人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2022年9月24日

【Cycle*2022 UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース:プレビュー】日の丸を胸に新城幸也も参戦!強者たちが国の誇りを背負ってアルカンシェルを奪い合う

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
  • Line
アルカンシェルをまとう昨年王者アラフィリップ

アルカンシェルをまとう昨大会王者アラフィリップ

年に1度の世界一決定戦。虹をかけるべき瞬間。1週間前から、オーストラリアのウロンゴンで繰り広げられてきたUCIロードレース世界選手権は、いよいよ男子エリートロードレースでクライマックスを迎える。

全長266.9km、予定走行時間6時間半以上という、長い長い日曜日。いわば今年のツール・デ・フランドルよりほんの数キロ短い戦いは、前日の女子エリートと同じく、東海岸のヘレンズバラで幕を開ける。その後も使用されるコースは完全に同じ。つまり海辺をひたすら南下し、ウロンゴンを起点とする2つの周回へ。

1つ目は「赤」の周回、名付けて「マウント・ケイラ・ループ」。34.2kmのサーキット上では、登坂距離8.7km、平均勾配5%、最大15%のケイラ山が待ち構える。登坂口の道の名前が「Hurt(痛む)」ストリートと言うだけあって、序盤には10%超の難ゾーンが1kmにも渡って続く!

間違いなくプロトンはここで一気に緊迫感をまとう。クライマー系エースを擁するチームは、上れるスプリンターたちの脚を痛めつけにかかるはずだし、逆に俊足を守るアシストたちは、せっせとコントロールに励むはずだ。このケイラ登山は、たしかに虹色争奪戦のほんの前菜に過ぎない。山頂を越えても、いまだレースはたっぷり225kmも残っている。しかし優勝候補の1人タデイ・ポガチャルに言わせれば、「この20分程度の努力は、後から必ず脚に来る」。

J SPORTS オンデマンド番組情報

レース詳細ページ

赤い周回を1つ回ったら、「緑」の「ウロンゴン・ループ」へ。全長17.1kmのサーキットを、女子エリートが6周したのだとしたら、男子エリートは倍の12周回行う。

すなわち周回の真ん中に連続で立ちはだかるアウスレー山(約900m、約5%)+プレザント山(1.1km、7.7%、最大14%)を、12回も繰り返し上らねばならない。いずれも距離は短く、勾配も震え上がるほど恐ろしいものでもなく、例えればアムステル・ゴールドレース風の上り。しかし積み重ねていくうちに、累計獲得標高差は、アムステルを遥かに超える3945mにも達するのだ。むしろ8月上旬にレムコ・エヴェネプールが制したクラシカ・サンセバスティアンが、3942mの戦いだった。

コースプロフィール

コースプロフィール

つまり周回をこなすごとに、着実に脚に疲労が蓄積し、集団は自ずと削られていく。しかも短い坂道だからこそ、レース終盤ではパンチャーたちが猛スピードでぶっ飛ばし、集団を破壊にかかる。

ちなみにカーブにロータリー、細かいアップダウンが続く恐ろしくテクニカルな周回コースは、もしも雨が降れば地獄と化すことが……金曜日の男子ジュニア&アンダー23レースで判明済み。幸いにも、男子エリートの当日の天気予報は「晴れ」だが、それでもスピードの出る下りは警戒すべし。

しかしアルカンシェル争奪戦を左右するのは、単にコースの作りや、エース個人の実力だけではない。国別代表チームというのは、いわば年に1度の急造チームであり、その上、無線のない戦いだ。監督は事前に入念に戦術プランを組み立てねばならないし、レース本番では、選手たちの経験とチームワークこそがモノを言う。

過去2大会、強いエース+戦術プラン+強力なチームワークのすべての条件をパーフェクトに揃え、ジュリアン・アラフィリップを世界チャンピオンに押し上げたのがフランス代表だった。もちろんペーター・サガンに次ぐ世界選3連覇の快挙が期待されるが、ブエルタでの落車負傷で、アラフィリップは必ずしも体調100%でオーストラリアに乗り込めたわけではない。すると絶対的な「強いエース」を欠く今回、「策士」として名高い監督トマ・ヴォクレールは、果たしてどんな作戦を選択するのか。

一方、昨フランドル大会で、地元ベルギー代表はチームワークの部分で歯車が合わなかった。最強の2人、ワウト・ファンアールトvsレムコ・エヴェネプールの騒動はまさに国家的一大事にまで発展した。だから前回の反省を踏まえて、今年のベルギーは、戦術プラン自体を変えて戦いに臨む。2人を平等にエースに据える。その結果、2人とも「最終盤まで無駄に体力を消耗しない」走りをするし、「あまりにも早く1人に絞り込まれるような展開にはしない」とのことだが……。

とりあえずワウトとレムコは、誰が自分たちにとって最大のライバルか、という点に関しては少なくとも意見が一致している。チームとして手強いのがフランス代表で、個人として怖いのはマイケル・マシューズ(オーストラリア)とタデイ・ポガチャル(スロベニア)とマチュー・ファンデルプール(オランダ)。

上れるスプリンターとして、地元オーストラリアのエースを引き受けるマシューズは、登坂距離3.1km、平均勾配10%、最大12%の激坂フィニッシュを制した「ツール時よりはるかに調子が良い」と自信をみなぎらせる。残念ながらプリモシュ・ログリッチ(負傷)とマテイ・モホリッチ(病気)を欠くスロベニア代表は、最大8人枠がありながら6人での参戦だが、「金メダルが取りたいな」とポガチャルはいつも通り。また「勝てる自信がなきゃ今大会には来ないさ」と、ファンデルプールは何度も繰り返す。

若手中心に編成された英国チームも頼もしいし、どんなときも自転車大国の誇りにかけて勝負を諦めないイタリアは絶対に侮れない。スプリントにもつれ込んだ場合は、ビニアム・ギルマイ(エリトリア)が、爽やかな衝撃を作り出してしまう可能性も十分にある。

日本からは新城幸也が、ナショナルジャージを身にまとう。今大会にエントリーした男子エリート選手の中では、最多となる、14回目の世界選手権参戦。12年前のオーストラリア・ジーロング大会では、日本男子エリート史上最高位の9位に飛び込んだが、2022年のウロンゴン大会でも、現役日本チャンピオンは堂々たる走りを見せてくれるに違いない。

無料動画

世界選手権男子エリートロードレース展望|第6回 別府史之のetape par etape

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

  • Line

関連タグ

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ