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サイクル ロードレース コラム 2022年10月17日

【Cycle*2022 ジャパンカップ サイクルロードレース:レビュー】パウレスとピッコロのEFエデュケーション・イージーポスト勢がワン・ツー あの熱気こそ世界へ誇るジャパンカップ!

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ジャパンカップサイクルロードレース

ジャパンカップサイクルロードレース

2年のブランクへの不安など、杞憂でしかなかった。あの熱気と盛り上がりこそ、宇都宮が、日本が、アジアが、世界へ誇示する「ジャパンカップ サイクルロードレース」の姿だ。

サイクルロードレース界全体に広がるアフターコロナの機運の高まりに乗って、ジャパンカップは復興を遂げた。3年ぶりの開催であることを感じさせない…むしろ、世界的評価の高いイベントをこれからも続けていこうという選手、チーム、主催者、そしてファンの強い意志こそが、歓喜と感動に満ち溢れた2日間をつくりあげたと言っても決してオーバーな表現ではないだろう。

今大会の合言葉だった“Japan Cup is Back!”。本当に還ってきた。そしてわれわれは、歴史が再び動き出した瞬間の目撃者となった。

出場選手・チームが参加してのジャパンカップ関連イベントは10月14日からスタート。宇都宮市中心部に位置するオリオンスクエアでのチームプレゼンテーションに始まり、続く15日には「ジャパンカップクリテリウム」、そして16日は大会のメインイベントであるロードレースが実施された。

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5チームが来日したUCIワールドチーム勢の本気度は、クリテリウムから垣間見ることとなる。ただの顔見せでは終わらせない。ロードレースで何が起きるかを予感させる、ドラマのプロローグになった。

別府史之さんの引退セレモニーでエモーショナルな空間となった、宇都宮市中心部のクリテリウムコース。すっかり温まったわれわれの心は、あっという間にヒートした。スタートの号砲に合わせて飛び出したプロトンは、ワールドチーム勢が作るハイペースのもと進行。この2年間の空白を急いで埋めるかのように猛進する選手たちに、観る者はただただ引き寄せられる。

アタックが頻発したが、終始トレック・セガフレードが集団を統率したことによってスプリントへ向けて着々と進行。地元・宇都宮ブリッツェンも終盤にかけてトレインを組んで前線へと上がっていき、世界屈指のチームを相手に一歩も引かない。これぞ「世界vs日本」とも言えるシーンが見られたが、最後はやはりワールドチーム勢に一日の長があった。

レースを構築したアシスト陣に応え、エドワード・トゥーンス(トレック・セガフレード)が一番にフィニッシュラインを通過。コフィディスが目下売り出し中の若手アクセル・ザングルとの競り合いとなったが、前回大会の勝者が“3年越しの連覇”を決めてみせた。

「3年ぶりに日本に戻ってくることができて本当にうれしいよ。沿道の観客も素晴らしく、この光景はまるで僕の住むフランダースのよう。2大会連続で勝てたことにも最高の気分だ。チームがレースをコントロールしてくれたから、何としても勝たなければならなかったんだ」(エドワード・トゥーンス)

前記したように、クリテリウムを通じてワールドチーム勢がジャパンカップに対して“本気”であることが明白になった。もちろん、これまでも彼らは本気だったはずだ。ただ、シーズン最終盤とあり、どうしても選手間でのコンディションの差は致し方ないところでもあった。しかし、今回は今までとは違う。UCIワールドチームの昇降格がかかっていることや、勢いある若い選手たちが多数来日したことなど、複数のプラス要因が重なった点が大きいだろう。ニュースタイルのジャパンカップを、ロードレースで実感する。

豪華な面々が宇都宮に集結

豪華な面々が宇都宮に集結

アジア圏で唯一となる、UCIプロシリーズのワンデーレースとして行われたロードレース。「アジア最大級のワンデーレース」として世界からの目が開催地・宇都宮に注がれた。クリテリウムから舞台を移し、宇都宮市森林公園を基点とするコースは、名物・古賀志林道の上りを含む10.3kmのルートを14周回。レース距離は144.2kmで、獲得標高は2590mに達する。

沿道に集まった76000人の観衆が見守る中、17チーム・93選手が一斉にスタートすると、直後から始まった古賀志林道の上りで早くもレースが動き出す。トレック・セガフレードが奇襲を企て、4選手が先頭グループを形成。そこにバーレーン・ヴィクトリアスなど、他のワールドチーム勢も乗り込む。いきなりのハイスピードで幕を開けた戦いは、この日1回目の山岳賞周回である3周目で次なる動きが生まれる。

序盤の流れに乗り遅れたコフィディスが古賀志林道で猛然とペースアップ。これでメイン集団が崩れると、前方に残った選手たちが1人、また1人と先頭グループに合流。その後の下りでも人数が増えて、この時点で先頭グループは24人。数十秒後ろでは先頭と同規模の第2グループが続く。

2回目の山岳賞周回である6周目になると、第2グループがいよいよ加速。古賀志林道の上りで前線目指してペースが上がると、頂上からのダウンヒルで合流に成功。この段階で50人以上がひとまとまりになって、実質のメイン集団に。この直後に堀孝明(宇都宮ブリッツェン)とディラン・ホプキンス(リュブリャナ・グスト・サンティック)が2人で抜け出すが、集団は動じない。それからは岡篤志らEFエデュケーション・イージーポストがレースコントロールを本格化させた。

ようやく落ち着いたプロトンの一方で、観衆は再び大興奮の瞬間を迎える。3回目の山岳賞周回の9周目、古賀志林道でアタックしたのは開催地の英雄・増田成幸(宇都宮ブリッツェン)。前日には今季限りでのブリッツェン退団、新チームへの移籍を発表したベテランは、宇都宮のファンに別れを告げるかのごとく独走を開始。山岳賞を獲得してからも約1周回単独走をして、10周目の途中で集団へと戻っている。

目まぐるしく変化するレースに、勝負へのアクションが出始めたのは11周目のこと。やはり古賀志林道の上りで、ティム・ウェレンス(ロット・スーダル)がアタック。これをきっかけに、古賀志林道できまってアタックがかかっては、後方に取り残されかけた選手たちが下りや平坦区間を通じて急いで前線へと戻る流れが繰り返される。この周回の後半にはニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)とシモン・ゲシュケ(コフィディス)が先行するが、続く12周目が山岳賞周回だったことも関係し、追っていた選手たちも続々とジョイン。最終盤へ緊張感が高まっていく。

そして、決定的な瞬間は13周目に訪れた。まず、古賀志林道でのパウレスで先頭は8人まで減る。その後ろでは、日本人選手でただひとり生き残っていた新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らが再合流を目指して懸命の追走。このパックが先頭に追いつこうかというところで、パウレスが再度のアタック。平坦基調での仕掛けには誰も即座の反応ができず、それからはチームメートであるアンドレア・ピッコロが追撃の芽を摘み取って、チームメートの独走をアシスト。

12秒のリードで最終周回の鐘を聴いたパウレスは、最後の古賀志林道でも勢いは衰えない。後ろではベンジャミン・ダイボール(チーム右京)やヘルマン・ペルンスタイナー(バーレーン・ヴィクトリアス)が追走を試みるが、これらもピッコロがすべてチェック。それどころか、ダイボールとペルンスタイナーの間隙を縫ってピッコロまでもがアタック。EFエデュケーション・イージーポストによるワン・ツーフィニッシュへ、一気に視界が開けた。

ロードレースで勝利したニールソン・パウレス

ロードレースで勝利したニールソン・パウレス

絶妙な連携から生まれたパーフェクトな勝利。宇都宮市森林公園にひとりで戻ってきたパウレスが、まずは大歓声を受けながらのウイニングライド。その12秒後、上位独占をアピールしながらピッコロもフィニッシュラインを通過した。

「長旅だったけど日本に来て良かったよ! こんな素晴らしいレースで勝てるなんて。調子の良さはクリテリウムで実感していたんだ。だから早めに仕掛ける勇気も生まれた。トライして正解だったよ。アンドレア(ピッコロ)も2位で続いてくれて、これ以上ない大成功だ!」(ニールソン・パウレス)

勝ったパウレスは、この数年でトップライダーの仲間入りを果たした26歳。昨年はクラシカ・サン・セバスティアンで勝っているし、今年はリエージュ~バストーニュ~リエージュ8位、ツール・ド・スイス個人総合4位、ツール・ド・フランスでは個人総合12位。ワンデーレースからグランツールまでマルチに走れるクライマーは、新たな勲章を日本で手に入れて2022年シーズンを終える。

「明日からは妻と一緒に日本を観光する。最高の形でシーズンを終えたので、もう少しこの国を楽しむことにするよ」(パウレス)

日本チャンピオンジャージでの参戦に大きな期待がかかった新城は11位。最終周回で上位陣に屈したが、ベストアジアンライダーの座は押さえた。

「3年ぶりの開催で個人的にとても楽しみにしていた。序盤から激しいレースで、僕自身は最後に脚が攣ってしまった。勝負に加われなかったことは残念だったけど、ヘルマン(ペルンスタイナー)が表彰台争いをしてくれて、チームとしては良いレースになった」(新城幸也)

このレースの前には、所属するバーレーン・ヴィクトリアスとの2023年シーズンの契約も結んだことを発表した新城。ツール・ド・フランス復帰を目指すと宣言したが、同時にジャパンカップへの挑戦も続く。

序盤からワールドチーム勢が飛ばしに飛ばしたレースを完走したのは41選手。半数以上の52人がリタイアするサバイバルな戦いになった。年々進む高速化に加えて、26歳のパウレスや21歳のピッコロ、5位に入ったマキシム・ファンヒルス(ロット・スーダル)の22歳といったヤングライダーの台頭で、世界のロードレースシーンの潮流がジャパンカップにもやってきた印象だ。

そこへ拍車をかけた、日本のファンの熱気。10月の宇都宮は、サイクルロードレースにおける世界の中心地へと返り咲いた。

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【ハイライト】ジャパンカップ クリテリウム|Cycle*2022

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【ハイライト】ジャパンカップ サイクルロードレース|Cycle*2022

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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