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サイクル ロードレース コラム 2023年4月8日

【Cycle*2023 パリ〜ルーベ:プレビュー】“伝説”は続くか マチュー&ワウトの2強に、ガンナらも虎視眈々と・・・北の地獄が石の王者を生み出す

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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パリ〜ルーベ

北の地獄 パリ〜ルーベ

新型コロナ禍を乗り越えて開催された2年間、2021年はマッドコンディションでの死闘、2022年は史上最速のアベレージスピード。観る者のみならず、実際に走った者さえも驚いた伝説的なパリ〜ルーベは今年も起こるだろうか。起こるとするならば何が……。

一昨年は秋開催、昨年はフランス大統領選挙の関係でアムステル・ゴールドレースと開催日を入れ替え。今年は4年ぶりとなる、4月第2日曜開催。いつものパリ〜ルーベの時期に戻る。

ただ、このレースがいつ実施されようと、“北の地獄”“クラシックの女王”の異名は変わらない。歴史と風土を表す荒れた石畳が、ライダーたちの心身に激しく打ち付ける。壮絶な257kmの道のりが、春のクラシックシーンを彩るとともに、シーズン最後の石畳戦としての大きな役割を果たす。

パリから北に位置するコンピエーニュの街を出発し、フランス北部・ルーベのヴェロドロームにフィニッシュ。スタートからおおよそ3分の1は平坦路を走り、96.3km地点から全29セクション・総距離54.5kmのパヴェ区間へと突入する。

なかでも、開催委員会によって「五つ星=最難関」と評価された3カ所が、レースにおける重要な局面となる。

1つ目が161.3km地点で突入する、セクター19(カウントダウン形式でセクション番号が振られている)のトゥルエ・ダランベール(アランベール)。この直前では、メイン集団で各チームのポジション争いが激しくなる。なぜなら、前方でこのパヴェに入らねば、あっという間に後ろへと置き去りにされてしまうから。わずかな下り基調で、入口からの猛スピードがさらに加速する。パヴェ路面のすぐ脇にフェンスが張り巡らされるため、コースサイドからポジションを上げることはほぼ不可能。ここでメカトラや落車にあおうものなら、その瞬間に戦線から姿を消すことになる。

フィニッシュまで残り49kmで迎えるセクター11、モン・アン・ペヴェルは全長3kmで、パヴェセクションの中では3番目の長さ。路面は土に覆われ、細かな高低の変化もある。そのうえ鋭角2カ所を含む大小のコーナーも待っているから、こちらもプロトン内でのポジショニングは重要だ。

パリ〜ルーベ

横風の影響で2022年は史上最速のアベレージスピード

五つ星3つ目のセクター4、カルフール・ド・ラルブルはレース後半のハイライト。240km近く走り続け、なおかつ石畳の振動に耐え続けて選手たちにとっては、全長2.1kmのこの区間こそが運命の分かれ道になるだろう。

コース全体を通してコーナーが多く、パヴェとは別にアスファルトのくぼみや荒れた舗装も選手たちを悩ませる。レースの進行とともに沿道を埋めるオーディエンスの興奮具合も高まり、五つ星パヴェを中心に大熱狂の中をライダーたちが駆け抜けていく。

■パヴェ全29セクション

29 96.3km地点(残り160.7km)トロワヴィル〜アンシー 2.2km ★★★
28 102.8km地点(154.2km)ヴィースリー〜キエヴィ 1.8km ★★★
27 105.4km地点(151.6km)キエヴィ〜サンピトン 3.7km ★★★★
26 110.1km地点(146.9km)サンピトン 1.5km ★★
25 117.2km地点(139.8km)ヴェルテン〜サン=マルタン=シュール=エカイヨン 2.3km ★★★
24 127.2km地点(129.8km)ヴェルシェン=モグレ〜ケレネン 1.6km ★★★
23 129.9km地点(127.1km)ケレネン〜マン 2.5km ★★★
22 133km地点(124km)マン〜モンショー=シュール=エカイヨン 1.6km ★★★
21 139.6km地点(117.4km)アスプル〜ティアン 1.7km ★★★
20 153.1km地点(103.9km)アブルイ〜ワレー 2.5km ★★★★

19 161.3km地点(95.7km)トゥルエ・ダランベール(アランベール) 2.3km ★★★★★
18 167.4km地点(89.6km)ワレー〜エレーム 1.6km ★★★
17 174.1km地点(82.9km)オルネン〜ヴァンディニー 3.7km ★★★★
16 181.6km地点(75.4km)ヴァルレン〜ブリヨン 2.4km ★★★
15 185.1km地点(71.9km)ティヨワ〜サール=エ=ロジエール 2.4km ★★★★
14 191.4km地点(65.6km)バーヴリー=ラ=フォレ〜オルシー 1.4km ★★★
13 196.5km地点(60.5km)オルシー 1.7km ★★★
12 202.6km地点(54.4km)オシー=レ=オルシ〜ベルシー 2.7km ★★★★
11 208km地点(49km)モン・アン・ペヴェル 3km ★★★★★
10 214km地点(43km)メルニー〜アヴラン 0.7km ★★

9 217.4km地点(39.6km)ポン・ティボー〜エンヌヴラン 1.4km ★★★
8 222.8km地点(34.2km)タンプルーヴ(レピネット) 0.2km ★
8 223.3km地点(33.7km)タンプルーヴ(ムーラン=ド・ヴェルテン) 0.5km ★★
7 229.8km地点(27.2km)シソワン〜ブルゲル 1.3km ★★★
6 232.3km地点(24.7km)ブルゲル〜ワヌアン 1.1km ★★★
5 236.7km地点(20.3km)カンファナン=ペヴェル 1.8km ★★★★
4 239.5km地点(17.5km)カルフール・ド・ラルブル 2.1km ★★★★★
3 241.8km地点(15.2km)グルソン 1.1km ★★
2 248.4km地点(8.6km)ヴィレム〜エム 1.4km ★★
1 255.2km地点(1.8km)ルーベ 0.3km ★

パリ〜ルーベ

2022年勝者のファンバーレはユンボ・ヴィスマの一員として出場する

このレースも、ここまでの石畳系レースと同様にマチュー・ファンデルプールアルペシン・ドゥクーニンク)とワウト・ファンアールトユンボ・ヴィスマ)の“2強”が中心になりそうだ。

マチューは今季の北のクラシックでは未勝利。4月2日のロンド・ファン・フラーンデレンでは見せ場を作りながら、タデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ、今大会は欠場)の独走に屈した。それでも、同5日にはシュヘルデプライスを調整レースに充て、ヤスペル・フィリプセンの優勝をアシスト。レース後には好調宣言までしてみせた。

一方ワウトは、フランドルで表彰台を逃した。その一因となったレース中のクラッシュは、いまなお膝と肋骨にダメージとして残っているという。「バイク上でのフィーリングは良くない」と語り、不安材料であることを認める。ただ、前回イネオス・グレナディアーズのメンバーとして優勝をしたディラン・ファンバーレがチームに加わり、クリストフ・ラポルトも石畳巧者として鳴らす。ユンボ・ヴィスマのイエロージャージがレース後半まで複数残っているようだと、一気に優勢となる。

ちなみに、マチューもワウトもルーベのタイトルとは縁遠い。意外や意外! 果たして今年は大願成就なるか。

もちろん、他の有力どころも黙ってはいない。フィリッポ・ガンナはイネオス・グレナディアーズの新エースとして乗り込み、前回3位のシュテファン・キュンググルパマ・エフデジ)もタフな展開に自信を見せる。何より両者はタイムトライアルスペシャリスト。つまりは独走に持ち込めば、そのままフィニッシュまで突っ切っていける脚をもつというわけ。

マテイ・モホリッチ擁するバーレーン・ヴィクトリアスも戦力充実。モホリッチはフランドルでのクラッシュが尾を引いている印象だが、代わってフレッド・ライトが計算できるようになった。ダブルリーダー体制でいえば、トレック・セガフレードマッズ・ピーダスンヤスペル・ストゥイヴェンのコンビも強力。

パリ〜ルーベ

石畳区間は総距離54.5kmにもおよぶ

“お家芸”の石畳で今季大苦戦のスーダル・クイックステップは、カスパー・アスグリーンイヴ・ランパールトが意地を見せないといけない。

2年前に2位に入ってトップライダーの仲間入りをしたフロリアン・フェルミールスはロット・デスティニーの、前回4位と大健闘したトム・デヴリンツはQ36.5プロサイクリングチームで、それぞれリーダーを務める。ポガチャルが外れるUAEチームエミレーツは、マッテオ・トレンティンやミッケル・ビョーグが頼りになる。

2018年にこの大会を制したペーター・サガン(トタルエネルジー)は、これが最後のパリ〜ルーベ。今季限りでロードに別れを告げ、マウンテンバイクシーンに戻ることを発表している。

今大会に向けては、パヴェセクションの整備にヤギとヒツジが一役買ったそう。アランベールの雑草除去を“担当”し、環境にも配慮。また、ハンドルに装着されたボタンひとつでタイヤへのエア出し入れを可能にする「タイヤ空気圧管理システム」をチームDSMとユンボ・ヴィスマの一部選手が導入予定。新たなテクノロジーにも注目が集まる機会になる。

最後に、開催日4月9日のルーベの天候を。晴れで最高気温17度、南東からの風との予報。北に針路をとるプロトンの背中から吹く風ということは……前回大会と同様にハイペースでレースが進むことも想定しておく必要がありそうだ!

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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