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サイクル ロードレース コラム 2023年6月12日

【Cycle*2023 クリテリウム・デュ・ドーフィネ:レビュー】ヨナス・ヴィンゲゴーとユンボ・ヴィスマの強さが際立った大会、8ステージ中4区間の勝利、個人総合とポイント賞を獲得

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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クリテリウム・デュ・ドーフィネ

総合優勝はヴィンゲゴー、2位アダム・イェーツ、3位オコーナー

第75回クリテリウム・デュ・ドーフィネが6月4日から11日までの8日間、フランス東部のオーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地域圏で開催され、ユンボ・ヴィスマヨナス・ヴィンゲゴーが初優勝した。デンマーク勢がこの大会を制したのは、2017年と2019年のヤコブ・フルサンに続いて3回目。

毎年6月中旬に開催され、ツール・ド・フランスの前哨戦と言われるクリテリウム・デュ・ドーフィネ。前年の大会はプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)が総合優勝、ヴィンゲゴーが2位、ワウト・ファンアールト(ベルギー)がポイント賞を獲得するなどユンボ・ヴィスマ勢が席巻したが、2023年も第1ステージからユンボ・ヴィスマのペースとなった。

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クリテリウム・デュ・ドーフィネ

第1ステージに続いて第3ステージを制したラポルト

まずは第1ステージ、2022ツール・ド・フランスでのステージ優勝経験もあるユンボ・ヴィスマのクリストフ・ラポルト(フランス)が少人数のゴール勝負を制して優勝。総合成績でも首位に立った。第2ステージで勝ったのはジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)だったが、ラポルトがタイム差なしで首位を守った。好調のラポルトは第3ステージでも少人数のゴール勝負を制して優勝した。

第4ステージは舞台が一転して大会唯一の個人タイムトライアル。UAEチームエミレーツのミッケル・ビョーグ(デンマーク)がトップタイムを叩き出し、総合成績で首位に立ち、ラポルトからリーダージャージを奪った。

それでもユンボ・ヴィスマの優位性は変わらない。ヴィンゲゴーがこの個人タイムトライアルで12秒遅れの区間2位でゴール。ヴィンゲゴーは総合成績でリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)らを追い抜き、ビョーグから12秒遅れの総合2位に浮上した。

ツール・ド・フランスでも勝負どころとなるアルプスを舞台とするクリテリウム・デュ・ドーフィネは、第5ステージから本格的に有力選手の戦いが始まった。主役はここでもヴィンゲゴーだった。大会5日目に得意とする上り坂での実力を見せつけ、総合成績の上位を争うライバル選手たちを置き去りにして、独走のステージ優勝を果たし、総合リーダーに躍り出るのだった。

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】クリテリウム・デュ・ドーフィネ 第8ステージ|Cycle*2023

クリテリウム・デュ・ドーフィネ

第5ステージでカラパスの動きにヴィンゲゴーが反応

ヴィンゲゴーは、この日の勝負どころでカラパスのアタックに反応し、残り16km地点ではライバル全員を脱落させた。結果としてヴィンゲゴーが独走勝利。リーダージャージは落車でメイン集団から脱落してしまったビョーグから同じデンマーク選手のヴィンゲゴーに移った。

「実際のところ、今日は攻撃したくなかった。自分の順位を守りたかったのにライバルたちが攻撃してきた。ボクはリチャル・カラパスの動きに反応し、彼と協力した。そして最後はなんとか彼を落とすことができた。もちろん、今日の勝利にはとても満足している」 とヴィンゲゴー。

「でも、今日のような結果は、最難関の第7ステージを考えると、決定的とは言えない思う。それでもリーダージャージを手に入れたので、次の日もそれを維持できればと思う。体調はいいのでたぶん大丈夫。できるよ。このタイム差があれば守備的に乗れるから」

大会は第7ステージがクイーンステージと呼ばれる最難関だった。名だたるクライマーが標高2067mの大会史上最も高いゴールラインに挑戦する。ゴールはフランス語で「鉄の十字架」という意味のクロワ・ド・フェール峠に設定されていた。

この日はステージの前半にマドレーヌ峠、そしてモラール峠があり、単独で先行したビクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)が山岳ポイントを量産。この日だけで山岳賞首位になり、青字に白い豆がちりばめられたリーダージャージを確保した。

クリテリウム・デュ・ドーフィネ

最難関の第7ステージを制したヴィンゲゴー

一方の総合優勝争い。クロワ・ド・フェール峠のゴールまで5.5kmのところで、リーダージャージを着るヴィンゲゴーが決定的な加速を見せると、誰も反応できなかった。そして第5ステージと同様にここでも独走勝利。ヴィンゲゴーは最終ステージ前に総合成績でのアドバンテージを増やし、優勝に王手をかけた。

「とても調子がよかったので、ステージ優勝の表彰台に立ちたかった。それは私たちがこの日の目標としていた計画だった。ゴールまでの6kmは急坂だったので、ティシュ・ベノートとアッティラ・バルテルでテンポを上げてアタックの準備をすることにした。ソロで行くことができてよかった。それがうまくいったことをとてもうれしく思う。素晴らしい仕事をしてくれたチームメイト全員に改めて感謝しなければならない」とヴィンゲゴー。

クリテリウム・デュ・ドーフィネ

アルプス近郊を走るクリテリウム・デュ・ドーフィネ

UAEチームエミレーツのエースとして出場しているアダム・イェーツ(英国)は、総合2位につけていたアージェードゥーゼール・シトロエンチームベン・オコーナー(オーストラリア)をふるい落とし、ヴィンゲゴーから2分11秒遅れの総合2位に浮上するのが精一杯。オコーナーは2分24秒遅れとなって総合3位に後退した。

「最終日は自分の気持ちがどうなるか分かるだろうが、全く違うステージだ。いずれにせよ、今年最大のレースの一つなので、明日勝てればとても光栄だ。自分が最高の状態にあるとは思っていない。今からツール・ド・フランスまでにやるべきことはまだたくさんある」とは最終日前日のヴィンゲゴーのコメント。

最終日となる第8ステージでもヴィンゲゴーは安泰のレースぶりを見せつけた。独走勝利したジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)に続き、ヴィンゲゴーは総合優勝争いをしていたライバルたちをふるい落とし、区間2位でゴールした。

「UAEチームエミレーツのマイカがグループの先頭を走っていて、アダム・イェーツが最後の上りでアタックしようとしているのが予測できた。いい感じだったので、またアタックをやってみた。今週はとても満足できる。調子もよく、チーム全体も素晴らしかった」(ヴィンゲゴー)

総合2位はアダム・イェーツで2分23秒遅れ、同3位はオコーナーで2分56秒遅れ。ポイント賞はラポルト、山岳賞はチッコーネ、新人賞はカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)が獲得した。

2022ジロ・デ・イタリア総合優勝のジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)は3分16秒遅れの総合4位。大事故から復帰したイネオス・グレナディアーズのエガン・ベルナル(コロンビア)は6分44秒遅れの総合12位。カラパスは35分32秒遅れの総合36位。

クリテリウム・デュ・ドーフィネ

大会運営はツール・ド・フランス仕様だ

ユンボ・ヴィスマ勢はラポルトとベノートが力強い走りを見せて、ツール・ド・フランスでの計算できる戦力に。一方、ステフェン・クライスヴァイク(オランダ)が第2ステージで負傷リタイアし、7月に間に合わないことが判明。チームは5月のジロ・デ・イタリアを走った要員からツール・ド・フランスのメンバーを起用する必要が生じた。

「総合成績でこれほどの差が広がったことに少し驚いている」と総合優勝を決めたヴィンゲゴー。最終日前日の記者会見で語った言葉が微妙に変化した。

「これからは数日間休みを取って、ツール・ド・フランスの準備を続けたい。まだやるべきことは少し残っているが、それほど多くはない」

文:山口和幸

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山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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