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【ツール・ド・フランス2023 レースレポート:第6ステージ】大会最初の頂上フィニッシュはタデイ・ポガチャル快勝! 強さ示して仕上がりの不安を払拭 目標はカヴェンディッシュの通算勝利記録!?
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介レース後に笑顔を見せるポガチャル
大会6日目にして、早くも“頂上決戦”の趣きだ。名峰トゥルマレでアタックした王者ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ)を追えたのは、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)ただひとり。最後はコトレ・カンバスクの上りで一騎打ちになり、残り2.7kmでアタックを成功させたポガチャルに軍配。ヴィンゲゴーに24秒差をつけて、前日の遅れを少しばかり取り戻した。
「リベンジというほどでもないけどね。それでも、今日のステージを勝ってタイムを取り戻すことができたのは良かった。ホッとしているよ。昨日みたいなレースになったら、“もう荷物をまとめて家に帰ろう”と思っていたくらいさ(笑)」(タデイ・ポガチャル)
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前日の第5ステージでは大人数の逃げから、ジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ)が独走に持ち込んで、ツール初勝利。マイヨ・ジョーヌもゲットして新たな1日を迎えている。
ピレネー2連戦の2日目。第6ステージは今大会最初の山頂フィニッシュが設けられる。レース中盤以降の上級カテゴリーの登坂が複数待ち受け、1級アスパンと超級トゥルマレ、ツールではおなじみの2つの峠越え。そこから約30kmのダウンヒルを経て、最後に上るのが1級コトレ・カンバスク。頂上に近づくにつれ勾配が厳しくなっていき、フィニッシュ前では10%を超える急坂に。“これぞピレネー”と言えるようなコースが用意された。
迎えたレースは、前日と同様にワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)やジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)らのスタートアタックで幕開け。13km地点で15人の先頭グループがまとまり、少しおいて5人が合流。先導する20人の中には、ワウトやアラフィリップのほか、マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)らの姿も。ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)は、失った山岳賞マイヨ・アポワ奪還に向けてカテゴリー山岳の上位通過に勤しむ。また、ブライアン・コカール(コフィディス)は持ち前のスピードを生かして、中間スプリントポイントを1位通過している。
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【ハイライト】ツール・ド・フランス 第6ステージ|Cycle*2023
アスパンに入ると、先頭グループ、その後ろ約3分30秒で続いているメイン集団ともに、人数が減っていく。この上りをこなし、次のトゥルマレへ達する頃には、先頭グループは14人に絞られた。アラフィリップがアクティブさを見せるが、どの動きも効果的とはならず、やがてこのグループから脱落。主にワウトがペースを作って標高2115mの頂上に到達する頃には、5人にまで減った。
タイミングを同じくして、メイン集団でも大きな局面を迎えていた。主導権をユンボ・ヴィスマが獲ると、ペースを少しずつ上げていく。決め手はセップ・クスの牽きで、精鋭ひしめく大きなパックが破壊され、前線に残ったのはクスのほか、ヴィンゲゴー、ポガチャル、そしてマイヨ・ジョーヌを着るヒンドレーだけ。そのヒンドレーも後ろへ下がり、クスの牽引終了と同時にヴィンゲゴーがアタック。すかさずポガチャルがチェックして、第6ステージにして“2強”のランデヴーに(ヴィンゲゴーのトゥルマレ走行時間45分11秒は2021年大会でダヴィド・ゴデュがマークした47分35秒を上回り、StravaのKOMになった)。
「昨日とは違って、今日は脚の状態が良かった。自信をもってヨナス(ヴィンゲゴー)についていけたよ」(ポガチャル)
大観衆でコースがふさがるほどのトゥルマレの上りを終え、長いダウンヒルに移ると先頭グループからワウトが下がって、ヴィンゲゴーの合流を待つ。追いつくまでにはさほど時間を要さず、そこからはワウトの牽きで下りを攻める。フィニッシュまで27kmのところで前を走っていた4人に追いつき、先頭グループは再編成。8人となって、いよいよコトレ・カンバスクへ。
牽引役はもちろんワウトだ。中腹に達するまでに人数を絞り込んで、ヴィンゲゴーとポガチャルの“頂上決戦”の機運が高まっていく。長く逃げて、終盤には効果的な働きを演じたワウトは、2日連続のステージ敢闘賞が授与されている。
「昨日かなり脚を使ってしまい、今日は何もできないのではないかと心配だったんだ。でも朝、目が覚めたら体調が良かった。“これならヨナスのために走れる”と思ったね」(ワウト・ファンアールト)
“スーパーアシスト”からのバトンを受けて、ヴィンゲゴーは残り4.5kmでペースアップ。その背後にポガチャルが続く。一時的にミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ)が食らいついたが、ほどなくして下がっていった。ついに、2人の“チャンピオン”によるマッチアップが始まった。
ヴィンゲゴーを置き去りにするポガチャル
たびたびダンシングでペースを作るヴィンゲゴーに対し、シッティングで淡々と踏み続けるポガチャル。決定打はフィニッシュ前2.7kmで生まれた。計ったようにポガチャルがアタックすると、ヴィンゲゴーは対応しきれず。互いの姿は、沿道を埋め尽くす熱狂的な観客に埋もれ、あっという間に見えなくなってしまった。
「今日は間違いなくタデイ(ポガチャル)の方が強かったよ。彼はステージ優勝に値する走りをしていた。昨日と同じように彼の状態を試そうとアタックを繰り返したけど、調子は良さそうだね。この戦いがパリまで続くんだね…地獄のようだよ(笑)」(ヨナス・ヴィンゲゴー)
残り2kmを切ってさすがに苦しさに表情がゆがんだポガチャルだったが、ペダリングは力強いまま。徐々に、徐々にヴィンゲゴーとの差を広げ、今大会1つ目のステージ優勝をつかんだ。
「昨日の走りを心配してくれる人が多かったのだけれど、ただただヨナスが強かったんだ。今日は走りながら調子が戻ってきている実感があった。アタックは自分にとってベストだと感じたタイミングで試みたよ」(ポガチャル)
ヴィンゲゴーに24秒差をつけるとともに、ボーナスタイムも手に入れ、スタート前に53秒差だった両者の総合タイム差は25秒まで縮まった。何より、走りを取り戻し、ステージを制したことでコメントも“快調”そのものだ。
「ツールのステージ通算で10勝目。マーク、僕は君が目標だよ! アハハ……冗談冗談」(ポガチャル)
キャリア最後のツールに通算ステージ勝利数の新記録をかけるマーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタン チーム)を目標にするというのか! 冗談といって話を切ったポガチャルだけど、彼ならあり得ない話じゃないようにも思えてしまう。
ともかく、ポガチャルの状態は決して悪くない。このステージのスタート前には仕上がりの遅れを指摘する報道もいくつかあったが、良いステージもあれば苦しむステージもある…ということ。グランツールを勝つには、そんな日々をも越えていかなければならないのだ。
かたや、最大のライバルにアタックを許したヴィンゲゴーだけど、マイヨ・ジョーヌは手に入れた。ヒンドレーが2分30秒以上遅れたことで、数字のうえでは文句なしの個人総合首位。ポディウムでは、レース視察に訪れたフランス大統領エマニュエル・マクロンからの祝福を受けた。
「マイヨ・ジョーヌが手に入ったことで失望は和らいだよ。このジャージを着られるのはいつだってうれしいのだから。本当ならステージ優勝をしたかったのだけれど……ツールは長いし、またチャンスがめぐってくると思う。チームメートの働きには感謝しかないよ」(ヴィンゲゴー)
この2人の力が、他の総合系ライダーに対して一段も二段も上を行っている印象を抱かせた第6ステージ。先々のステージではどんなストーリーが描かれるだろうか。
その前に久々の平坦ルート。第7ステージは3日ぶりとなるスプリンターが主役の1日。フィニッシュ地はワインどころボルドーだ。
●ステージ優勝、マイヨ・ブラン タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)コメント
「昨日のレースを受けてあきらめる要素は何ひとつなかったし、調子は決して悪くなかった。ヨナス(ヴィンゲゴー)がはるかに僕を上回っていた、それに尽きるんだ。今日、ユンボ・ヴィスマがトゥルマレでペースコントロールをし始めたときには、“昨日と同じことが起こるかも……そうなったら荷物をまとめて家に帰ろう”とまで思ってしまったよ(笑)。
今日の走りには満足している。全力を尽くし、戦術的でスマートなレースができた。体調もまったく問題ない。最後の最後まで、マイヨ・ジョーヌを争えると確信している。今日のヨナスの走りを見ても、簡単なステージはまったくないだろうね。
今日の勝利はウルシュカ(ジロ・ドンネで落車負傷したガールフレンド)に捧げるよ。彼女はレースを走れず、自宅に帰ったのだけれど、僕にすべての力を与えてくれたんだ」
クールダウンするヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ)
●マイヨ・ジョーヌ ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ)コメント
「マイヨ・ジョーヌが手に入りとてもうれしい。このジャージが着られることはいつだって喜ばしいよ。今日はステージ優勝も狙っていた。でも、タデイ(ポガチャル)が圧倒的だったね。彼の走りは勝利に値するし、僕もアタックしたけどリードを奪うことはできなかった。彼も僕も調子は良いし、パリまで“地獄の戦い”になるだろうね……はぁ、大変だよ(笑)。
去年と比較して調子はどうって? まだ判断は難しいね。ただ、イメージしていたレベルには達している。ツールは長いし、これから何が起きるかは様子を見ていかないとね。ひとつ言えることは、チーム状態が良く、今日もみんなが僕を助けてくれた。この後“ありがとう”と伝えにいくよ。
マクロン大統領は昨年の第18ステージのことを覚えてくれていて、今年も残りのステージの幸運を祈ってくれたよ」
●ステージ敢闘賞 ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)コメント
「昨日のステージで脚がいっぱいになってしまい、今日はどうなるか不安だった。朝、起きてみたら体調がよく、“これならヨナスのために走れる”と思ったよ。結果的に望んでいたようなシナリオではなかったけど、ヨナスの調子の良さを改めて実感できた点でポジティブだ。マイヨ・ジョーヌも手に入れたしうれしいよ。
タデイ・ポガチャルという男を過小評価したことは一度もない。彼はどんな時でもわれわれの近くにいて、昨日のようにタイムを失っても必ず取り戻しに来る。彼は強いんだ。表彰台の一番上に戻りたいと思っていることも分かっている。
明日のステージ? まだ決めていない。スプリンター向けだけど、僕はトライするべきだろうか……ちょっと考えてみるよ」
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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