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サイクル ロードレース コラム 2022年7月1日

別府史之のetape par etape | ツール・ド・フランス2022 展望

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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昨大会優勝したUAEのポガチャル(写真中央)

昨大会優勝したUAEのポガチャル(写真中央)

「別府史之のetape par etape(エタップ・パー・エタップ)」第3回目は、もちろん自転車界最高峰のレース、ツール・ド・フランスに迫ります!

レースの舞台となるフランスで長年暮らし、2009年に新城幸也選手と共に、日本人として史上初めてツール・ド・フランス完走を果たした別府史之さんならではの、想いも見てきます……。

■2022年ツールのマイヨ・ジョーヌ争いの行方は!?

もちろんポガチャルとログリッチ。やっぱりこの2人の争いになるんじゃないですか。ゲラント・トーマスも、ツール・ド・スイスを見る限り、すごく調子を上げてきてます。ただ、3週間の厳しいステージレースで、どこまで走れるか。もちろん過去にトーマスはツール総合優勝しているんですけど……厳しい戦いにはなるんじゃないかな。

すごくおもしろそうだなって思ったのはヨーナス・ヴィンゲゴーですね。ドーフィネ最終日も、ログラの最終牽引してましたが、あわよくば自分が勝ちに行くんじゃないの?あれ、もしかしたら、山岳はヴィンゲゴーのほうが強いんじゃないかな?って思っちゃうようなスピードでした。もちろんログリッチは総合優勝することがメインでしたから、鉄壁の走りをしてたんですけど、なんとなくヴィンゲゴーが大暴れしそうな予感を抱いてます。

そのドーフィネではAg2rのベン・オコーナーが、ただ1人、ユンボに対して山岳で粘り強い走りをしてましたね。厳しいステージでも戦えるだけの潜在能力を改めて示しましたし、去年はツール4位でしたが、今年は表彰台も狙っていける位置にいると思います。

アレクサンドル・ウラソフとアダム・イェーツは、ツール・ド・スイスでコロナ陽性になって、レースを去ることになってしまった。でも、彼らも、健康体でありさえすれば気になる存在ですね。

個人的に頑張ってほしいのは、ロマン・バルデ。ジロでも、ジロの前哨戦のレースでもすごく調子が良かったです。ティボー・ピノーもコンディションを上げてきてる。やはりツールはフランスで行われますし、フランス選手が活躍すると国中が盛り上がりますから、彼らの走りにも注目してます。

■マイヨ・ヴェール争いはやっぱりワウト・ファンアールトですか?

昨大会ではステージ3勝したワウト・ファンアールト

昨大会ではステージ3勝したワウト・ファンアールト

ワウトは、なんかというか、もはや「別格」ですからね。スプリントも強いし個人タイムトライアルは速いし山も上れるし。うん、やっぱり、ワウトを中心にして繰り広げられると思います。

今年のコースは本当に平坦なステージが少ない。それに近年のツールでマイヨ・ヴェールを取るのは、フルでフラットを突っ走る選手ではなく、色々な地形をマルチにこなしつつ中間スプリント取りに行く選手が多い印象もあります。平坦でのスプリントスピードだけで考えれば、今はファビオ・ヤコブセンがピカイチですし、ステージも勝つとは思うんですけど、最終的にマイヨ・ヴェールを着るとなると、今年の山岳の多さがデメリットになるのではないかな。

だから、ピュアスプリンターというよりも、ワウトのようにマルチに動けるような選手が取っていくんじゃないでしょうか。

ただ、グリーンジャージは狙わずステージだけ狙う……って宣言してるマチュー・ファンデルプールが、どう動くかも気になります。もしかしたらツール前半は気負わずステージだけ狙っていって、でもいつの間にかポイントが溜まっていき、後半はマイヨ・ヴェールを狙うなんてこともあるかもしれません。だって地形的には、マチューにも向いているはずなので。

(ワウトがログリッチの総合のために働きながら、マイヨ・ヴェールを取るのは可能?)

たしかに今までのレースを見ていると、ワウトは自分のためだけの走りではなく、ちゃんとチームメイトのためにも仕事をしている。ただ、チームとしては、やっぱりワウトにマイヨ・ヴェールを取らせてあげたいっていう気持ちも大きいんじゃないかな。

だからログリッチが途中で体調崩したりして、チームのディレクションが変わらない限り、ワウトはいわゆるリベロ的な、サッカーでいうところの 自由に動けるような選手的な役割で走らせてもらえるんじゃないかと思ってます。

■2022年ツールの第1週目、かなり厳しいですね?

いくつかポイントになるところがあると思うんです。まずは序盤のデンマークの第2ステージ。もしも強風が吹いた場合、長い橋の区間で、タイム差がついてしまうかもしれない。結構な波乱が起こるかもですよ。

そもそも、例年、ツール最初の1週間は本当に落車が多い。みんな落車したくないから、前に前にと誰もがポジション取りして、道幅いっぱいに走る。そうするとスペースがなくなっちゃうんです。ちょっとしたカーブとか段差とかでハンドル取られて、集団落車、というのが常に繰り返されてきました。

今年は総合系のリーダーにそういう事故が降りかからぬよう願ってます。最初の1週間は、総合系のリーダーは、ぜひ時間を持ってゆっくり走ってほしい。そこで失われたタイムも、後半から取り返すことは可能だと思うので、あんまり無理してほしくない。見てる側としてはこう思います。

今大会設けられた石畳のパリ〜ルーベ区間

今大会設けられた石畳のパリ〜ルーベ区間

でも、ルーベのステージは、戦わないといけないかな。あそこでの遅れは大ダメージにもなるし、落車のリスクもあるので、ポジション取りが必要になってきます。やっぱりそこで勝ち抜いてこそ、生き残ってこそのロードレースなんですけど、それでも、総合を狙うチームのリーダーがここで脱落してしまうようだと、少しスペクタクル要素を超えてしまっちゃいますよね。だから、何もトラブルは起こらず、そのステージに強い選手が勝ってほしいなと。

いや、だって、あんまりじゃないですか。長い時間かけて準備してきたのに、パヴェのレースで脱落してしまったら……残念すぎますからね

ただ、ポガチャルは今年のツール・デ・フランドルであわよくば優勝……という走りをして、最終的に4位に入ってますよね。パヴェの上でも走れるということを証明したので、ポガチャルは上手くこなしてくるんじゃないでしょうか。

■今年のツール・ド・フランス、別府さん個人的にはどんな風に見てほしいですか?

ツール・ド・フランスって、もちろんマイヨ・ジョーヌやマイヨ・ヴェール、マイヨ・ア・ポワというジャージ争いがあるんですけど、1日1日のステージごとにもドラマがあります。選手やチームであったり、コースの場所であったり。毎ステージ、違う見方ができるステージレースなんですよ。だから総合リーダーの動きも見ながら、ワンデーレース的に、1日、1日の動きもしっかり見てもらえると面白いかもしれません。

僕は総合リーダーだったわけじゃないので、リーダーたちの精神状態とかは本当の意味では理解できません。代わりに総合リーダーをケアし、最高のコンディションで前へ送り出そうと奮闘するアシストたちの気持ちは分かります。またツール・ド・フランスという、世界最高峰の舞台で活躍するってどういうことなのかっていうのも、自分で実際に走ってよく理解してます。

ツール・ド・フランスには夢が詰まっています。総合リーダーだけではなく、すべての選手にとって、すべてのチームにとって、ツールは夢の舞台です。だから色々な角度からレースを見て、内側にあるドラマを感じてほしいですね。これが選手目線の気持ちです。

無料動画

別府史之のetape par etape | 第3回 ツール・ド・フランス2022 展望

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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