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サイクル ロードレース コラム 2022年10月8日

【Cycle*2022 パリ~トゥール:プレビュー】フィリップ・ジルベールのラストラン!ブドウ畑の砂利道と連続する丘陵が強き者を選び出す

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ブドウ畑のなかの生産・収穫用の砂利道

ブドウ畑のなかの生産・収穫用の砂利道

春のクラシックレース、パリ〜ルーベに北の地獄と呼ばれる石畳の「パヴェ」があるなら、秋に開催されるパリ〜トゥールには「シュマン」と呼ばれるワイン農園の小径が用意されている。ブドウ畑のなかの生産・収穫用の砂利道が、パリ〜トゥールの勝負どころとして設定されているのだ。2022年の砂利道区間は、前年よりもわずかに伸びて総距離10kmにもなる。

2022シーズンもいよいよ大詰め。10月9日にはフランス中部のロワール地方で第116回パリ〜トゥールが開催される。大会名はパリ〜トゥールだが、パリ〜ルーベと同様にスタート都市はパリではない。2022年大会は前年と同様、左右で尖塔の様式が異なる大聖堂で有名なシャルトルがスタートを担う。パリ〜トゥールでは7回目の出発地点となる。

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ゴールはもちろんロワール地方の中心都市トゥール市。フランスで最も長いロワール川の流域にある。温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、古くから王侯貴族たちが自然や狩りを楽しむために競って優雅な城館を建てたのがこのあたり。ロワール渓谷周辺280kmは「ロワールの古城群」としてユネスコ世界遺産に指定されている。

そしてこのロワール渓谷はワインの産地としても有名で、広大な丘陵地にブドウ畑が点在する。2022年大会のレース終盤には8カ所の丘陵地が用意されたが、パリ〜ルーベのパヴェ同様に、ここが勝負どころとなるのは明らかだ。かつてはロワール川沿いの下り基調のレースとなることからハイペースで推移し、最後は集団スプリント勝負となりがちだったパリ〜トゥールに、2018年から新たな見どころが加えられたのである。

2019年のイエール・ワライス(現コフィディス)のようにゴールから50kmも離れた丘陵地でアタックして独走するか、あるいは2021年のアルノー・デマール(グルパマFDJ)のように丘陵地でライバルを逃さず最後のゴール勝負で勝つか、パリ〜トゥールの勝ちパターンは定まらなくなった。これが興味深いところだ。

地元ファンの期待は、2021年に15年ぶりに地元フランスに栄冠をもたらしたデマールだけではない。世界選手権エリート男子ロードで2位になったクリストフ・ラポルト(ユンボ・ヴィスマ)が注目されている。同3位のマイケル・マシューズ(バイクエクスチェンジ・ジェイコ)も少人数のゴールスプリントに持ち込まれた場合は世界選手権での2位争いの再現が期待できる。

ラポルトは2022ツール・ド・フランスでエースのヨナス・ヴィンゲゴーをアシストしつつ、大会終盤の第19ステージでうれしい初優勝を挙げた。10月4日に開催されたバンシュ〜シメイ〜バンシュでも競り合いから抜け出して優勝した。シーズン終盤も絶好調を維持している。

大集団の争いとなれば、2022ツール・ド・フランスでステージ2勝を挙げたヤスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス)、2015、2017の覇者マッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ)、ブライアン・コカール(コフィディス)、ジャコモ・ニッツォーロ(イスラエル・プレミアテック)、エリア・ヴィヴィアーニ(イネオス・グレナディアーズ)など、いくつかのトップスプリンターが勝利する可能性が高い。

10月6日に開催されたフランスのパリ〜ブルージュではフィリプセンがゴール勝負で優勝。2位はデマール、3位はコカールだった。

ブドウ畑のシュマンが採用されたパリ〜トゥールの特徴を考慮すると、シュテファン・キュング(グルパマFDJ)、ミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ)、アルベルト・ベッティオルやマグナス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)、アントニー・テュルジス(トタルエネルジー)も有力候補に挙がってくる。

またレース中盤はひらけた平坦路で、季節風が強い時期でもあることから、横風で大集団が分断される可能性もある。優勝候補を擁するチームは組織力も試されることになるだろう。

興味深いことに、自転車競技史上最強と呼ばれ、幾多のレースを総なめにしたベルギーのエディ・メルクスはパリ〜トゥールで優勝したことがないという。

2008年と2009年に優勝した元世界チャンピオンのフィリップ・ジルベール(ロット・スーダル)はこのレースで現役生活にピリオドを打つ予定。

文:山口和幸

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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