半に入ってガーガノックで小さな丘越えをし、最後の8kmも断続的に上り基調。残り4kmで通過するキャンブスバーロンからいよいよ最終局面へと移っていくと、フィニッシュ前750mには6%の上り勾配が待ち受ける。その先にはスターリング城がそびえ、スコットランドの歴史とともにキャッスルヒルを見ながらレースを終える。なお、フィニッシュまでの8kmは全カテゴリー共通のルーティングになっている。
コースレイアウトを見る限りは、独走力だけでなく、アップダウンなど変化への対応力、そして何より最後の数キロを力強く上るための登坂力とパワーが求められる印象だ。
その意味では、ツール・ド・フランス ファムの最終・第8ステージで強さを見せたような選手たちが再び活躍するかもしれない。今回の方がフィニッシュへ向かう上り勾配や距離の難易度は高いが、力の出しどころとしてはツールと似ていると見ることができる。
マーレン・ローセル
ツールのタイムトライアルステージを勝ったのは、マーレン・ローセル(スイス)。彼女にとっては、持ち前の独走力と登坂力を生かせるコースとしておあつらえ向きだ。世界選手権のタイムトライアルは、過去2回銀メダル。まだ手の届いていないマイヨ・アルカンシエルへ、機は熟したと言えようか。8月8日に2連覇がかかっているチームタイムトライアル・ミックスリレーに出走を予定しており、良い流れで個人タイムトライアルを走りたい。
ライバルは、最強オランダが自信をもってエースとして送り出すデミ・フォレリング。ツールでのマイヨ・ジョーヌ獲得が記憶に新しいが、今季の無類の強さを思えばタイムトライアルでもアルカンシエルの可能性は十分。ツール第8ステージでもローセルに次ぐ2位で終えており、今回のコースにも大いに適している。普段はチームメートとして走る両者だが、今回は世界ナンバーワンの座をかけて戦うことになる。
タイムトライアルの能力でいえば、グレース・ブラウン(オーストラリア)は前述の2人より上を行っているかもしれない。前回大会はトップにわずか及ばず2位。ツールでは第8ステージにフォーカスしながら、ローセルやフォレリングに及ばず4位と悔しい思いをしており、このレースが雪辱戦になる。
ツール第6ステージで鮮やかに逃げ切ったエマセシル・ノルスゴー(デンマーク)も、タイムトライアルは得意。エリートカテゴリーでの世界選手権ビッグリザルトはまだないが、今回はツールの勢いのままに上位進出なるか。
ツール第8ステージでは長くホットシートに座った(最終的にステージ8位)ヴィットリア・グアジーニ(イタリア)は前回大会4位。スーパー世界選手権ではトラック競技にも臨んでおり、良いコンディションでロード競技に移ってくる。
このほか、リーアンヌ・マルクス(オランダ)、ジュリエット・ラブーとオードリー・コードンラゴのフランス勢も上位候補。東京五輪2020女子ロードレースでの独走劇がいまなおインパクトあるアンナ・キーセンホーファー(オーストリア)もエントリーしている。
エレン・ファンダイク
前回女王のエレン・ファンダイク(オランダ)は産休中のため欠場。前記した選手たちは誰が勝っても新女王となる。そこにストップをかけようと挑んでくるのが、クロエ・ダイガート(アメリカ)だ。
2019年のこの種目でアルカンシエルを獲っており、今回勝てば実に4年ぶり。2020年は圧勝ペースで進みながら大クラッシュに見舞われ、長く戦線を離脱するきっかけとなってしまった。そこから劇的な復活ロードを歩み、かねてから並行するトラック競技と両立。現況ではどちらかといえばトラック寄りの競技活動だが、今季はラ・ブエルタ フェメニーナやジロ・デ・イタリア ドンネといったグランツールを走っており、ロードシーンでも元気な姿を見せている。何より、このスーパー世界選手権ではトラック・インディビジュアルパシュートで圧勝。かなりの好調度合いでロードへと移行してくる。その走りやいかに。
今レースは現地時間14時(日本時間22時)に第1走者がスタート。8月9日には同じコースで男子アンダー23の個人タイムトライアルが行われるので、どんな走りが見られるかは女子エリートへの参考にもなるだろう。なお、女子も23歳未満の選手を表彰対象としており、この年代のトップタイムをマークした選手には同部門のマイヨ・アルカンシエルが授与される。
いよいよ迎えるスーパーヒロインを決める戦い、女王誕生の瞬間をしっかりと見届けよう!
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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