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トロフィーを掲げるヒンドレー
世界最高峰のUCIワールドチームを中心に、17年間に渡ってプロの自転車ロードレーサーとして活動し、昨シーズン限りで競技生活を退いた別府史之さん。この5月には、J SPORTSのジロ・デ・イタリア中継でも、リモート解説者としてご登場いただきました。
ジロ開幕前は「解説者としては毎日レースをしっかり追いかけなきゃですね!」と気合を入れていた別府さん、選手生活を離れて初めてのグランツールは果たしていかがだったのでしょうか。
「別府史之のetape par etape(エタップ・パー・エタップ)」第2回目では、終わったばかりの2022年ジロ・デ・イタリアについて振り返っていただきました。
■2022年ジロ・デ・イタリア、どうでしたか?
今年のジロ・デ・イタリアは、この3週間、飽きずに最後まで面白かったです。グランツールってときには平坦ステージが長すぎて、見てる側としては眠くなって少しうとうとしてしまうかも……とか心配してたんですけど、そんなことまったくなかった。連日最後までエキサイティングなレース展開が続きましたし、最後のヒンドレーの逆転劇。「そこで来るか!」とうなりました。
カラパス率いるイネオスが、まさに王手をかけたような状況ではあったにも関わらず、あれぞサイクリングの厳しさ。チームがどれだけ着実に勝利へ向けて準備をしてきても、最後の最後でかわされてしまう。ヒンドレー自身も、2020年は最終日のタイムトライアルで逆転負けを食らってしまったわけですが、その悔しさをぶつけるような逆転劇を見せてくれた。
レースを見てると、この最後の山岳ステージまでは、ヒンドレーは自ら攻撃を仕掛けると言うより、限りなくタイムを失わないような走りをしていましたね。総合に向けて、極めて落ちついて、敵を追い詰める走りでした。
一方のカラパスは自分で真っ先に仕掛けるパターンが多かった。というのは、やっぱりイネオスは、チーム力がすごい。アシストたちが山の終盤までカラパスをいい位置に連れて行き、前へと送り出す、その形が常に作り上げられていた。ただあの形を作られると、エース自身も自らアタックをかけないとチームメイトの仕事に報いることができない、チームメイトが納得してくれない、そんな重圧を感じたのかもしれません。
■アルメイダをみんな恐れすぎた??
驚異的な走りを見せたアルメイダ
その印象はありました。みんな後ろ振り向いては、「おい、まだいる。まだいるぞ!」っていう(笑)。
アルメイダの走りは、僕的にもすごい驚異的でした。何度も、何度も、他のリーダーたちに距離を置かれるのに、ジリジリジリジリとその差をつめる。ずっと2~3秒差ぐらい後ろに位置しているような走り。選手目線で見ると、本来なら、ああいう走りってできないはずなんです。だって風の抵抗もあるし、遅れてしまったということはそれだけパワーが出ないということなので、そのまま遅れていってしまうものなんです。でも彼は自分のペースを守りながら、一定のペースでずーーっと走り続けてました。
大会終盤のエースたちの走りを見てると、常に振り返っては、アルメイダの驚異的な追走能力を確認してましたね。総合陣にとっても彼の走りは驚異的だったんじゃないかなと思います。
その分、彼らは、自分たちではなくて、別の選手を見てたような気はします。ゴールに意識が向かってなかった。牽制しすぎていた。でも、その辺の駆け引きも、見ていてすごく面白くはありました。
■別府さんの選ぶ、今ジロのスーパー敢闘賞とは??
大会を大いに盛り上げたマチュー・ファンデルプール
心情的にはフアン・ロペスにもあげたいですね。序盤にマリア・ローザを着て、最後はヤングライダージャージを着て。ファンを沸かせた1人なんじゃないかと思ってます。
とは言っても、今年のジロを荒らしまわったのは、やっぱりマチュー(ファンデルプール)でしょう。話題性とスター性と強さの全てを持っている選手が、あそこまでレースで暴れちゃったんですから。見ている側としたら、「まだ行くとこじゃないだろ!」「そこで焦るな!」なんて論理的に考えちゃうんですけど、そんな思いを裏切ってパーンとアタックかけちゃうという。「ええっ!!」って思わされる動きが何度もありました。
自転車レースの良さというのは、自由にアタックかけてトライすること。守りに入ってしまうと、見てる方も面白くなくなってしまうので、果敢に責める走りが見られて僕的には楽しかった。多分、プロトン内にいたとしても、「おお〜マチューまた行った!やるね!」って応援したくなっちゃうかもしれないです。後で追うのは大変かもしれないですけど……。
■グランツール「ロス」って選手にもありますか??
グランツールを走り終えると身体もしっかり絞れてるし、実はコンディションは良かったりするんです。やっぱそれだけ距離乗ってきて、登りもこなしてきている。僕もジロ・デ・イタリアを完走した直後にドーフィネに出たこともありますが、調子よかったですよ、実際。
ただ瞬発的なパワーは削られてるかな? だって3週間ずっとペダルまわしてたわけじゃないですか。もちろん普段からトレーニングで1年中自転車には乗ってるんです。でもやっぱりグランツールというのは特別で。足の回転ペースというのが、なんというか、一定になってきちゃうんです。つまり足はよく回るけど、パワーが出ない。
たとえばツール・ド・フランスが終わった後に、プロクリテと呼ばれる興行レースイベントがあちこちで行われるんです。あれってグランツールを走り終えた体にはちょうどフィットするんですよ。一定のペースでくるくる回って、あまりアタックとかもかからない。もちろん時速40kmとか45kmとかの、かなりのハイスピードで走ってはいるんですけどね。ただ、急コーナーの立ち上がりとかは踏みたくない……みたいな。
3週間の「糧」があるので、距離だけなら延々どこまでも走れるんです。身体も走ることを欲しているというか。でも、スプリントやアタックとかがきつい。インターバル的なトレーニングはやりたくないという。
もちろん最初の1週間は、少し休みたいです。いやいや、だらだら寝て過ごしたりとかはしないです。逆に体調がおかしくなっちゃうんじゃないかと思います。だって3週間それだけ長い間走ってきたわけですから。
■次はツール・ド・フランスです!
ジロは終わりましたが、サイクリングシーズはこれからまだまだ続きます。なにより7月のツール・ド・フランスに向けて盛り上がっていく時期です!
前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネは自分の自宅近くでもステージがあるので、僕も実際にレースを見に行こうかな。ツールもどこか近くのステージは行きたいな、なんて考えてます。この先もみなさん一緒にレース楽しんでいきましょう!!
★YouTube動画ではギルマイ選手のこと、さらには第18ステージの逃げ切りについても語っていただいてます!そちらも併せてチェックしてみてください。
無料動画
別府史之のetape par etape | 第2回 ジロ・デ・イタリア2022振り返り
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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