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【Cycle*2022 UCI世界選手権大会 女子エリート 個人タイムトライアル:レビュー】女王エレン・ファンダイクが母国に3年連続の栄冠を持ち帰る「正直に言って、サプライズでした」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか笑顔が弾けたエレン・ファンダイク
ディフェンディングチャンピオンが、虹色の日々をさらに1年延長した。パーフェクトなタイムトライアリストであることが求められる難コースで、完走41選手の中で唯一時速46km超を記録したエレン・ファンダイク(オランダ)が、2年連続3度目の女子エリート個人タイムトライアル世界一の座をつかみとった。
「レインボージャージで素晴らしい1年を過ごしてきたから、ただ今日は全力を尽くそう、表彰台に上がれたら最高だけど、たとえ上がれなかったとしても、素晴らしい1年だったことに変わりはないのだ……と考えていました。きっと、こんな考え方が、違いを生んだのでしょう」(ファンダイク)
12年ぶりにアルカンシェル争奪戦を受け入れたオーストラリアは、テクニカルな周回コースを選手たちに突きつけた。道は広いけれど、繰り返し減速と加速とを強いる無数のカーブ。たとえ短くとも、勾配のある上り坂。むしろ平地の直線路でハイスピードを維持することが得意なファンダイクは、つまり自らを優勝候補とはみなしていなかったという。
J SPORTS オンデマンド番組情報
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Cycle*2022 UCI世界選手権大会 女子エリート ロードレース
配信期間 : 2022年9月24日午前11:15 ~ 2022年9月24日午後6:20
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Cycle*2022 UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース
配信期間 : 2022年9月25日午前9:05 ~ 2022年9月25日午後5:50
「難しい周回コースだったから、ここで勝てるとは予想していませんでした。だって私向きのコースではありませんでしたから」(ファンダイク)
しかし、前年度女王は、まさしく別格だった。34.2kmのコースに一番最後に走り出して行くと、あらゆる中間計測地点でトップタイムを塗り替えた。7.2km地点では2位に8.89秒差をつけた。第2計測地点の24.5km地点ではさらに22.08秒へと広がった。
ちなみにファンダイク本人は、ライバルたちとのタイム差を、一切耳に入れずに走り続けた。理由は「知りたくなかった」から。
「自分自身だけに完全に集中したい、自分の努力にひたすら向き合いたい、そう思ったからです」(ファンダイク)
大部分のトップ選手が、女子ブエルタを1週間前に走り終えてから、慌ただしくオーストラリア上陸を果たした一方で、35歳のベテランは、女子ツール後はただただこの日に向けて準備を重ねてきた。だからこそ「メンタル面でもフィジカル面でも」最高のアプローチで大会に乗り込んだし、最後の最後までダンシングで攻める体力を残していた。フィニッシュラインでは軽くハンドルさえ投げた。結果は44分28秒60。間違いなくトップタイムだった。
「とにかく最後まで戦い抜くことが出来ました。最終盤で前方に選手が走っているのが見えて、今日が『バッドデー』などではないことも確信していたんです。でも、正直に言って、サプライズでした」(ファンダイク)
2013年フィレンツェ大会で初めてマイヨ・アルカンシェルを身にまとってからの1年は、世界チャンピオンとしての重圧に苦しみ、1年前のフランドル大会からの1年間は、「ジャージを着て過ごすあらゆる時間を楽しんだ」。果たしてこの先の1年は、どんな素敵な毎日が待っているのだろうか。凄まじい集団牽引役としても知られるファンダイクは、少なくともあと2年はプロ契約を残している。2024年パリ五輪での金メダル獲得を視野に入れるが、その前に、2023年世界選手権で、ジャンニ・ロンゴ(フランス)の誇る史上最多4勝に肩を並べるための挑戦が待っている!
また母国オランダにとっては、3年連続の女子エリート個人タイムトライアル制覇。勝利数ではタイで並んでいたアメリカを突き放し、史上単独最多となる8回目の栄光を手に入れたことになる。残念ながら、この独走種目で過去2度の世界制覇と東京五輪金メダルを誇る同朋アネミエク・ファンフルーテン(オランダ)は、本人にとっては予想外の「バッドデー」で7位に沈んだが……。
銀メダルには地元オーストラリアのグレース・ブラウンが飛び込んだ。2年前の世界選では個人TT初出場で5位、昨夏は初めての五輪で個人TT4位、この夏は初めてのコモンウェルス大会で個人TT優勝……とタイムトライアル界で近年急速に実績を積み重ねてきた30歳は、目標(表彰台)と夢(優勝)を抱いていて大会に乗り込んだという。
出場42選手中10番目にスタートを切ると、ブラウンが飛ぶようにコースを駆け抜けた。最後の1人にトップタイムを塗り替えられるまで、約1時間45分に渡って、笑顔でホットシートを温め続けた。つまり、あわや夢を叶えかけ、最後はしっかりと目標をつかみ取った。ファンダイクには12.73秒及ばなかったけれど、最終9.7kmのタイムだけは、9.35秒上回る世界1位だった!
過去2大会を2位で終えたマーレン・ローセル(スイス)は、今回は3位に泣いた。ちょうど1ヶ月前の欧州選手権ではファンダイクに6秒差をつけてタイトルを手にしていただけに、大会初日にスイスの男女アベック世界制覇も大いに期待されたのだが……いずれも最も美しい色のメダルは獲れなかった。
21歳ヴィットリア・グアジーニ(イタリア)は、史上初めての、女子アンダー23世界個人タイムトライアルチャンピオンになった。むしろ約11秒差で女子エリート表彰台乗りを逃したことに「少しガッカリ」しているらしい。またシリン・ファンアンローイ(オランダ)が銀を、リカルダ・バウエルンファイントが銅メダルをそれぞれに持ち帰った。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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