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【Cycle*2023 パリ〜ルーベ ファム:プレビュー】最強コペッキーvs.ルーベ連覇中のトレック・セガフレード 真の“クラシック女王”はパヴェで決まる
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介パリ〜ルーベ ファム
ウィメンズライダーたちが望んで夢の舞台を切り拓いたのが2021年のこと。“北の地獄”として名高いパリ〜ルーベだが、ウィメンズバージョンは開催2回とまだまだ歴史は浅い。
それでも、その2回ではプロロードレースシーンに長く語り継がれるような伝説的な走りが見られた。初開催の2年前は、リジー・デイニャン(トレック・セガフレード、まもなく育児休暇から復帰予定)が81kmを独走して逃げ切り。昨年はエリーザ・ロンゴボルギーニ(トレック・セガフレード)が、こちらも33kmを独走してルーベのヴェロドームに到達。コースの多くを石畳(パヴェ)の路面が占めるレースだが、それをものともしない勝者の驚異的な走りが際立った。
そして今年。選手・関係者の声を重視する主催者は、一層のアップグレードを図って第3回大会の準備を進める。レース距離は145.5kmと、昨年より20km以上延伸。このうちパヴェ区間は17セクション・総距離29.2kmを占める。
詳しく見ていこう。フランス北部の街・ドゥナンを出発し、レース前半は南北に延びる周回路を走行。ドゥナンへ一度戻って、いよいよルーベに向けて本格的に北進を始める。63km地点で最初のパヴェへ。セクター17(カウントダウン形式でセクション番号が振られている)のオルネン〜ヴァンディニー(距離3.7km、星4つ)から、最後となるセクター1のルーベ(0.3km、星1つ)まで、断続的にパヴェ区間がやってくる。
とりわけ、フィニッシュまで48.6kmを残したところで迎えるセクター11のモン・アン・ペヴェルは全長3kmと、前述のオルネン〜ヴァンディニーに次ぐ長さ。路面は土に覆われ、わずかながら高低の変化もある。そのうえ鋭角2カ所を含む大小のコーナーも待ち受けているので、プロトン内でのポジショニングは重要になってくる。
これと並んで、セクター4のカルフール・ド・ラルブルもレース展開を大きく揺るがすポイントだ。全長2.1kmのパヴェは、それまでに128kmを走ってきたライダーたちがいくらタフとはいっても、苦しむことなくクリアすることは不可能。5段階によるパヴェ格付けでは、この2カ所が最高の5つ星に充てられている。
昨年の勝者はエリーザ・ロンゴボルギーニ(トレック・セガフレード)
カルフール・ド・ラルブルを終えると、フィニッシュまではおおよそ15km。この間に3カ所のパヴェセクションがあるが、それまでにレースの形勢が見えているものと思われる。何度も書くように、過去2回は衝撃的な独走劇だったが、開催3回目とあれば、各チーム・選手たちは何らかの対策を練って走ることだろう。数人のパックで最終盤に突入することも想定の1つになる。
ちなみに、今行程の最後85kmは男子レースと同じルートが採用される。また、男子レースではハイライトの1つになるセクション、トゥルエ・ダランベールはスタート地ドゥナンから近く、「大人数のプロトンで突入することは危険をともなう」(主催者A.S.O.・フランク・ペルク氏)ことを理由に、パリ〜ルーベ ファムではコースに含まれない(将来的にコースに含む検討は続けていくとのこと)。
■パヴェ全17セクション
17 63km地点(82.5km)オルネン〜ヴァンディニー 3.7km ★★★★
16 70.4km地点(75.1km)ヴァルレン〜ブリヨン 2.4km ★★★
15 73.9km地点(71.6km)ティヨワ〜サール=エ=ロジエール 2.4km ★★★★
14 80.3km地点(65.2km)バーヴリー=ラ=フォレ〜オルシー 1.4km ★★★
13 85.3km地点(60.2km)オルシー 1.7km ★★★
12 91.4km地点(54.1km)オシー=レ=オルシ〜ベルシー 2.7km ★★★★
11 96.6km地点(48.9km)モン=アン=ペヴェル 3km ★★★★★
10 102.9km地点(42.9km)メルニー〜アヴラン 0.7km ★★
9 106.3km地点(39.2km)ポン・ティボー〜エンヌヴラン 1.4km ★★★
8 111.7km地点(33.8km)タンプルーヴ(レピネット) 0.2km ★
8 112.2km地点(33.3km)タンプルーヴ(ムーラン=ド・ヴェルテン) 0.5km ★★
7 118.6km地点(26.9km)シソワン〜ブルゲル 1.3km ★★★
6 121.1km地点(24.4km)ブルゲル〜ワヌアン 1.1km ★★★
5 125.6km地点(19.9km)カンファナン=ペヴェル 1.8km ★★★★
4 128.3km地点(17.2km)カルフール・ド・ラルブル 2.1km ★★★★★
3 130.6km地点(14.9km)グルソン 1.1km ★★
2 137.3km地点(8.2km)ヴィレム〜エム 1.4km ★★
1 144.1km地点(1.4km)ルーベ 0.3km ★
前・世界女王のエリーザ・バルサモ(トレック・セガフレード)
出場するのは23チームで、各チーム6人編成での出走となる。
最大の焦点は、大会創設から2回勝ち続けてきたトレック・セガフレードの“女王”の座防衛なるか。前回覇者のロンゴボルギーニを筆頭に、同じく3位に入ったルシンダ・ブラント、さらには前・世界女王のエリーザ・バルサモも控え、必勝態勢で臨む。ロンゴボルギーニは新型コロナウイルス感染でバイクから離れた時期がありながらも、4月2日のロンド・ファン・フラーンデレンで3位入賞。調子が戻ってきた。石畳系レースを通じて調整を進めてきたブラント、スプリントになれば絶対的な強さを持つバルサモと、レース運びのバリエーションはいくつも有する。
そこに立ちはだかるのは、現在のプロトンでは最も強いと言われるロッタ・コペッキー(チーム SDワークス)だ。今季ワンデーレース3勝で、そのうちの1つがロンド・ファン・フラーンデレン。ライバルに大差をつけて完勝したところをみると、パヴェ適性や独走力はこのレースでも武器になるはず。そこに、直前のレースであったシュヘルデプライスを勝ったロレーナ・ウィーベスらが加わり、チーム力でも充実する。
「女王の中の女王」マリアンヌ・フォス(ユンボ・ヴィスマ)も3度目の正直に燃える。2年前はデイニャンの逃げを許し2位、昨年は新型コロナ陽性で当日朝に撤退と、悔しさを味わった。ロードだけでなく、トラックやシクロクロスでも強さを発揮してきた彼女なら、ルーベの悪路も攻略できるフィジカルとテクニックを持つことは確か。
今年1月のツアー・ダウンアンダーを制したグレース・ブラウン(FDJ・スエズ・フチュロスコープ)も、ここへきて好調が伝えられる1人。前回4位のエリーズ・シャベイ(キャニオン・スラム レーシング)、同じく6位のフロールチェ・マッカイ(モビスター チーム)も悪路を得意とする。
そしてもう1人、注目したいのが18歳のゾーイ・バックステッド(EFエデュケーション・TIBCO-SVB)。ジュニア時代にロード、トラック、シクロクロスと世界タイトルを総なめし、今季満を持してプロシーンへと飛び込んできた。父は“あの”マグヌス氏。2004年のパリ〜ルーベを制した彼の血を引く、次世代の女王候補が父の愛したルーベのパヴェに初挑戦する。ちなみにマグヌス氏はキャニオン・スラム レーシングのスポーツディレクター(監督)として大会に参加予定。父娘対決の構図にも。
開催日4月8日のルーベの天気は、晴れで最高気温14度、北からの微風との予報。前日までは雨が降り続くとみられ、それによって部分的なパヴェのぬかるみはあるかもしれない。これらがレース展開にどう影響するだろうか。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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