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【Cycle*2023 ジロ・デ・シチリア:レビュー】アレクセイ・ルツェンコが最終日の逆転で個人総合優勝! フィッシャーブラックやズーターら日替わりヒーローもレースを華やかに
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介ジロ・デ・シチリア 総合表彰台 1位アレクセイ・ルツェンコ、2位ルイス・メインチェス、3位ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ
地中海の中央に浮かぶ、イタリア・シチリア島を4日間かけてめぐったステージレース、ジロ・デ・シチリア。最高栄誉の個人総合は、3つの山岳を駆けた最終日にアレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・カザクスタン チーム)が逆転。独走でステージ優勝を飾ると同時に、リーダージャージをたぐり寄せて2023年大会のチャンピオンに輝いた。
「今大会はチームとして結果を示す機会だった。それを実現できてとても満足している。個人的にもステージと個人総合ともに優勝でき、本当にうれしい。これはチームの成功だと言える」(アレクセイ・ルツェンコ)
4日間トータルで718km・総獲得標高8800mのレースは、日替わりでヒーローが現れた。
丘陵地での上りフィニッシュだった第1ステージでは、最終局面へ向けて主導権を握ったUAEチームエミレーツが頭脳的プレーでプロトンの動きを乱した。フィン・フィッシャーブラックが先頭に出たタイミングで、ジョージ・ベネットやディエゴ・ウリッシらチームメートが意図的に減速。本来は牽引役だったフィッシャーブラックにそのまま先を行かせると、アシストを減らしていた他チームのエースクラスが牽制してしまう。ただひとり先行したフィッシャーブラックが、後続に8秒差をつけて逃げ切りに成功。21歳の有望株が、プロ初勝利を挙げるとともに、レースリーダーを務めることになった。
平坦路を進んだ第2ステージからは、UAEチームエミレーツがプロトンを統率。そこにスプリントを狙うアスタナ・カザクスタン チームやエオーロ・コメタも加わって、逃げグループとのタイム差をコントロール。残り8kmで前を走っていたライダーたちをキャッチし終えると、戦前からの予想通りスプリント勝負に。ここで強さを見せたのが、ニッコロ・ボニファツィオ(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)だった。最終局面は単騎になりながらも、ライバルチームの動きを読み切って残り200mから加速。約1年ぶりの勝利を自国で飾った。
J SPORTS サイクルロードレース【公式】
【ハイライト】ジロ・デ・シチリア 第4ステージ|Cycle*2023
第2ステージを制したのはニッコロ・ボニファツィオ
「冬場のトレーニングを今までで一番こなしてシーズンインしていた。チームのために多くのことを犠牲にしてきたが、それが報われたよ。第2ステージのコースを確認しているときに、最後の直線が“ボニファツィオ通り”という名であることに気が付いたんだ。だからいつも以上に燃えたね」(ニッコロ・ボニファツィオ)
第3ステージはジョエル・ズーター(チューダー・プロサイクリングチーム)が、139kmに及ぶ逃げを実らせて独走勝利。6人の先頭グループは、フィニッシュまで30kmを切る頃にはメイン集団の射程圏に捉えられていたが、残り16kmでズーターがアタックして飛び出すと状況が変化。キャッチするタイミングを図りつつ進んでいるかに思われた集団だったが、フィニッシュ前1.2kmからの上りでスピードを上げきれなかった。タイムトライアルのスイス王者でもあるズーターが、持ち味の独走力を生かして逃げ切ってみせた。
「かなり良いペースで走れていたし、上りでもうまくプッシュできた。最後は苦しかったけど、脚は残っていたから逃げ切ることができたよ。チームマネージャーのファビアン・カンチェラーラは僕のアイドル。彼がもたらしてくれるヒントはどれもプラスに働くんだ、今日の勝利のようにね」(ジョエル・ズーター)
そして迎えた最終・第4ステージ。初日に勝ったフィッシャーブラックがリーダージャージをキープし、キャリア初のステージレース総合優勝に向かう。ただ、カテゴリー山岳3カ所、コース半ばには名峰エトナ山の上りも控える本格山岳ステージである。そう易々と攻略できるルートではない。
7人の逃げを容認したメイン集団は、早い段階からアスタナ・カザクスタン チームがペーシングに努めた。着々と距離をこなし、エトナの上りで集団の人数を絞り込む。頂上に到達する頃には、そこに残ったのは各チームのエースクラスばかり。リーダージャージのフィッシャーブラックも踏みとどまる。
エトナの下りでメイングループから抜け出したルツェンコとダミアーノ・カルーゾ
流れが一変したのは、エトナ頂上からの約15kmある下りでのこと。精鋭ぞろいのグループが分断し、前にはルツェンコやダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)ら。一方でフィッシャーブラックはダウンヒルでの走行ラインが定まらず、後ろに取り残されてしまった。
これで攻勢に転じたルツェンコは、最後の上りに入って逃げメンバーをパスすると、カルーゾも置き去りに。フィニッシュまで25kmを残して独走に持ち込んだ。
上りだけでなく、下りも得意とするルツェンコは、頂上からのダウンヒルでさらに加速。フィッシャーブラックのジャージを守りたいUAEチームエミレーツはラファウ・マイカが懸命の牽きで逃げていた選手たちを捕まえるが、逆にルイス・メインチェス(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)のアタックを許してしまう。フィッシャーブラックにはもはや追撃する脚が残っておらず、精鋭グループにとどまるのが精いっぱいだった。
ひとり旅になっても力強く走り続けたルツェンコは、最終的に2位メインチェスに40秒、精鋭グループに対しては1分13秒の大差をつけてフィニッシュへ到達。ステージ優勝と、逆転での個人総合優勝を同時に手にした。
強く、鮮やかに勝ってみせたルツェンコ。過去2年のツール・ド・フランスでは連続トップ10入り。かつてのU23世界王者は、いまではすっかりグランツールレーサーとしての地位を固めた。このシチリアには、シーズン前半の目標に据えたアルデンヌクラシックへの最終テストとして臨んでいた。
「最後の上りでアタックしようと決めていたので、狙い通りのレースができた。現在の目標はアルデンヌクラシックで、その前にジロ・デ・シチリアに勝てたことは自信につながる。ツール・ド・フランスでステージ優勝した時と同じくらいうれしいよ」(ルツェンコ)
大会制覇のポディウムを終えると、すぐにアムステル・ゴールドレースが開催されるオランダへと飛んだルツェンコ。2年ぶりのアルデンヌクラシックフル参戦は、意外にもキャリア初となるチームリーダーの役目が与えられる。これまでは、チーム事情もあってアシストに回っていたが、今年は晴れてみずからのリザルトを狙って走ることができる。シチリアでの成功が、どう結びつくだろうか。
最終日にリーダージャージを失ったフィッシャーブラック
このほか、個人総合2位には最後に追い込んだメインチェス、同3位には毎ステージ上位入りしたヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(エオーロ・コメタ)が食い込んだ。各賞は、ポイント賞がアルバネーゼ、山岳賞はアレクシス・ゲラン(ビンゴール・パウェルスソースWB)、ヤングライダー賞にはフィッシャーブラック、チーム総合はアンテルマルシェ・サーカス・ワンティがそれぞれ受賞。
特に3日間リーダージャージを着続けたフィッシャーブラックは、最終的に個人総合4位だったものの、大会を最も盛り上げた殊勲者として申し分ないだろう。昨年、レース中のクラッシュで大腿骨を骨折し長く戦列を離れたが、これで完全復活を証明。ビッグネームぞろいのUAEチームエミレーツにあって、戦力としての計算できる選手がまたひとり増えた。
「総合表彰台に上がれれば特に良かったのだけど…。でもヤングライダー賞も喜んで良い成果だよね。自信につながったし、キャリア豊富な選手たちが僕のために走ってくれたことに心から感謝している。いまから次のレースが楽しみだよ」(フィン・フィッシャーブラック)
日本人ライダーとして唯一参戦した鳴海颯(ソフェル・サヴィーニ・デュー・オムズ)は、個人総合120位で完走。第2ステージでは集団牽引に加わる姿も見られ、トップチームにも引けを取らない走りっぷり。チームは5月のツアー・オブ・ジャパンへの出場が決まっており、鳴海のメンバー入りにも期待が膨らんできた。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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