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【ジロ・デ・イタリア2023 レースレポート:第15ステージ】ブランドン・マクナルティがグランツール初勝利「沿道のファンがボクを励ましてくれた」 マリア・ローザはアルミライルが守る
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸マクナルティがヒーリーとフリーゴを制して第15ステージ優勝
第106回ジロ・デ・イタリアは5月21日、大会第2週の最後となる山岳ステージを北イタリアの山岳コースで行った。第15ステージはセレーニョ〜ベルガモ間の195kmで、1級山岳が46.6km地点に、中盤から終盤にかけて3つの2級山岳ポイントが待ち構えていた。レースはUAEチームエミレーツのブランドン・マクナルティ(米国)がEFエデュケーション・イージーポストのベン・ヒーリー(アイルランド)とイスラエル・プレミアテックのマルコ・フリーゴ(イタリア)をゴール勝負で抑えてグランツール初優勝を飾った。
5月21日はアスタナ・カザクスタンチームのマーク・カヴェンディッシュ(英国)の38回目の誕生日でもあった。ツール・ド・フランスでは史上最多タイとなるステージ34勝と2011年・2021年ポイント賞を獲得しているが、ジロ・デ・イタリアでも2013年にポイント賞に輝き、区間通算16勝の実績を持つ。スタート前にはバースデーケーキがプレゼントされ、多くのカメラマンに囲まれた。
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この日のコースはイタリアの自転車文化を牽引し続けるミラノにも近く、沿道にはコルナゴ一族がスマホを片手に陣取り、選手たちの走りを動画撮影してアップするなども。天気予報で心配された雨も収まり、久しぶりの陽光に恵まれて選手たちの半袖ジャージ姿も見られた。
この日のステージは区間勝利をねらう選手たちと、マリア・ローザを争う選手たちに分かれて2つのレースが同時展開された。翌日に2回目の休息日が設定されていて、これまで勝ち星をつかめていない選手たちが積極的に動いた。自らの成績のために自由を与えられ、フィニッシュを目指す17選手が第1集団を形成した。
この中から抜け出したのがヒーリー、フリーゴ、マクナルティで、最後の山岳で三つ巴の戦いに展開していく。ヒーリーが単独になって山岳ポイントを越えると、マクナルティがこれに追いつき、フリーゴもそれに合流しようと必死でペダルを漕ぐ。
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【ハイライト】ジロ・デ・イタリア 第15ステージ|Cycle*2023
こういったコースを最も得意とするのはヒーリーだ。ヒーリーは何度もアタックをするが、マクナルティはその攻撃のひとつひとつに見事に反応した。勝負は2人の一騎打ちと見られたが、最後の最後にフリーゴが追いついた。フリーゴはその勢いでゴール勝負を先行して仕掛けるが、ヒーリーも追従。そして3番手の位置からスプリントしたマクナルティがフィニッシュラインのわずか手前で2選手を逆転してステージ優勝を飾った。
マクナルティはグランツールでのステージ初優勝となるが、2022年はパリ〜ニース第5ステージで優勝していて、437日ぶりの勝利となった。2019年にはジロ・デ・シシリアの第3ステージ勝利と総合優勝を勝ち取った実績がある。山岳に強く、ツール・ド・フランスでは2021年と2022年に出場し、アシスト役としてエースの動きをサポートしている。
米国勢としてのステージ優勝は15回目。初勝利はロン・キーフェルが1985年の第15ステージで勝っている。
「いい日だった。ようやく晴れたけど、アップダウンの多いハードなステージだった」とマクナルティ。
「ゴール勝負でも一生懸命レースをした。最後は意地の張り合いだった。ヒーリーは最後の長い登りでスパートを仕掛けたので、彼に追いついて勝てるかは自信がなかった」
後続のフリーゴに追いつかれないように、2人でローテーションし、石畳と短い登りでペースアップするヒーリーにマクナルティが食らいつく。何度も困難な状況になりながらも脱落しなかったのが勝利の要因だ。
「かなり苦しんだけど、スプリントするパワーは十分残っていた。ジロ・デ・イタリアでこれまでも何度か逃げのチャンスがあったが、今日は優勝するしかないと思っていた。沿道のファンがボクを励ましてくれた」
総合差23秒以内でつばぜり合いするログリッチ、アルメイダ、トーマスが石畳を走る
一方の総合優勝争いも最後の山岳で動きがあった。前日にマリア・ローザをグルパマ・エフデジのブルーノ・アルミライル(フランス)に譲ったゲラント・トーマス(英国、イネオス・グレナディアーズ)ら有力選手がマリア・ローザを突き放しにかかったのだ。
有力選手を含むこのメイン集団はレース中盤ですでに6分の差を第1集団につけられていた。マリア・ローザを獲得するために重要な第3週が始まる前に無理をすることなく、優勝候補を擁するチームは揃ってゴールラインを通過することがこの日の目標だった。
そういった状況の中で、1分41秒遅れの総合2位トーマス、1分43秒遅れの総合3位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)らが最後の上りでペースアップすると、首位アルミライルは遅れ始めた。
「総合上位を目指す有力選手は、最後の登りで激しくレースをした。ボクは彼らに着いていくにはかなりの無理があることを知っていた。チームエースのティボー・ピノには、ボクが落ちても待たないようにと言っていた」とアルミライル。
「最後の坂でふるい落とされたが、最後まで全力を尽くした。大勢の群衆にあおられて感情に夢中にならないように集中した。あとはダウンヒルしてのフィニッシュなので1分40秒を失う可能性はほとんどないことはわかっていた」
アルミライルは結局ステージ32位でゴール。トーマスら有力選手に33秒詰め寄られたものの、この日はマリア・ローザを守った。ログリッチもトーマスから依然2秒遅れの位置で休息日を迎えることになった。まさに嵐の前の静けさだった。
アルミライルがマリア・ローザを守った
「マリア・ローザ最初の日は特別だった。多くの選手がこの日のボクが置かれた状況を体験したいと思っている。チームメートに守られてなんとかジャージを保持することができた。第3週は非常に複雑になることもわかっている。火曜日以降は、優勝候補の間で大きな戦いがあり、素晴らしい光景が展開されるだろうね」(アルミライル)
山岳賞はエオーロ・コメタのダヴィデ・バイス(イタリア)がトップを守った。ヤング・ライダー賞はUAEチームエミレーツのジョアン・アルメイダ(ポルトガル)で、総合成績でも1分30秒遅れの4位につけている。
バーレーン・ヴィクトリアスの新城幸也は29分44秒遅れの117位でゴール。総合成績は3時間09分02秒遅れの130位。ジョナサン・ミラン(イタリア)のポイント賞1位の座と、チーム成績1位に大きく貢献する走りを続けている。
5月22日は大会2回目の休養日。23日から最終週が再開し、28日にローマでフィナーレを迎える。
文:山口和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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