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サイクル ロードレース コラム 2022年10月8日

【Cycle*2022 グラン・ピエモンテ:レビュー】イバン・ガルシアが自身初のワンデー勝利に歓喜!「この勝利は極めて大きな意味を持つ」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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イバン・ガルシアがフィニッシュラインを先頭で駆け抜け

イバン・ガルシアがフィニッシュラインを先頭で駆け抜け

フィニッシュ手前60kmに聳える、唯一の難所が、シーズン末のプロトンを切り裂いた。ピュアスプリンターたちはまとめて置き去りにされ、前方に生き残った「スプリンター」と呼べる数少ない選手の中から、イバン・ガルシアが勝利をさらい取った。

「とうとうやった!チームに合流して2年目にして、ようやく勝利を手に入れた。ほぼ3年近く勝てていなかったから、僕にとっては、この勝利は極めて大きな意味を持つ」(ガルシア)

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スタート直後に4人が逃げ出した後、集団制御に乗り出したのはユンボ・ヴィスマだった。1年前のグラン・ピエモンテで3位表彰台に上がり、今季は通算12勝と、凄まじい上昇気流に乗っている20歳オラフ・コーイのために、黙々とタイム差コントロールに励んだ。マーク・カヴェンディッシュ擁するクイックステップ・アルファヴィニルも、ステージ半ばから牽引作業に加わった。最大5分半ほどに広がった差は、長い長い平地の果てに、「イル・ピルエット」の麓で2分ほどにまで縮まっていた。

平均勾配こそ7.9%とキツメながら、登坂距離は3.3kmと短めで、決して恐怖におののくほどの山岳ではなかったはずだ。その後に続く小さなアップダウンをすべてこなしたら、しかもフィニッシュまでの残り40kmはド平坦。だからこそスプリンターチームはレースに鍵をかけ、淡々と難関を乗り越えようと試みた。

ただしクライマー向けのイル・ロンバルディアの2日前だからこそ……、同じ日に隣国フランスでよりピュアスプリンター向けのパリ〜ブルジュが開催されていたからこそ……、必ずしもすべてのチームが、スプリント勝負一本にかけていたわけではなかったのだ。ミラノ〜トリノで長年おなじみスペルガの丘へと、反対側から上る坂道で、複数のチームが突如として猛攻に転じた。しかも元ジロ山岳賞ジュリオ・チッコーネに、ラ・フレーシュ・ワロンヌ優勝経験者のマルク・ヒルシに、昨季のクラシカ・サンセバスチャン覇者ニールソン・ポーレスという難勾配が大好物な実力者たちが突進を続けた上に、自慢のダウンヒルテクニックでミラノ〜サンレモを制したマテイ・モホリッチが、下りで鮮やかな加速を切ったものだから、平地巧者たちはひとたまりもなかった!

「ロンバルディア前の最後のトレーニングと呼んでもいいかもね。今日は僕が上りでスピードを上げ、その後は集団スプリントに向かう計画だった。でも、かなりハードな上りだったから……結局のところスプリンター向きではなかったみたいだ」(チッコーネ)

すべてのアップダウンを終え、道が再び平坦に戻った時、朝からの逃げはすでにマッテオ・ヨルゲンソンとカミル・マウェツキーの2人だけになっていた。なにより約1分差で追いかけるメイン集団は、40人ほどにまで数を減らしていた。コーイも、カヴェンディッシュも、そこにはいなかった。元大会覇者のジャコモ・ニッツォーロも、グランツール区間9勝のエリア・ヴィヴィアーニも、今ブエルタでグランツール区間勝利デビューを飾ったカーデン・グローブスも、みんな揃って後方へと置き去りにされてしまった。

メイン集団からの遅れは約2分。もちろんスプリンターたちは共闘体制を組んだ。イネオス・グレナディアーズとユンボ・ヴィスマが、隊列で平地を爆走した。バイクエクスチェンジも先頭交代に加わった。9月末に有名スプリンターを蹴散らし絶好調なシモーネ・コンソンニのために、コフィディスも協力を惜しまなかった。フィニッシュ手前30kmで差は1分20秒に縮まり、さらに残り25kmで、45秒差にまで追い詰めた。

前方のメイン集団も粘った。中でもアンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオーが驚異的な引きを見せた。逃げの2人を残り31kmで回収しつつ、ベテラン実力者、レイン・タラマエとヤン・バークランツが作業に勤しんだ。しかも残り15kmまで来ても、いまだに50秒のリードを死守していたものだから、次第に牽引協力者たちの数は増えていく……。

残り12kmで39秒差。追う側に形勢が傾いたように思えた。ところが逃げる側は、そこから一気にまくし立てた。残り10kmで再び差は50秒に広がり、残り5kmでついに1分の壁を超えた。万事休す。ピュアスプリンターたちはとうとう匙を投げた。

壮麗なストゥピニージ宮殿から伸びる、秋色に染まりつつある並木道へと、35人の小さな先頭集団が雪崩れ込んだ。小さなアタックが起こり、ラスト2kmからのコーナーの連続では、激しい位置取り合戦が繰り広げられた。慣れない発射台の背後から、上れるスプリンターやパンチャーや、ダウンヒラーが、無我夢中でフィニッシュラインへと飛び込んだーー。

「今日は本気で勝てると思ってた。上りでもすこぶる調子が良かった。ラスト30kmは凄まじいハイペースだったから、多くの選手が体力を残していないことも知っていた。だから自分のチャンスを信じた」(モホリッチ)

「大集団スプリントの場合は位置取りが苦手だし、リスクも冒したくないし、本当は上りフィニッシュの方が好きなんだけれど……今日は集団が小さかったからトライする価値があった」(アレクシー・ヴィエルモ)

アルベルト・ベッティオルの後輪を選んだモホリッチと、チームメートの背後から発射されたヴィエルモ。エプスタイン・バール・ウイルスから快方したばかりの前者と、骨盤骨折からの復活を遂げたばかりの後者が、勝利への強い執着を披露した。しかし、はるか後方から突如として姿を現した紺色の俊足が、鮮やかに両者を抜き去った。ガルシアがフィニッシュラインを先頭で駆け抜け、自身初のワンデー勝利に歓喜した。

イバン・ガルシア

イバン・ガルシア

「今日は朝から良い予感を抱いていた。脚の調子が良かったし、ここ数レース、ずっと力強さを感じていたからなんだ。最終コーナーはかなり遠くにに沈んでいたけど、最終ストレートでなんとか追い上げ、間に合った!」(ガルシア)

所属モビスターにとっては、10月1日ジロ・デミーリャのエンリク・マス勝利に続く、秋のイタリアセミクラシック2勝目。ガルシアが言う通り「もはや僕らのチームはポイント収集の必要はない」。なにしろ長らく悩まされてきたUCIワールドツアー残留のための戦いからは、晴れて解放された。「それでも勝つのは気持ちいいね!」と高らかに笑う。あとは2日後のイル・ロンバルディアで、42歳アレハンドロ・バルベルデのために全力で尽くして、輝かしい走りで第2の人生へと送り出すだけ。

「土曜日のロンバルディアで、僕はシーズンを終える。バルベルデのラストレースでもある。彼もマスも調子はいいから、僕らは素晴らしい後味と共に、シーズンを締めくくることができると思うんだ」(ガルシア)

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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