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【Cycle*2023 ミラノ〜トリノ:レビュー】カンチェラーラが創設したプロチーム、チューダーのアーヴィッド・デクラインが初優勝、チームも今季初勝利
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸優勝のデクライン、左が2位ガビリア、右が3位ファンウーデン
世界最古のロードレース、ミラノ〜トリノが3月15日にイタリア北部に位置するミラノ郊外のローからトリノ郊外のオルバッサーノまでの距離192kmで行われ、チューダー・プロサイクリングチーム(スイス)のアーヴィッド・デクライン(オランダ)が初優勝した。
タイムは3時間59分02秒で、平均時速48.194km/hは大会史上最速。最後はゴールスプリント勝負となり、2位はモビスター チームのフェルナンド・ガビリア(コロンビア)、3位はチームDSMのカスペル・ファンウーデン(オランダ)。
オランダ選手としてミラノ〜トリノを初制覇したデクラインは28歳。そのスプリント力は「ゴリラ」というニックネームで呼ばれたアンドレ・グライペル並みのパワーがあり、プロレース界では「リトルゴリラ」というニックネームで呼ばれつつある。Arvid de KleijnのKleijnはオランダ語で「小さい」という意味だ。
「チューダー・プロサイクリングチームの一員になれて本当にうれしい。私がスプリンターとして成長するのをチームは全面的にサポートしてくれた」というデクライン。
北イタリアの主要都市、ミラノからトリノを目指す伝統レース
同チームはスイスの伝説的自転車選手、ファビアン・カンチェラーラが創設したプロチーム。メインスポンサーのチューダーは、スイスの時計メーカーだ。1930年代にロレックスの創始者ハンス・ウィルスドルフが立ち上げたディフュージョンブランド(廉価ブランド)。80年以上にわたるチューダーの技術と哲学が込められているダイバーズウォッチなどが人気。
このチューダーブランドがジロ・デ・イタリアをはじめとして、このミラノ〜トリノなどRCSスポルトが運営する全レースのオフィシャルタイマーとなったことで、チームはメジャーレースへの主催者推薦が得られやすくなった。もちろん次のステップはUCIワールドチーム昇格だ。これだけにこの日の勝利は意味がある。もちろんチームとしての今季初勝利だ。
J SPORTS サイクルロードレース【公式】|YouTube
【ハイライト】ミラノ〜トリノ|Cycle*2023
レース前半からUCIプロツアーチームの選手らが積極的に走る
2023年大会は距離192kmでスプリンター向きの平坦コースとなった。前年の覇者マーク・カヴェンディッシュ(英国)はアスタナ・カザクスタン チームに移籍しての出場。チーム アルケア・サムシックはナセル・ブアニ(フランス)、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティはビニヤム・ギルマイ(エリトリア)を起用した。
レースはビンゴール・パウェルスソースWBのヨハン・ミーンス(ベルギー)、EFエデュケーション・イージーポストのステファン・デボッド(南アフリカ)、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSFファイザネのアレッシオ・ニエーリ(イタリア)、チームコラテックのアレッサンドロ・イアッキ(イタリア)とヴェリコ・ストイニッチ(セルビア)の5選手が抜け出した。
雪に覆われたアルプス山脈を見ながらゴールを目指す
しかしゴールスプリントに持ち込みたいチームDSMやモビスターチームがメイン集団のペースを絶妙にコントロール。5選手は残り46kmで1分差を稼ぎ出すのが精一杯だった。
さらに残り40kmでストイニッチが脱落して4人に。後続のメイン集団が残り距離をにらみながら、じわじわと接近してきて、残り12.4km地点で逃げた選手らを吸収。178kmの逃げはここで終了した。
ゴール前はチューダーの牽引役がペースアップ。デクラインがスパートし、ガビリアが追い越そうとするラインをうまく抑え込んで初優勝を果たした。
デクラインはヒューマンパワードヘルスに所属していた2022年、「ダンケルクの4日間レース」において初日のステージレースをゴールスプリントで優勝。個人総合、ポイント賞のリーダージャージを総合獲得した。第2ステージで首位陥落するが、フィリップ・ジルベールが優勝した第3ステージで首位奪還。最終的にはジルベールが総合優勝するが、この活躍が評価されて、翌年にはチューダーに引き抜かれていた。
「気分がいい。チームは私のために素晴らしい仕事をしてくれた」とデクラインが優勝インタビューでコメントした。
水曜日の開催ながら大観衆の中でゴール勝負が演じられた
「今朝は今の環境のおかげで自信があった。いいポジションにつけられたら、勝つことが分かっていた。リードアウトを利用して、私は何人かのトップスプリンターを打ち負かすことができた。素晴らしいことだ」
「チームは今日、私を全力でサポートしてくれた。ファビアン・カンチェラーラがそばにいてくれるのがありがたい。彼は史上最高のライダーの一人だった。彼は私にインスピレーションを与えてくれた。
とにかく私は16歳というちょっと遅めの年齢でロードレースを始めた。最初はヒルクライマータイプだった。U23時代にスプリンターになったが、スプリンターとしてのレース方法を理解するのに時間がかかった。そんな遅咲きだけど、私の最高のシーズンはこれから到来すると思っている」
デクラインがガビリア(左)を制して優勝
3日後に開催されるUCIワールドツアーレース、ミラノ〜サンレモにも、チューダーはワイルドカードで出場権を獲得している。ミラノ〜トリノよりも強豪選手が集結するが、新進気鋭のスイスチームが格上相手にどんな走りを見せてくれるかに期待したい。
文:山口和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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