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サイクル ロードレース コラム 2022年10月14日

【Cycle*2022 ジャパンカップ サイクルロードレース:プレビュー】“Japan Cup is Back!”3年ぶりに還ってきた「世界vs.日本」の本気の戦い 世界を驚かせる瞬間が近づいている

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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Cycle*2022 ジャパンカップ サイクルロードレース

Cycle*2022 ジャパンカップ サイクルロードレース

日本が世界に誇るビッグレースの1つ、「ジャパンカップ サイクルロードレース」が3年ぶりに還ってくる。ここ2年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、海外からのチーム招聘ができず、大会そのものの中止を余儀なくされてきた。だが、アフターコロナ機運の高まりに合わせて、ジャパンカップも復興へと動き出した。そして2022年10月、第29回大会が開催される。

大会のテーマは“Japan Cup is Back!”。ジャパンカップの世界的な地位、そして大会そのものの価値は3年前と何ら変わらない。いや、むしろ高まっているといえるのではないか。

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カテゴリーとしては、国際自転車競技連合(UCI)が設定するレースシリーズとしては第2階層にあたる、「UCIプロシリーズ」に位置づけられる。アジア圏で開催されるワンデーレースとしては最高位である。つまりは、アジア最大級のレースであり、それだけ世界からの注目も集まるものといえよう。

UCIプロシリーズの出場資格は、最高峰の「UCIワールドチーム」から2番手の「UCIプロチーム」、そして3番手の「UCIコンチネンタルチーム」まで幅広い。日本を拠点とする国際登録チームのすべてがUCIコンチネンタルチームに属していることから、ジャパンカップは世界の一線級から日本を代表するチームまで、一堂に会する他ではない機会となるのだ。

ついつい前置きが長くなってしまったが、とにかく“すごいレース”が日本に戻ってくるのである。ここまで書いてきたのだから、注目選手の紹介…といきたいところだけれど、まぁそこは焦らず、先にレースコースをチェックしておこうではないか!

ジャパンカップ サイクルロードレースの舞台となるのは、栃木県宇都宮市は宇都宮市森林公園。ここを発着点とし、1周10.3kmのコースを14周回・144.2kmで争う。周回前半の古賀志林道のつづら折りは、ジャパンカップが世界に誇るジャパンカップの名物。世界トップクラスの選手たちが、ときに華麗なダンシングで、ときに苦しさに顔をゆがめながら急坂を駆け上がっていく姿はサイクルロードレースファンならずとも惹き込まれるはず。

頂上から一気に駆け下りると、平坦区間と緩やかな上りをこなして宇都宮市森林公園内のコントロールラインへと戻ってくる。レースの展開としては、序盤のアタック合戦から数人の逃げが生まれ、それからは強力なエースを擁するチームを中心にメイン集団をコントロールしていく流れが慣例。後半に入り、エースクラスの選手たちのアタックを合図に戦いのゴングが鳴る。そして、最後の2周回はビッグタイトルを賭けた本気のぶつかり合い…もちろん、勝負どころは古賀志林道の上りだ。

さあ、それでは出場チームと注目選手を見ていこう。

今回はUCIワールドチームから、5チームがエントリー(当初出場予定だったイスラエル・プレミアテックは選手の体調不良や怪我により参加取りやめ)。

3年前にバウケ・モレマを勝利に導いたトレック・セガフレード。モレマは今回欠場するが、代わってジュリオ・チッコーネがエースを務める。今季1勝を挙げた若手のアントニオ・ティベーリにもチャンスがありそうだ。

対抗一番手はバーレーン・ヴィクトリアス。今大会の絶対エースとして、新城幸也が日本へと戻ってきている。今年の日本王者として、チャンピオンジャージを自国のファンにお披露目する場でもある。ジャパンカップの最高成績は2015年の3位。あのときは後輪をパンクさせながらの優勝争いだった。あれさえなければ…といまだ悔やまれるが、それを忘れさせてくれるほどの快走を今回きっと見せてくれるはず!

同じく日本人エースを擁するチームがもうひとつ。EFエデュケーション・イージーポストの中根英登も今大会に合わせてきている。今年は春に体調を崩したが、それからはジャパンカップに照準を定めて調整を進めてきた。9月以降はイタリアの伝統レースを走り、チームへのフィット感も取り戻している。予定では、グランツールレーサーのリゴベルト・ウランや総合力の高いニールソン・ポーレスも出走。随一の選手層で宇都宮へと乗り込む。

エースのギヨーム・マルタンを招集したフランスの雄・コフィディスも本気だ。グランツールの総合成績を争える選手だけに、古賀志林道の上りは問題ないだろう。力強いアタックや独走力もあるから、展開を味方につければ勝機がグッと高まる。それに、いざとなればシモン・ゲシュケで勝負に出ることだってできる。

この大会に特別な意気込みで臨むのが、ロット・スーダル。なぜなら、今季終了後のUCIワールドチーム・プロチームの入れ替えを前に、降格圏に位置しているのだ。ベルギー伝統チームがトップカテゴリーに残留するためには、ジャパンカップと現在マレーシアで開催されているツール・ド・ランカウイ両方で好成績を残すことが絶対条件。チームは日本にティム・ウェレンスを送り込む。

UCIプロチームでは、初出場のエウスカルテル・エウスカディと、2014年から連続出場中のチーム ノボノルディスクが参戦。海外からの同コンチネンタルチームとして、過去にタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)を輩出したリュブリャナ・グスト・サンティックと、現時点ではUCIランキングでアジアトップに位置するトレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチームが出場する。

海外からこれだけのチームがそろっても、今年の日本チームなら臆することなく対峙することが十二分にできる。それだけレベルが高まり、世界を驚かせられるだけの戦力が各チームにそろっているからだ。

大きな期待がかかるのは、ホームチームの宇都宮ブリッツェン。地元ファンの声援をバックに、増田成幸で上位進出を狙う。意外にもジャパンカップの最高成績は14位という増田だが、ここ数シーズンの勢いからすれば優勝争いに加わって不思議ではない。

アジアでは強力チームとして一目置かれるチーム右京は、ベンジャミン・ダイボールで勝負。直近ではツール・ド・台湾で個人総合優勝し、絶好調をキープして今大会へと向かう。同じくアジア有数の戦力を持つキナンレーシングチームは、実績十分のマルコス・ガルシアとトマ・ルバに加えて、山本大喜が日本人エースに成長。消耗戦に持ち込めるとおもしろい。

シマノレーシングは、ツール・ド・台湾で個人総合トップ10入りした風間翔眞と中井唯晶が軸。愛三工業レーシングには前・日本王者の草場啓吾、那須ブラーゼンにはツール・ド・北海道ステージ1勝の谷順成と計算できるエースが控える。精鋭部隊の日本ナショナルチームは、現・個人タイムトライアル日本王者の金子宗平ら若き力6人が選出された。

ロードレース前日の10月15日には、宇都宮市中心部の目抜き通りを舞台に「ジャパンカップクリテリウム」も実施される。1周2.25kmのコースは2つのヘアピンコーナーをのぞけばほぼ一直線。ロードレースに出場するメンバーの大多数がこちらにも臨むので、ハイスピードバトルとなることは必至。プレイベントというには贅沢すぎるほどに、“本物のスピード”が見られるクオリティの高い戦いが演じられる。

何より、各チームともクリテリウムを見越してスプリンターを配備しているあたりに、その“ガチ度”がうかがえる。前回覇者のエドワード・トゥーンス(トレック・セガフレード)も再びやってくるし、進境著しいアクセル・ザングル(コフィディス)、今季1勝しているスティーブン・ウィリアムズ(バーレーン・ヴィクトリアス)も有力。ベテランのファンホセ・ロバト(エウスカルテル・エウスカディ)もスピードでは負けない。

日本勢では、今季国内シリーズでたびたび勝利を挙げている小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)の走りが楽しみ。ツール・ド・台湾で1勝した岡本隼(愛三工業レーシングチーム)、クリテリウムのみの出走となる中島康晴(キナンレーシングチーム)にも、ジャイアントキリングの可能性は大いにある。

また、クリテリウムのオープニングパレードでは、別府史之さんの引退セレモニーも実施される。過去2回宇都宮市街地コースを制するなど、日本のサイクルロードレースシーンを引っ張ってきたパイオニアがファンに感謝を伝える。

新型コロナ禍を乗り越え、リスタートとなる今大会。国内外のトップライダーたちが魅せる“本物”の戦いに、われわれは心を奪われる。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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