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【Cycle*2023 ミラノ〜トリノ:プレビュー】世界最古のロードレース、今年はスプリンター向きの平坦コースでフルーネウェーヘン、ブアニ、ギルマイ、ガビリアらが出場予定
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸ミラノ〜トリノ
世界最古のロードレース、ミラノ〜トリノが3月15日にイタリア北部で開催される。水曜日という平日開催で、わずか3日後に開催されるUCIワールドツアーレース、ミラノ〜サンレモの「前菜」となる。
UCIプロシリーズなのでUCIワールドツアーチームの出場義務はない。2023年大会は17チームが参加する。UCIワールドツアーチームは10。AG2Rシトロエン(フランス)、アスタナ・カザクスタン チーム(カザフスタン)、ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)、EFエデュケーション・イージーポスト(米国)、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ(ベルギー)、モビスター チーム(スペイン)、チーム アルケア・サムシック(フランス)、チームDSM(オランダ)、チーム ジェイコ・アルウラー(オーストラリア)、トレック・セガフレード(米国)だ。
そしてUCIプロチームは7。ビンゴール・パウェルスソースWB(ベルギー)、エオーロ・コメタ(イタリア)、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSFファイザネ(イタリア)、イスラエル・プレミアテック(イスラエル)、Q36.5プロサイクリングチーム(スイス)、チーム コラテック(イタリア)、チューダー・プロサイクリングチーム(スイス)。
さて、このミラノ〜トリノがどんな大会であるかを調べると、なかなかつかみどころがないというのが正直なところだ。明確に言えるのは「世界最古のロードレース」であるということ。1876年に8選手が参加して、イタリアのミラノからトリノまでを走ったようだ。第2回大会は1894年で、その後も数年間開催されなかったり、不定期さに加えて、1シーズンにおける開催時期がままならなかったりという不安定なレースだった。
最古のレースとして有名なのはベルギーのリエージュ〜バストーニュ〜リエージュだ。第1回大会は1892年なので、ミラノ〜トリノよりも創設は遅いが、大戦などによる中止を除いて現在までほぼ定期的に開催されているレースとしては最古であると定義づけられている。
ミラノ〜トリノ
ミラノ〜トリノは1876年にヴェローチェクラブ・ミラノによって創設されたという。シマノの自転車博物館にあるような巨大な前輪を持つ歴史的な自転車を使ってレースを行ったようで、第1回の完走者は4人だったという。
第一次世界大戦後は主催組織の混乱があって、有名選手は出場せず。第二次世界大戦後にようやくジャンニ・モッタやフランチェスコ・モゼールらイタリアのスター選手が参戦するようになり、イタリアの中では重要な大会として認知されてきた。
さらにジロ・デ・イタリアを国際大会に仕立て上げた統括ディレクター、ヴィンチェンツォ・トリアーニが最高権威に就任して大会にテコ入れ。1965年からはジロ・デ・イタリアと同じラ・ガゼッタデッロスポルトが主催紙になった。
現在のように3月に行われることもあったが、世界選手権が終了して数日後の秋に開催されることもあって、ジャンニ・ブーニョとローラン・ジャラベールが世界チャンピオンの称号であるアルカンシエルをお披露目した。こういった話題喚起策も戦略だった。
2000年はレースコースとなるピエモンテ州を襲った洪水によって開催できなかった。さらに2008年から4年間も開催されず、ようやく軌道に乗ったのは2012年。2015年から現在のRCSスポルトが運営に参画し、直前のティレーノ〜アドリアティコ、そして直後のミラノ〜サンレモをつなぐ男子プロレースとして定着した。
なかなかつかみどころがないという点はもうひとつ、歴代優勝者の顔ぶれだ。2020年はアルノー・デマール(フランス)が優勝。2022年はマーク・カヴェンディッシュ(英国)がナセル・ブアニ(フランス)アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)を制して優勝した。
ところが2021年はプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)が勝っているし、近年ではアルベルト・コンタドール(スペイン)、リゴベルト・ウラン(コロンビア)、ティボー・ピノ(フランス)などの山岳派やパンチャーが優勝者リストに並ぶ。
ミラノ〜トリノ
つまりその理由は、ミラノ〜トリノはその年によってコースが大きく変わるレースなのである。そういった意味ではほぼ同じコースを走るミラノ〜サンレモとはまた違った見方で楽しむことができる。
2023年大会は距離192kmでスプリンター向きの平坦コースとなった。ミラノの中心部から北西に10kmほど行ったところにあるローがスタート地。ゴールはトリノの南西に位置するオルバッサーノだ。どちらもミラノ市あるいはトリノ市ではないが、いわゆる両市の通勤圏。コースに丘陵地はなく全くの平坦路。アスタナ・カザクスタンに移籍したカヴェンディッシュらスプリンターが得意とするところだ。
アルケア・サムシックはブアニ、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティはビニヤム・ギルマイ、モビスター チームはフェルナンド・ガビリア、チーム ジェイコ・アルウラーはディラン・フルーネウェーヘンを起用した。
ところで、イタリアにはミラノ・トリノという食前酒もあるようだ。いわゆるカクテルで、同等に混ぜ合わせられる2つの成分の生産地がミラノとトリノだからというのがその由来。ミラノ・トリノをアペリティフにして、のんびりと国際中継を楽しむなんておしゃれだと思う。
高低差図
ミラノ〜トリノのトロフィーは両市の象徴・家紋としてミラノのヘビ、トリノの牛が躍る
文:山口和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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