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【Cycle*2023 UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース:プレビュー】レムコ、ポガチャル、ワウト、マチュー・・・これぞ本当の“頂上決戦” 栄光の虹を駆け上がるのはいったい誰か!?
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介世界選手権男子エリートロードレース
8月3〜13日(パラサイクリング・トラックは8月2日に競技開始)の会期で開催されている「UCI自転車世界選手権」。今回は自転車競技初の取り組みとなる、13もの種目をひとつの街で実施する“スーパー世界選手権”。イギリスはスコットランド・グラスゴーがスーパー世界選手権初開催の場となっている。UCI(国際自転車競技連合)は今後、4年に一度のペースでスーパー世界選手権を行う方針を示しており、五輪前年に開催することで次のシーズンをも見越したビッグイベントとして定着を図っていく構えだ。
ロード種目は5日から始まり、競技2日目(6日)に男子エリートのロードレースが実施される。ロード世界選手権であれば、最終日にイベント全体の最後を飾るレースとして行われるが、今回は会期前半に催される。
このレースの勝者には、世界王者の証として純白に虹色を施したスペシャルジャージ「マイヨ・アルカンシエル」が贈られ、おおよそ1年間着用し走ることが許される。数あるワンデーレースの中でもとりわけ権威があり、誰もが憧れるアルカンシエルに袖を通すのは誰だろうか。
今年の世界王者を決める戦いは、271.1kmとワンデーレースの中でも長めの距離に設定される。獲得標高は3570m。スコットランドの首都・エディンバラのアーサーズ・シートを出発し、エディンバラ城近くの旧市街を通過。フォース湾にかかる大型橋「クイーンズフェリー・クロッシング」などを通過しながら、グラスゴーへと入っていく。
レース前半の119.8kmをワンウェイルートが占めるが、この間の登坂区間は距離5.8km・平均勾配10%のクロウ・ロードのみ。それ以外にも大小の上りはあるものの、長いレース距離と各国の陣容を考えるとプロトンを崩すようなものとはならないだろう。
ワンウェイルートを走り終えると、開催地グラスゴーの市街地をめぐる周回コースへ。1周14.3kmのコースを10周回する。フランス代表監督のトマ・ヴォクレールによれば、「特別かつユニークなコース」。具体的には、「1周あたり48ものコーナーがあり、合計すると500回近くこれらをクリアしていかないといけない」というもの。
2022年 独走勝利したレムコ・エヴェネプール
グラスゴー市街地周回では、いくつものコーナーに加えて、モンローズ・ストリートの上りもポイントになる。登坂距離は200mと短いが、勾配が7%。最終周回ではフィニッシュ前約1.5kmで上ることになり、優勝争いを大きく動かすものともなりうる。
これらを踏まえると、個々の走力はもちろん、数あるコーナーを巧みに抜けるコーナーリングとハンドリングのスキル、そして集団内でのポジショニングが重要な要素となってくる。もっとも、天気の変化が激しいグラスゴーである。雨が降ろうものなら、いよいよテクニックがモノをいうレースになっていく。
そんなテクニカルなロングコースに、メンズプロトンの今をときめくビッグスターが集結。その顔触れは、「これぞ本当の“頂上決戦”」。
最大の目玉は、世界選手権2連覇がかかるレムコ・エヴェネプール(ベルギー)の走りだ。直前のクラシカ・サンセバスティアンではレースを支配し、しっかりと勝ち切ってみせた。前回のようにライバルを圧倒する独走も魅力だが、みずから「能力が向上している」と自負するスプリント力も押さえておくべきだろう。大多数の選手が彼の早めの仕掛けをマークしているだろうが、レムコ本人は少人数のスプリントになっても勝てる手ごたえを感じているようだ。
レムコと並んで、ワウト・ファンアールトもベルギーチームのリーダーを務める。近年は両者の共闘に不穏な空気を感じずにはいられなかったが、ともに「すでに問題は解消されている」ことを強調する。特にテクニカルなグラスゴーのコースは、ワウト向きと見ることもできる。速いスピードで突き進むであろう市街地周回で、優位に立てるかもしれない。チームとしてどのようにレースを組み立てるかが大いに見もの。
ワウトを挙げるなら、“永遠のライバル”マチュー・ファンデルプール(オランダ)に触れないわけにはいかない。ワウトとは同等、いやそれ以上のバイクスキルを持っているのではないか。前回はレース前夜に起きたホテルでのトラブルで散々だっただけに、グラスゴーのコースをリベンジロードとできるか。2018年には同地で開催されたヨーロッパ選手権で2位。そのときとコースは異なっているが、空気感を知っているだけでも十分な強みになる。
2022年世界選手権男子エリートロードレースの表彰台
彼らに対峙する最大の存在が、タデイ・ポガチャル(スロベニア)だ。ツール・ド・フランスでの激闘による疲労で今大会への参加が不透明だったが、先ごろ出場意思を表明。すでにハードなトレーニングを再開しており、本番に調子を合わせてくるはずだ。レムコと同様に、“独走”はポガチャルの代名詞のひとつ。今春のアムステル・ゴールドレースで見せたような早めの仕掛けから、レースをみずからのものにする可能性は大いにある。
“王国”フランスは、過去2度世界王者に就いているジュリアン・アラフィリップが軸。同じく選手層の厚いイタリアは、テクニカルなコースに強いアルベルト・ベッティオルがチームリーダーとなりそうだ。開催地イギリスは、逃げとスプリントどちらでも対応できるフレッド・ライトを中心に戦う。
こうした「絶対エース」を擁する国のほとんどで、スプリンターも配備している点は興味深く押さえておくべきだろう。前述のとおり獲得標高は3570mだが、レース後半部のレイアウト的にスプリンターでも対応可能と見る向きがある。展開次第では、そうした脚質の選手を前線に送り込んでライバルチームに脅威を与えたり、早めの仕掛けがうまくいかなかった際のBプランとして集団スプリントを計算に入れるケースもありそうだ。
主な出走予定のスプリンター系ライダーとしては、ヤスペル・フィリプセン(ベルギー)、ブライアン・コカール、クリストフ・ラポルト(フランス)、ベン・スウィフト(イギリス)、オラフ・コーイ(オランダ)、マッテオ・トレンティン(イタリア)あたり。デンマークはマッズ・ピーダスンをエースに据える公算で、最終局面までをアシスト陣がどのように構築していくか。オーストラリアもカレブ・ユアンとマイケル・ウッズがメンバー入りし、フィニッシュ前でのスピード勝負に備えている。
ここまで挙げた国・選手以外にもチャンスは十分にある。なかでも、アウトサイダーとしてアメリカ勢の動向が注目されており、ニールソン・パウレス、マッテオ・ヨルゲンソン、クイン・シモンズと、トップシーンで実績を重ねる選手たちが複数のオプションを有する。今季ブレイクしたベン・ヒーリー(アイルランド)、アグレッシブな走りから勝機をつかみにいくニルス・ポリッツ(ドイツ)、デレク・ジー(カナダ)、シュテファン・キュング(スイス)、トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー)らも忘れてはならない。スペインは、ツールでのステージ優勝が記憶に新しいヨン・イサギレがメンバー入りした。
日本勢では、新城幸也が単騎参戦。数的なビハインドをものともせず、上位進出のチャンスを図っていく。
国ごとのチーム編成で、UCIの国別ランキングをもとに各国の出場枠が決定。最大出場枠は「8」で、この8枠を持つベルギーやオランダ、フランスなどがレースをコントロールしていくものと予想される(ベルギーは前回優勝枠が追加され9人出走)。世界中が注目するレースは、現地時間午前9時30分(日本時間午後5時30分)にスタートの号砲が鳴る。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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