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【ツール・ド・フランス2023 ルートプレゼンテーション】スペインのバスク地方で開幕!タデイ・ポガチャル「このコースはとても楽しく感じられるもので、ボクは好きだな」
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸王座奪還を狙うタデイ・ポガチャル
2023年7月に開催される第110回ツール・ド・フランスのコースが10月27日、フランスのパリで発表された。パリ国際会議場に男女の有力選手が集結し、午前11時30分(日本時間同日午後6時30分)からステージが徐々に明らかになっていった。その模様は公式サイトやSNSなどが駆使されて世界中に同時配信された。
デンマークで開幕した2022年大会は、大会4日目にフランスへの移動日が設定されたことにより、例年よりも1日増の全24日間となったが、2023年はこれまでどおり、7月の第1土曜日に開幕し、3週間と2日の全23日。いわゆるグランツールの標準日程に戻ったわけだ。
まずは110回大会の特徴をみてみよう。
J SPORTS オンデマンド番組情報
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【先行】Cycle* J:COM presents 2022 ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム 前夜祭スペシャル
配信期間 : 2022年11月5日午後5:00 ~ 2022年11月5日午後7:00
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Cycle* J:COM presents 2022 ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム
配信期間 : 2022年11月6日午後2:30 ~ 2022年11月6日午後6:30
●スペイン・バスク地方で開幕
●右回りでも左回りでもなく、西から東へ
●スプリンター向きの平たんは8区間
●山岳ステージは8区間
●そのうち頂上ゴールは4つ
●ピュイ・ド・ドームを35年ぶりに訪問
●個人タイムトライアルはわずか22km
●最終決戦はヴォージュ山系
開幕地と最初の3日間はすでに発表されているとおり、スペインの最もフランス寄り、バスク地方が舞台となる。バスク地方はバスク民族が居住する一帯で、国境を超えてフランスの一部もバスク地方とされている。バスク語はとても難解で、バスク語で「バスク地方」は「エウスカディ」という。町の名前もサンセバスティアンは「ドノスティア」、ビトリアは「ガスティス」と変わる。ツール・ド・フランスゆかりのバスク地方出身選手といえば、大会5連覇のミゲール・インデュラインだ。
開幕地がバスク地方だけに、ピレネー山脈での山岳ステージは5日目に始まる。伝統的なツール・ド・フランスでは序盤の7日間はスプリンターが活躍する平たんステージが設定されていたが、2023年はこのあたりに変化が見られた。ただしスプリント勝負になりそうなステージは日程全体に点在していて、あわせて8区間。往年のマリオ・チポッリーニのように前半で勝利を量産して、山岳ステージ初日のスタート地点に私服で登場してツール・ド・フランスを見送るといったシーンはなくなりそうだ。
ルートマップ
2022年の総合優勝者ヨナス・ヴィンゲゴーは今回のコースプレゼンテーションに参加しなかったが、ユンボ・ヴィスマチームのメリジン・ゼーマン監督は「2023年のピレネー山脈のステージは、これまでよりも難易度が比較的低くなっている」と分析。「それでも、バスク地方でのスタートということもあり、最初の週からかなり難しい。誰が優勝候補かはすぐに明らかになる」と語った。
1992年にバスク地方のサンセバスティアンで開幕したとき、ピレネー山脈は第2ステージのサンセバスティアン〜ポー間のマリーブランク峠しかなかった。そのコースプレゼンテーションが行われた前年のパリ国際会議場にボクも出席していたのだが、「ピレネーなきツール・ド・フランス」と各社が愚痴を口にしたことに対して、当時の最高権威ジャンマリー・ルブランは、「君たちはマリーブランクを上ったことがあるのか!」と気を吐いていたのが印象的だった。実際のレースではこの峠で新鋭リシャール・ヴィランクが大逃げしてマイヨジョーヌを獲得。レースががぜん面白くなったのは事実だ。
第6ステージが本格的なピレネー山脈となり、ツール・ド・フランスファム・アベックZwiftでの天王山ともなっているツールマレー峠を通過する。さらにスキーリゾートのコトレ・カンバスクにゴールするという超難関コースが設定された。
そして休息日前日、第2週の日曜日に行われる第9ステージは中央山塊にあるピュイ・ド・ドームがゴールとなる。1964年、ジャック・アンクティルとレイモン・プリドールというフランスの両横綱が激闘を繰り広げた山岳だ。そのとき撮影されたのが両者のヒジが接触しているのをとらえたシーンで、その写真はいまでも公式記録などで見かける伝説の象徴となっている。
アンクティルはツール・ド・フランス最多5回の総合優勝を誇る名選手。一方、プリドールは「万年2位」と言われながらも絶大な人気を誇った選手。マチュー・ファンデルプールの祖父だ。
そして2023年ツール・ド・フランスは、このピュイ・ド・ドームを含めてオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏での戦いが繰り広げられる。大会後半の山岳ステージとして、アルプスのサヴォワ県とオートサヴォワ県の峠が登場。いわゆるスイス国境に近いアルプス山脈だ。ピレネーでの戦いが薄かったぶん、このアルプスでの攻防は見ごたえがあるものになるはずだ。
アルプスの第17ステージでは標高2304mのラロズ峠が2020年以来の再訪となり、最高地点となる。大会創始者のアンリ・デグランジュの名前を冠した特別賞が設定され、トップ通過者に授与される。この峠の最大勾配値は24%、さらにゴールのクーシュベルも18%。2023年最難関のクインステージと言ってもいい。
最終日前日はアルザス地方での最後の決戦ステージ。ヴォージュ山系にあるバロンダルザス、プチバロンなど、標高は1100mほどだが険しい山岳ポイントが波状的に連なり、マイヨジョーヌ争いを最終決着させる。最後の2つの峠は短いが急しゅんだ。つまり第20ステージのゴールまでマイヨジョーヌをめぐる戦いがもつれ込む可能性がある。
「ツール・ド・フランスは特定のタイプの選手に有利となるような設定はしない」と総合ディレクターのクリスティアン・プリュドム。「それでも今の時代に非常に優秀な走力を見せる選手が多いパンチャーがマイヨジョーヌを争うことになるのでは」と想定する。
「このコースはとても楽しく感じられるもので、ボクは好きだな」と2年ぶり3度目の総合優勝を目指すタデイ・ポガチャル。「ツール・ド・フランス序盤からハードなステージが設定されたのがいい」
最終日はパリ郊外のサンカンタン・アン・イブリーヌがスタート。10月に開催されたトラック世界選手権の室内自転車競技場があり、2024パリ五輪自転車トラック競技の会場ともなっている。
ツール・ド・フランスファム・アベックZwiftは男子のツール・ド・フランスがパリにゴールする7月23日に、フランス中部の大都市クレルモンフェランで開幕。全8ステージで、猛暑のフランス中南部を走り、最終日前日にピレネーのツールマレー峠で大決戦。そして最終日はツール・ド・フランスがパリの次に訪問する機会が多いポーで22km個人タイムトライアルを行ってフィナーレとなる。総距離は956kmだ。
●2023ツール・ド・フランスのコース
7月1日(土) 第1ステージ ビルバオ〜ビルバオ(スペイン) 182km
7月2日(日) 第2ステージ ビトリア・ガスティス〜サンセバスティアン(スペイン) 209km
7月3日(月) 第3ステージ アモレビエタ・エチャノ(スペイン)〜バイヨンヌ 185km
7月4日(火) 第4ステージ ダクス〜ノガロ 182km
7月5日(水) 第5ステージ ポー〜ラランス 165km★★
7月6日(木) 第6ステージ タルブ〜コトレ・カンバスク 145km★★★
7月7日(金) 第7ステージ モン・ド・マルサン〜ボルドー 170km
7月8日(土) 第8ステージ リブルヌ〜リモージュ 201km
7月9日(日) 第9ステージ サンレオナール・ド・ノブラ〜ピュイ・ド・ドーム 184km★★★
7月10日(月) 休日
7月11日(火) 第10ステージ ブルカニア〜イソワール 167km★★
7月12日(水) 第11ステージ クレルモンフェラン〜ムラン 180km★
7月13日(木) 第12ステージ ロアンヌ〜ベルヴィル・アン・ボジョレー 169km
7月14日(金) 第13ステージ シャティヨン・シュル・シャラロンヌ〜グランコロンビエール 138km★★
7月15日(土) 第14ステージ アンヌマス〜モルジンヌ・レ・ポルトデュソレイユ 152km★★★
7月16日(日) 第15ステージ レジェ・レ・ポルトデュソレイユ〜サンジェルベ・モンブラン 180km★★★
7月17日(月) 休日
7月18日(火) 第16ステージ パシ〜コンブルー 22km★(個人タイムトライアル)
7月19日(水) 第17ステージ サンジェルベ・モンブラン〜クーシュベル 166km★★★
7月20日(木) 第18ステージ ムーティエ〜ブールカンブレス 186km★
7月21日(金) 第19ステージ モワラン・アンモンターニュ〜ポリニー 173km★
7月22日(土) 第20ステージ ベルフォール〜ル・マクルスタイン・フェレルリン 133km★★
7月23日(日) 第21ステージ サンカンタン・アン・イブリーヌ〜パリ・シャンゼリゼ 115km
★は難易度
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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