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【Cycle*2022 クラシカ・サンセバスティアン:プレビュー】ポガチャル、新城幸也も参戦!最終8.2km地点からのダウンヒル+平坦が運命を大きく左右する
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかコースレイアウト
7月のいまだ冷めぬ記憶と、8月にやってくるであろう熱い戦いへの予感。もしくはツール・ド・フランスを戦い終えたばかりで、すっかり身体が仕上がっている者たちと、ここから真夏の勝負へと走り出す上り調子の選手たちが、スペイン・バスク地方のアップダウンコースで交ざり合う!
伝統的にツール閉幕直後後に行われてきたクラシカ・サン・セバスティアンは、昨大会から地元バスク語での都市名ドノスティア(=サン・セバスティアン)を冠して、ドノスティア・サン・セバスティアン・クラシコアへと生まれ変わった。ビスケー湾の美しきビーチリゾートを起点に、ドノスティアからドノスティアまでの全長224.8km。道の上には6つの山岳と細かい起伏が待ち受ける。
コース自体は、昨大会とほぼ同じ。海辺のサン・セバスティアンをスタートすると、まずは西側に大きくぐるりと一周回。平均勾配6.2%から7.3%の手応えある3つの上りが、選手たちの脚を試しにかかる。
そこから東部へと足を伸ばして、新たに3つの上り坂へ。まずは大会伝統の山ハイスキベルの全長7.4km、平均勾配5.8%、最高8.5%の山道が、23チーム・161選手で構成されたプロトンを小さく絞り込んでいく。
さらには残り43kmに差し挟まれたエライツ坂。全長3.8km、平均勾配10.6%の超激坂は、一瞬たりとも休む暇を与えない。ここで勝負が決まらない場合は、残り8.2km地点の最終ムルギル・トントラが審判を下す。2.1kmの短い上りながら、平均勾配は10.1%。序盤に17%ゾーンが潜む激坂は、ラスト500mに20%弱の勾配が畳み掛けるように続く。
もちろん「上れる」だけでは、勝者に与えられる巨大なベレー帽を手にすることなど出来ない。ルイスレオン・サンチェス、トニー・ガロパン、アレハンドロ・バルベルデ、ジュリアン・アラフィリップ……数々のダウンヒル巧者が大会勝者リストに名を残す。2014年大会には上りでの遅れを下りで埋め、ミハウ・クフィアトコフスキが優勝をさらったし、2016年にはバウケ・モレマが、下りを利用して独走態勢に持ち込んだ。
前回大会を制したニールソン・ポーレス
1年前もやはり「下り」が勝負を分けた。濡れた下りでプロトンNo.1ダウンヒル巧者マテイ・モホリッチがコーナーでバランスを崩すミスを犯し、それにつられてミッケルフレーリク・ホノレが落車した一方で、「サイクルコンピュータから急コーナーの存在を通知されていた」おかげで唯一ニールソン・ポーレスだけが無傷でクリア。こうして同3人によるスプリントを、堂々勝ち取っている。
つまり2022年大会も、最終8.2km地点からのダウンヒル+平坦が、必ずや運命を大きく左右する。過去10年間は必ず独走、もしくは少集団スプリントで締めくくられてきた。しかも常に5人以下の極小集団によるぎりぎりの戦いだ。
ところで、その過去10大会の勝者の顔ぶれを見ると、ツール・ド・フランス組が9勝1敗と圧倒的な勝率を誇ってきた。今年もマイヨ・ジョーヌこそ地元の祝祭で忙しいけれど、総合2位タデイ・ポガチャルに3位ゲラント・トーマスに4位ダヴィデ・ゴデュという、フランスを大いに沸かせた選手たちが、勢いそのままにバスクへと乗り込んでくる!
このサン・セバスティアンを区切りに長い連戦生活も一旦区切り...という上記選手に対して、ここから8月のスペイン連戦(ブルゴス→ブエルタ)へ本格的に走り出す強豪たちだって少なくない。
特にジャイ・ヒンドレーは5月のジロ・デ・イタリアで総合を制して以降の本格始動となる。またジロ総合3位ミケル・ランダやジロ区間2勝(その後負傷で途中棄権)サイモン・イェーツ、さらには総合勢をさんざん脅かした挙げ句にコロナ陽性で大会を去ったジョアン・アルメイダの、ブエルタへと向けた仕上がり具合も要チェックだ。
近年では唯一、ツール参戦選手「以外」で同大会を勝ち取ったレムコ・エヴェネプール22歳の、新たな快進撃も見てみたいところ。自転車人生最後の夏を過ごすヴィンチェンツォ・ニバリやアレハンドロ・バルベルデの勇姿も、改めてもう一度、瞳に焼き付けておきたい。
ちなみに2023年の7月には、ツール・ド・フランスが、スペイン・バスク地方で華々しく開幕を迎える。しかも第2ステージは、ドノスティア・サン・セバスティアン・クラシコアの伝統坂としておなじみ、ハイスキベルが最終勝負後に選ばれた。もちろんフィニッシュラインが引かれるのは、ここサン・セバスティアンの街だ。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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