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【Cycle*2023 ストラーデ・ビアンケ ドンネ:プレビュー】トップライダーたちの現在地を直接見ることのできる絶好のレース! 絶好調コペツキーの2連覇か、女王ファンフルーテンが出遅れを取り戻すか!?
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介ストラーデ・ビアンケ ドンネ
2015年に初開催。数年早く開催されていた男子レースと同様に、大会名にもなっている“ストラーデ・ビアンケ(白い道)”を駆けるイタリア・トスカーナ開催の名物イベントである。
過去8度の開催において、共通項が存在する。それは、その時点での女子プロトンのトップを走る選手がきっちりと優勝を飾っていること。「ジャイアントキリング」「●●の奇跡」といったフレーズで表現されるような番狂わせは、これまで一度たりとも起きていない。リジー・ダイグナン、エリーザ・ロンゴボルギーニ、アンナ・ファンデルブレッヘン、アネミエク・ファンフルーテン、ロッタ・コペッキー…。過去の優勝者の名を挙げれば、より説得力が増すことだろう。
今回はレース距離136km。“白い道”いわゆるグラベルセクションは8つで、総距離は31.4km。全行程のおおよそ4分の1が未舗装区間にあたる。
とにかく慌ただしい。山岳に匹敵するような長い上り坂こそないものの、常にうねりのあるレイアウトが選手たちのフィジカルとメンタルを試す。メディチ要塞の前をスタートすると、18km地点で早くも1つ目のグラベルセクションへ。それからは断続的に舗装と未舗装が繰り返される。
中間地点で重要局面も待ち構える。セクション5のサン・マルティーノは9.5kmに及ぶグラベルで、先へ進むにつれて上り勾配もきつくなってくる。終盤に差し掛かろうかというタイミングでやってくるセクション6・7・8は、いずれも勾配が15%前後。とりわけ、最終のセクション8は高速ダウンヒルからの上り勾配18%とあり、バランス感覚と走行リズムも必要とされる。もちろん、仕掛けどころとしても有効だ。
最終セクションから、シエナの名所・カンポ広場に設けられるフィニッシュ地点までは、約12km。カンポ広場へ行くにも、500mで平均勾配12.4%・最大勾配16%の急坂が控えており、例年この区間で勝負の行方が決まったり、順位が入れ替わったりと、最後の最後まで気を抜くことは許されないポイントといえる。
コペッキーと喜びを分かち合うチームメート
プロトンの現状、そしてトップライダーたちの現在地を測る絶好のこの機会。今年もスタートリストに記された名前は充実のひと言。
まず、コペッキーが連覇をかけて戻ってくる。何より、今回の出場選手で最も好調なことは間違いない。2月にトラック競技のヨーロッパ選手権で2つのメダルを獲得。そして、今季ロード初戦だった2月25日のオムロープ・ヘットニュースブラットで圧倒的強さの独走勝利。彼女が所属するチーム SDワークス自体がすでに今年に入って3勝しており、チーム力の高さは“白い道”でも発揮されることだろう。
前回、コペッキーと接戦の末に2位だったファンフルーテンが対抗馬一番手。今季限りでの引退を表明している現役のロード世界女王は、2019年・2020年と連覇を経験している。このレースを熟知しており、どこでどう仕掛ければ勝てるかの判断は誰よりも冴えている。心配な点とすれば、シーズン序盤でまだギアがまだまだ入り切っていないこと。オムロープ・ヘットニュースブラットではバイクトラブルに見舞われており、「全体的な精度を上げていかないといけない」と気を引き締め直している。
トレック・セガフレードの戦力もかなり高い。2017年の勝っているエリーザ・ロンゴボルギーニは、2月にUAEツアー・ウィメンで個人総合優勝。山岳で力を見せつけており、今大会のような過酷な条件ではより持ち味を発揮するに違いない。2021年の世界女王エリーザ・バルサモも、コペッキー同様にロード・トラックともに好調。脚質的にはスプリンター寄りだが、“白い道”にも適応するようだと先に控える北のクラシックでは一躍主役候補に名が挙がってくる。
前回3位のアシュリー・モールマンはAGアンシュランス・スーダル・クイックステップで、過去4度表彰台に上がっているカタジナ・ニエウィアドマはキャニオン・スラム レーシングで、それぞれリーダーを務める。展開に恵まれれば初優勝の可能性も十分だ。
今大会には、UCIウィメンズワールドチームを中心に24チームが出場。男子よりひと足先に、勝者が決定する。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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