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【Cycle*2023 ラ・ブエルタ フェメニーナ:プレビュー】女性版グランツールが男性よりひと足先に開幕、今季第一弾は情熱の国スペインから! フォレリング、ファンフルーテンらが総合タイトルを目指す
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介今大会が「第1回ラ・ブエルタ フェメニーナ」
ウィメンズシーンは、男子よりひと足早くグランツール戦線に入る。今季の第一弾は、ラ・ブエルタ フェメニーナ。情熱と美しさが融合するスペインで、1週間の戦いが繰り広げられる。
「女性版ブエルタ・ア・エスパーニャ」が初開催されたのは2015年。「マドリードチャレンジ」と称し、本家ブエルタの最終日・マドリードステージに先だって市街地周回レースを実施したのが始まり。3年間はこの形態で行い、4年目から5年目にかけては2ステージ制に。6年目からは1ステージずつ増やしていき、8年目だった昨年は5ステージで争われた。
今年が実質9回目になるわけだが、主催するウニプブリク(スペインのスポーツイベント企業)に言わせると、今回は「第1回ラ・ブエルタ フェメニーナ」だという。昨年までは大会名の後ろに「バイ・ラ・ブエルタ」(by La Vuelta)と付けられていて、それは「ブエルタ・ア・エスパーニャ関連イベント」であることを意味していたよう。今年からは「ラ・ブエルタ フェメニーナ」との大会名になり、晴れて単独イベントとしての扱いに。開催時期も、9月から5月へ“引っ越し”となった。
それにともなって、ステージ数は7にスケールアップ。ジロ・デ・イタリア ドンネが全10ステージ、ツール・ド・フランス ファムが全8ステージなので、ステージ数のバラつきこそあるものの、これらイベントの規模が近いものになってきた。男子レースと同様、“グランツール”と呼ぶにふさわしいところまでやってきている。
7日間の総距離は740.7km。広大なスペインを南から北へ縦断するルートがとられる。
第1ステージ 5月1日 トレビエハ~トレビエハ 14.5km チームタイムトライアル
第2ステージ 5月2日 オリウェラ 〜 ピラール・デ・ラ・オラダダ 105.8km 平坦
第3ステージ 5月3日 エルチェ・デ・ラ・シエラ 〜 ラローダ 158km 平坦
第4ステージ 5月4日 クエンカ 〜 グアダラハラ 133.1km
第5ステージ 5月5日 ラ・カブレーラ 〜 ミラドール・デ・ペーニャ・リアサ 129.5km 山岳
第6ステージ 5月6日 カストロ・ウルディアレス 〜 ラレド 106.1km 中級山岳
第7ステージ 5月7日 ポーラ・デ・シエロ 〜 ラゴス・デ・コバドンガ 93.7km 山岳
晴れて単独イベントとしての扱いになったラ・ブエルタ フェメニーナ
幕開けはチームタイムトライアル。各チームの戦力が試されるとともに、個人総合での上位進出を狙う選手たちにとっては大きな取りこぼしは避けたいところ。コースは2019年ブエルタ男子の第1ステージがモデルになっている。
続く3日間は平坦区間。第2ステージはコーナーの多さが特徴で、この日から山岳賞争いもスタート。第3ステージは今大会最長の158km。舞台となるアルバセテ県は年間を通して風が強く、状況次第ではプロトンを崩壊させることもありうる。第4ステージもスプリントフィニッシュが予想されているが、ポイントは残り12kmで頂上に達する3級山岳。流れを変えたいチームが奇襲に出るかもしれない。
山岳ステージは後半3ステージに集中。個人総合争いの第1ラウンドは第5ステージ。主催者は、42.2km地点から上り始める1級山岳プエルト・デ・ナバフリア(登坂距離11.5km、平均勾配5.8%、最大勾配13%)でプロトンが崩壊する可能性を示唆。最後は2級山岳頂上のフィニッシュラインへ5km上る。
中級山岳にカテゴライズされる第6ステージは、2つの2級山岳越え。上り終えるとフィニッシュまでは約22kmあり、逃げ切りを容認するか集団をまとめてフィニッシュさせるか、リーダーチームの判断が見もの。
今大会のフィナーレは、名峰ラゴス・デ・コバドンガ。登坂距離12.5kmで平均勾配6.9%、最大勾配は中腹付近で15%。もっとも、この平均勾配は区間後半に平坦と下りが断続して控えていることに起因しており、上りそのものは10%前後の急勾配が続く。ブエルタ男子でもたびたび勝負区間に位置付けられる“アストゥリアスの巨像”で、新生ラ・ブエルタ フェメニーナの“初代”女王が決まる。
参加は24チームで、1チームあたりの最大出走人数は7名。個人総合争いの最注目は、アネミエク・ファンフルーテン(モビスター チーム・ウィメン)とデミ・フォレリング(チーム SDワークス)の参戦だ。
春のスペインをたっぷり7日間堪能できる
ファンフルーテンは昨年、すべてのグランツール(ジロ、ツール、ブエルタ)で個人総合優勝。男子ではいまだ達成者のいない偉業を成し遂げたばかりか、ロード世界選手権にも勝って“クアドラプル”(4冠)を果たしている。今季は未勝利で、春のクラシックも全開とはいかなかったが、トータルで戦えるステージレースなら勝機は一層膨らむ。モビスター チーム・ウィメンは、ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ2位のリアヌ・リッパートもメンバー入りするなど、スペインに本拠を置くチームとしてベストメンバーを編成する。
一方で、アルデンヌクラシックではハットトリックを達成し、ノリにノッているフォレリング。ステージレースにも強く、前回大会は個人総合3位。クラシックで見せた上りでのプッシュをスペインの山岳でも発揮するか。
この2人を追うのが、カタジナ・ニエウィアドマとエリーズ・シャベイのキャニオン・スラム レーシング勢やスペイン女王のマビ・ガルシア(リブレーシング・エクストラ)、ジュリエット・ラブー(チーム ディーエスエム)あたり。いずれもグランツールでの実績は十分。高いチーム力を誇るトレック・セガフレードは、ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ3位のガイア・レアリーニとアムステルゴールドレース3位のシリン・ファンアンローイのヤングライダーが飛躍を狙う。
スプリンターでは、シャーロッテ・コール(チーム ディーエスエム)がナンバーワン候補。今季はすでに2勝しており、ブエルタでも勝って大ブレイクといきたい。最大のライバルは、“女王中の女王”マリアンヌ・フォス(ユンボ・ヴィスマ)となってきそう。数多くのタイトルを手にし、いまなおどんなコースでも強さを発揮するが、近年の走りを見ると平坦でチャンスをうかがうことになりそう。
アグニエシュカ・スカルニアクソイカ(キャニオン・スラム レーシング)は、昨年挙げた12勝のほとんどがスプリントによるもの。ここへきて調子を上げてきたシルヴィア・ザナルディ(ビーピンク)にもチャンスあり。パリ~ルーベ最終局面での落車が記憶に新しいフェムケ・マルクスは、チーム SDワークスのスプリント役を担うことになりそうだ。
レースを彩る4賞ジャージは、個人総合時間賞が「マイヨ・ロホ」(赤)、ポイント賞が「マイヨ・ヴェルデ」(緑)、山岳賞が「マイヨ・ルナーレス」(水玉)、敢闘賞が「マイヨ・ブランコ」(白)で、ヤングライダー賞の設定はされない。このほか、チーム総合時間賞、総合敢闘賞の表彰が大会最終日のポディウムで催される。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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