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【ジロ・デ・イタリア2023 レースレポート:第18ステージ】2度目の2位にあまんじるもティボー・ピノが山岳賞ジャージ奪還!誕生日にマリア・ローザを死守したトーマス「私は37歳で、ビーチにいるべき人間だ」
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸ピノが山岳賞ジャージを奪還
第106回ジロ・デ・イタリアは5月25日、オデルツォ〜ヴァル・ディ・ゾルド間の山岳ルートで距離161kmの第18ステージが行われ、チームジェイコ・アルウラーのフィリッポ・ザナ(イタリア)がグルパマ・エフデジのティボー・ピノ(フランス)を制して初優勝した。
ピノは第13ステージに続いて2着に終わったが、山岳賞争いでEFエデュケーション・イージーポストのベン・ヒーリー(アイルランド)を逆転してトップに立ち、山岳賞ジャージを奪還した。
総合1位のマリア・ローザを着用するゲラント・トーマス(英国、イネオス・グレナディアーズ)は、29秒遅れの総合3位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)と協力し、18秒遅れの総合2位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)を突き放した。
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その結果、トーマスがマリア・ローザを堅持し、ログリッチがタイム差は変わらず29秒のまま総合2位に浮上した。アルメイダは39秒遅れとなり、総合3位に後退した。
この日は5つの山岳ポイントが待ち構えるイタリア北部のドロミテ山塊が舞台。岩盤が針のように屹立する独特の景観を持つ、ジロ・デ・イタリア終盤戦の勝負どころだ。この日のコースはスロベニア国境に近く、ログリッチを応援するファンも沿道にひしめく。
レースは山岳賞1位のヒーリーら5選手が飛び出して戦いが始まった。ところがヒーリーの調子はよくなく、最後の峠で第1集団はユンボ・ヴィスマがペースメークするメイン集団に捕まってしまう。
すかさず飛び出したのが山岳賞ジャージをねらうピノ、ステージ初勝利を目指すイタリアチャンピオンのザナだ。8人となった第1集団は、いったんは30人ほどに数を減らした有力選手らの集団に吸収されるもの、山岳ポイントの獲得を目指すピノが再びアタック。5人の先頭集団となったが、ザナは再びここに加わっていた。
ここからピノの山岳ポイント量産が始まった。ゴールとなるヴァル・ディ・ゾルド以外の4つの山岳ポイントすべてを1着通過。大量にポイントを稼いで、山岳賞で一気に首位に立った。
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【ハイライト】ジロ・デ・イタリア 第18ステージ|Cycle*2023
逃げた5選手のなかで総合成績が最もいいのも6分48秒遅れの13位にいるピノだった。残り55kmでメイン集団との差は4分33秒で、逃げ切りの可能性が高くなり、逃げた選手らは活気立つ。総合成績の逆転も想定されることから、イネオス・グレナディアーズ、ユンボ・ヴィスマ、UAEチームエミレーツがその差を詰めていく。
ジリジリと有力選手がタイム差を詰めていく中で、最後の上りへ。先頭グループはバラバラになり、サバイバルレースとなった。ここからピノとザナの一騎打ちが始まった。最後は先行するピノをマークしたザナが冷静な走りで逆転してトップフィニッシュした。
「この機会を与えてくれたチームに感謝しなければならない。100%の状態でジロ・デ・イタリアに参戦することができた。今日は人生に何度かあるチャンスだったので、それをつかんだ。イタリア国旗のトリコロールジャージを着て勝つことは特別なことだ」とザナ。
ザナがピノを制して優勝
「集団から飛び出した選手らに追いつかなければならず、それは簡単なことではなかった。ジロ・デ・イタリアでステージ勝利するのが夢であり、今回の栄冠がボクのキャリアの出発点になることを願っている。これまでの人生で最も美しい日の1つとなった」(ザナ)
負けたピノは敗北を認めている。
「一番強い人が勝ったということ。いい1日を過ごせたが、フィリッポ・ザナを突き放すにはちょっとしたコツが必要だった」
クラン・モンタナにゴールした第13ステージで、ピノはモビスターチームのエイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア)、EFエデュケーション・イージーポストのジェフェルソン・セペダ(エクアドル)とのゴール勝負に挑み、ルビオに負けて2位に甘んじていた。
「この日のゴール勝負ではネガティブな考えになってしまい、第13ステージのことを思い出した。もう少し自分を信じていたら。小さな間違いを犯してしまった。でも、最悪の心理状況だった2日前にステージ優勝争いを再現しろと言われたら、無理だと思っただろう。明日の最後の山岳ステージで山岳賞ジャージを守らなければならない。ジロ・デ・イタリア最終日の表彰台に上がるのは夢だった。総合成績の表彰台には届かないが、山岳賞も悪くない」(ピノ)
一方の後続集団はログリッチのアシスト役である・セップ・クス(米国)がペースアップすると、総合2位、ヤング・ライダー賞1位のアルメイダが遅れ始めた。それを見てログリッチがアタック。トーマスがそれに反応するが、アルメイダは着いていけず。アルメイダのアシスト役ジェイ・ヴァイン(オーストラリア)が懸命にサポートする。
トーマスとログリッチは2人になると、追走するアルメイダを振り切るために協力。ザナとピノから1分56秒遅れてゴールした。最終的にアルメイダに21秒差をつけたことになる。
23日の第16ステージがマリア・ローザを獲得するための最初の戦いだったとすれば、この日は2回目の戦いだった。第16ステージではログリッチが脱落し、この日はアルメイダの番だった。この2人を1人ずつうまく利用したのがトーマスだと言っていい。
ログリッチをマークするマリア・ローザのトーマス
「プリモシュ、ジョアンとボクはかなり似ている。みんなそれぞれ悪い日を過ごした。そして明日はそれが私かもしれない。でも私は状況に左右されずに、ただしっかりと基本をやるだけだ」と37歳の誕生日にマリア・ローザを死守したトーマス。
「暑さもあり、とてもタフな1日で、最初の2週間とは全く違うレースのように感じた。確かにログリッチは今日とても強かった。でもそれは予想できていた。マリア・ローザを獲得することは私にとって大きなボーナスだ。私は37歳で、こんなことをしているよりもビーチにいるべき人間だ。これまでたくさんの転落期があったので、キャリア最高の瞬間を楽しむのも悪くはないけど」
首位トーマスは37歳、2位ログリッチは33歳。ジロ・デ・イタリアがこのまま終われば快記録が生まれるという。1955年に1位フィオレンツォ・マーニ34歳、2位ファウスト・コッピ35歳で合計69歳という年長記録を塗り替えるのだ。
バーレーン・ヴィクトリアスの新城幸也は34分57秒遅れの98位でゴール。総合成績は4時間27分06秒遅れの123位。最難関の第19ステージをゴールすれば、チーム賞1位の実績を下支えする走りで貢献しながら、目標とする完走を果たすことが確実となる。
そしてチームメートのジョナサン・ミラン(イタリア)は、第2ステージで手中にしたポイント賞ジャージを17日間もキープしている。
文:山口和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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