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サイクル ロードレース コラム 2023年4月10日

【Cycle*2023 ジロ・デ・シチリア:プレビュー】島のヒーロー・カルーゾがディフェンディングチャンピオンとして参戦! 総合、スプリントともにワールドチーム中心の戦いか

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ジロ・デ・シチリア

起伏に富むシチリア島の道

寄せ集めのアッズーリ軍団が毎ステージのようにレースを席巻したのが昨年のこと。地中海の中央に浮かぶシチリア島を舞台にする4日間のステージレースは、トップライダーにとっては1カ月先に控えるジロ・デ・イタリアの脚試しとして、若手選手にとってはトップチームへのアピールの機会として、それぞれに重要な位置づけのレースになっている。

2022年総合優勝ダミアーノ・カルーゾ

2022年総合優勝ダミアーノ・カルーゾ

トップチーム関係者の目に留まるには、どれだけタフであるかを証明しなければいけない。起伏に富むシチリア島の道である。ただアップダウンをこなせるかだけでなく、その先にあるフィニッシュへ向けて勝負できるかも重要なファクターである。実際、昨年の大会でイタリアナショナルチームのメンバーとして走ったうちの5選手は、いずれも事実上の無所属状態(2022年3月まで所属していたガズプロム・ルスヴェロの解散による)から次の受け入れ先を見つけることに成功している。

前回、進路に悩んでいた若い選手たちを鼓舞し、みずからの力でもってチームに歓喜をもたらしたダミアーノ・カルーゾは、所属するバーレーン・ヴィクトリアスのエースとして大会へ戻ってくる。前回は2ステージで勝利し、最終日に個人総合で逆転。10歳近く年下である選手たちの働きに報いた。

今大会における彼の目的は、昨年とは大きく変わるようだ。今季はジロ・デ・イタリアを目標に据えており、その準備の一環として故郷のシチリア島へと帰る。後述するが、パンチ力が試される上りフィニッシュや、得意とするダウンヒルを生かせるステージが控えており、おあつらえ向きのコースがそろっている。その気になれば個人総合2連覇は可能だ。

カルーゾに限らず、個人総合争いはUCIワールドチーム勢が中心となりそうだ。アレクセイ・ルツェンコアスタナ・カザクスタン チーム)は、今大会直後のアルデンヌクラシックの最終調整としてシチリアを選択。昨年のツール・ド・フランス個人総合7位のルイス・メインチェスアンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)は、前回大会で総合表彰台に上がり、ツールでの好リザルトにつなげた。

ジロ・デ・シチリア

ジロ・デ・シチリア

UAEチームエミレーツは、普段タデイ・ポガチャルのアシストとして鳴らすジョージ・ベネットとラファウ・マイカがそろう。加えて、スピード勝負になればディエゴ・ウリッシの出番。どこからでも勝ちにいけるメンツだ。チーム ジェイコ・アルウラーはヤングライダーがメインの布陣だが、次世代のグランツールレーサーと目されるフェリックス・エンゲルハートの走りを押さえておきたい。

彼らトップチームの総合系ライダーを、ワルテル・カルツォーニ(Q36.5プロサイクリングチーム)やセバスティアン・レイシェンバック(チューダー・プロサイクリングチーム)といったUCIプロチームのエースクラスが追いかける。

総合系ライダーにとどまらず、スプリンターもなかなかの顔触れ。バリュー的には、イタリアナショナルチームのリーダーとして走るエリア・ヴィヴィアーニが一番手。昨年、アッズーリ軍団のエーススプリンターとしてステージ1勝を挙げたマッテオ・マルチェッリは、ビンゴール・パウェルスソースWBの一員として勝利を狙う。ニッコロ・ボニファツィオ(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)やブレイク・クイック、キャンベル・スチュアート(ともにチーム ジェイコ・アルウラー)もチャンスをうかがう。

そして、2021年12月の交通事故で昨シーズンを棒に振ったアルバロホセ・ホッジ(UAEチームエミレーツ)が実に2シーズンぶりのレース復帰を果たす。すでに昨年夏からトレーニングを再開しており、どこまで走りが戻ってきているか見ていきたい。

これら選手を含む、25チーム・175人のライダーが走るルートは、4日間トータルで718km、総獲得標高8800m。

第1ステージ(159km)は、最後の3.7kmで世界遺産アグリジェントへ一気に駆け上がる登坂フィニッシュ。平均勾配5.3%、最大勾配9%の上りは、フィニッシュに近づくにつれ緩やかに。人数的にどの程度の選手が前線に残れるか。

ジロ・デ・シチリア

美しい景色も必見

スプリンターの出番は第2ステージ(193km)から。残り750mで左コーナーを抜けると、フィニッシュまでの長いストレート。第3ステージ(150km)も、主催者によれば平坦にカテゴライズされるそう。とはいえ、スタートから中盤までにいくつかの上りをこなさなければならないうえ、フィニッシュ前1.2kmからは6.3%の上り。第1ステージ同様にパンチ力勝負か。

今大会のクイーンステージは最終日。216kmの第4ステージは、中盤から立て続けにカテゴリー山岳を超える獲得標高3700mの本格山岳ステージ。中間地点を過ぎると、名峰エトナ山の北側ルートを途中まで上って、約15kmのダウンヒル。さらにもうひと山上って、先と同じ下りをこなしてジャッレの街に敷かれるフィニッシュラインを目指す。このステージのスタート時点では個人総合争いがもつれていることが想定され、まさに最終ステージを勝つことが大会制覇の重要な条件となりそうだ。第5回大会の王座には、果たして誰がつくことになるだろうか。

なお、今大会にはUCIコンチネンタルチーム「ソフェル・サヴィーニ・デュー・オムズ」の一員として、鳴海颯が唯一の日本人ライダーとして参戦予定。1997年11月生まれの現在25歳。今季はすでにイタリアでUCI1クラスのレースを走り、歴戦の強者たちとも対峙している。チームは5月のツアー・オブ・ジャパン出場が決まっており、その予習としてもシチリアでの戦いぶりは見ものだ。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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