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【Cycle*2022 クリテリウム・デュ・ドーフィネ:レビュー】ツール前哨戦でユンボ・ヴィスマが全てに圧倒!ツール総合優勝を狙うログリッチ「僕ら2人のうちどちらか1人が勝てる」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか息子と表彰台に上がる総合優勝のログリッチ
手に手を取って、にこやかに、ユンボ・ヴィスマが2022年クリテリウム・デュ・ドーフィネのすべてを圧倒した。区間3勝、マイヨ・ジョーヌ8日間中7日間、総合上位2位独占にマイヨ・ヴェール。約3週間後に迫ったツール・ド・フランスに向けて、プリモシュ・ログリッチとヨナス・ヴィンゲゴー、そしてワウト・ファンアールトは、これ以上ないほどに準備が整っていることを証明した。
「クレイジーだね。チームにとって美しい大会になった。チームメイト1人1人がすごく強かったし、みんな信じられないような仕事をしてくれた。僕らはツール総合大本命として名を挙げられるにふさわしい走りを見せた」(ログリッチ)
序盤6日間は、ファンアールトこそが世界の中心だった。初日に大集団スプリントを制し、軽やかに総合リーダージャージを身にまとった。ただパリ〜ニースでユンボが成功させた初日〜最終日マイヨ・ジョーヌ独占の快挙は、今回は繰り返せなかった。翌日にぎりぎり5秒差で5人の逃げ集団を捕まえそこねて、アレクシー・ヴィエルモに1日だけ黄色い衣を譲り渡してしまうのだ。
それでもファンアールトは、メイン集団内では忘れずきっちりスプリント首位を獲りに行った。7月のツール本番でポイント賞を狙うと宣言するワウトにとっては、おそらくポイント収集の練習も兼ねていた。ちなみに春先の「ミニツール」パリ〜ニースに続いて、「ツール前哨戦」でも最終的な緑ジャージを勝ち取った直後には、「ツール本番では中間ポイント収集も必須となるね」と決意を表明している。
第3ステージの2級山頂フィニッシュでは、ファンアールトは一度は先頭から脱落しながらも、ログリッチ&ヴィンゲゴーの見事な献身のおかげで30人程度の少集団スプリントを争った。ただし両手を挙げかけるも……ダヴィド・ゴデュに虚をつかれた。また第4ステージの31.9kmの個人タイムトライアルでは、2年連続世界チャンピオンのフィリッポ・ガンナに、2年連続世界2位はほんのわずか2秒足りなかった。
1位→6位(集団1位)→2位→2位と恐ろしいほどの安定性を誇ってきたファンアールトは、第5ステージで再び1位の座を取り戻す。2日目のミスを繰り返さず、4人の逃げ集団を残り100mで吸収した。この春のパリ〜ニース初日ではワンツースリーフィニッシュを、続くE3サクソバンククラシックではワンツーフィニッシュを共に祝ったクリストフ・ラポルトの後輪から発射されると、今度こそ間違いなくガッツポーズを突き上げた。
ツールではポイント賞を狙うワウト・ファンアールト
「逃げ吸収のためにチームが最後まで働いてくれたおかげで、僕は勝つことができた。チームメイト6人全員が僕のためだけに尽くしてくれたからこそ、この勝利を心から特別なものに感じる。みんなに感謝しているし、チームのことが誇らしい」(ファンアールト)
5日間レースを席巻してきたファンアールトとユンボ・ヴィスマは、6日目だけは勝負にあえて絡まなかった。マイヨ・ジョーヌとマイヨ・ヴェールを脅かさぬ6人の逃げを、「予定通りに」見逃した。おかげでヴァランタン・フェロンが人生初めてのワールドツアー勝利を手に入れ、3人目のフランス人ステージ優勝に大会開催国は沸き立った。
「この1週間ずっと集団先頭を突っ走ってきたから、少し静かに過ごしたかったんだ。すべてが予定通りに進んだ。明日からは新しいレースが始まる。そして僕らには、プリモシュがいる」(ファンアールト)
こう指名されたログリッチは、「例年とは違って勝つためにドーフィネに来たわけではない」と後に語りながらも、「チーム内にマイヨ・ジョーヌを留めおかねばならない」と奮闘した。第7ステージ、逃げのカルロス・ベローナが人生初勝利をつかみ取ったわずか13秒後に、単独2位で山頂へとたどり着くと、ワウトからジャージを引き継いだ。
しかもログラの独走態勢をお膳立てした「アシスト役」さえ、3位に飛び込むというおまけ付き。つまりヴィンゲゴーは、最終峠で大きく加速を切ると、ライバルたちを恐ろしいふるいにかけた。
2020年ジロ総合覇者テイオ・ゲイガンハートや、昨季のジロ&ブエルタ表彰台コンビ、ジャック・ヘイグとダミアーノ・カルーゾは一気に後方へと蹴落とされた。落車で脚を痛めていた昨ブエルタ総合2位エンリク・マスは、とうの昔に脱落した後。ただ昨ツール総合4位のベン・オコーナーだけが、ユンボの攻勢に最後まで抵抗を試みたが、ログリッチには残り1.5kmの加速一発で振り払われ、ヴィンゲゴーにはフィニッシュライン手前で先行を許した。
過去2年のツール総合2位コンビは、2022年ドーフィネの総合上位2位の座に駆け上がっただけでは満足しなかった。最終第8ステージは、さらに凄まじい猛威を振るう。
最終ステージで2人一緒にフィニッシュするログリッチとヴィンゲゴー
「僕らにはプランがあった。まずは僕がアタックし、プリモシュが僕に続くというもの。他のライバルたちを引き離せるかどうか、確かめたかったんだ」(ヴィンゲゴー)
大会2日目とTT区間を除いて毎日なんらかの形で前に飛び出していたピエール・ロランが、前日すでに山岳ジャージを確定済みにも関わらず相変わらず逃げていたが、ユンボもまた熱心に追走作業に取り組んだ。緑のジャージに着替えたファンアールトも、集団前方で牽引役を務め、最終峠では元ツール総合3位ステフェン・クライスヴァイクが、高速テンポでメイン集団を切り刻んだ。
そして残り5.5km、ヴィンゲゴーがついにプランを実行する。クライスヴァイクが仕事を終えると同時に、ダンシングスタイルで強烈なアタックを打った。ログラは後輪に予定通りに張り付いた。やはり最後までただ1人粘っていたオコーナーには、もはやついていく脚がなく……あとはフィニッシュまで2人きり。
ユンボ・ヴィスマは、これ以上ないほど完璧な形で、8日間の戦いを締めくくった。ヴィンゲゴーが区間を、ログリッチが総合を。手に手を取って、互いの健闘をたたえながら。
もちろん2人は総合でもワンツーフィニッシュを果たした。ログリッチは2つ目の忘れ物を取り返した。最終日に首位から陥落した2021年大会のリベンジを成し遂げたパリ〜ニースに続いて、2020年に総合首位のまま負傷リタイアを余儀なくされたクリテリウム・デュ・ドーフィネで、念願の黄色いジャージを持ち帰った。
3つ目の忘れ物回収……つまりツールの総合優勝へ向けて、データ面でもログリッチに朗報あり。パリ〜ニースとドーフィネを同一シーズンに制覇したのは史上6回目(5人目)の快挙であり、うち5回は同じ年にツール・ド・フランスも制している。興味深いことに、最後にこの3大会同一年制覇を成し遂げたのは2012年のブラッドリー・ウィギンスで、あの年のツールはウィギンス&クリス・フルームのスカイワンツーフィニッシュだった。
「おかげで僕ら2人のうちどちらか1人が勝てるという希望と共に、ツールへ乗り込んでいける」(ログリッチ)
今回はむしろ最終アシスト役にまわりつつ、44秒差の総合2位で終えたヴィンゲゴーも、これには同意見だ。ただしドーフィネ閉幕と同時に始まったツール・ド・スイスや、ピレネーが舞台のラ・ルート・ドキシタニー、さらにはツール2連覇中のタデイ・ポガチャルが出場するツアー・オブ・スロヴェニアに、手強いライバルたちが散らばっていることも理解している。
「正直に言って、ツール本番でワンツーフィニッシュを果たすのは難しいだろう。でも僕ら2人のうちどちらか1人が勝てるよう、戦っていく」(ヴィンゲゴー)
オコーナーはワールドツアー大会で初めての総合表彰台に上がり、やはり互いに助け合いながらバーレーンの2人組が4位と5位に食い込んだ。序盤5日間ワウトとたっぷり張り合ったイーサン・ヘイターが数日間着用した白い新人ジャージは、最終的には昨夏の「U23版ツール」を制したトビアス・ヨハンネセンの手に渡った。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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