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【Cycle*2022 クリテリウム・デュ・ドーフィネ:プレビュー】アルプスが舞台のツール前哨戦。ユンボ・ヴィスマはログリッチとヴィンゲゴーのダブル総合エース体制で挑む!
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかアルプスが舞台の8日間のステージレース
夏が大またで近づいてくる。来るツール・ド・フランスに向けて、選手たちは最後の仕上げに取り掛かる。アルプスが舞台の伝統的な前哨戦、クリテリウム・デュ・ドーフィネの8日間は、チームメイトとの連携を確認し、チーム内のセレクションに勝ち残るためにアピールし、なによりライバルたちの調子を探るための絶好の機会でもある。7月を睨んだ駆け引きは、もう始まっている!
コース上で選手たちを待ち構えるのは、大小のたくさんの起伏たち。開催委員会の示す区間カテゴリーに、「平坦」の文字はない。なにしろ第1ステージはいきなり2級峠登坂から始まるのだ!
フランス本土で最も野趣あふれるアルデッシュ県からスタートし、細かいアップダウンで知られる中央山塊で過ごす序盤3日間は、いわゆる中級山岳ステージが用意された。パンチャーたちは大喜び。上れるスプリンターたちにも要注意。特に春の「ミニツール」パリ〜ニースを席巻したユンボ・ヴィスマのワウト・ファンアールト&クリストフ・ラポルト2人組が、またしても凄まじい脚力を発揮してしまうかもしれない。
第3ステージには今大会初の山頂フィニッシュが立ちはだかる。将来的に「男女どちらかのツール区間を開催したい!」と願うシャストレ・サンシーのスキー場が、2級峠として、初めて大きな国際大会に登場する。コース半ばにはロマン・バルデの実家近くを通過するが、ジロを体調不良で途中棄権したフレンチクライマーは、残念ながら今大会は欠場予定。
一方で「クレルモン・フェランのTGV」は、超特急で駆けつけるに違いない。クレルモン・フェラン生まれのレミ・カヴァニャにとって、地元からそれほど遠くない土地で、得意な個人タイムトライアルステージが行われるのだ。しかも第4ステージは、全長31.9kmの、いわゆるスペシャリスト向きのコース。つまり世界王者フィリッポ・ガンナにとっても、絶好の勝機となるわけだけれど……。もちろん総合争いの選手たちは、約37分の全力疾走で、タイムを失わぬよう気をつけなければならない。
第5ステージで美味しいワインの産地を巡り、翌6日目にはいよいよアルプスの入り口へとたどり着く。もちろん2日間共に複数の山岳が点在し、赤玉ならぬ「青地に白玉」ジャージを狙うなら、積極的に逃げておきたいところ。
そして、大会最後の2日間で、ついに難関山岳バトルが勃発する。ここまで細かいアップダウンを繰り返してきた選手は、まずはアルプス屈指の巨大峠に真正面から挑みかからねばならない。
なにしろ土曜日の第7ステージでは、選手たちは、スタート直後から超級ガリビエへと上り始める。延々23km登り続けた果てに、標高2642mの今大会最標高地点に達したら、ステージ終盤に超級クロワ・ド・フェールの全長29kmのいつ終わるともしれぬ山道も待っている。
締めくくりはヴォジャニーへの2級登坂。2016年大会第5ステージでは、まさにここでフィニッシュが争われ、山頂ではクリス・フルームが両手を挙げた。同時に黄色いジャージを手に入れ、そのまま6月はもちろん、7月の最後まで身にまとうことになった。そんな思い出の地で、37歳になったフルームは、どんな走りを見せるのだろうか。
ただし感傷に浸っている暇はない。上り距離はとてつもなく長いが、ステージ自体は135kmの極めて短距離である上に、ツールで総合を争うつもりの選手にとっては、この第7ステージはいわゆる大切な「下見」の機会でもある。実は2022年ツール第12ステージは、スタート地がほんの5kmほど違うだけで、その後はヴォジャニーの登坂口近くまで同じコースを使用する。本番7月14日は、2級峠ではなく、超級ラルプ・デュエズでのフィニッシュだ。
ドーフィネの超級フィニッシュは、最終第8ステージにやってくる。またしても0km地点から1級へとアタックするこの日は、やはり139kmと短距離ステージ。4つの山と2つの谷間で、展開の早い戦いが繰り広げられるに違いない。なにより超級プラトー・ド・ソレゾンの破壊力はとてつもなく大きい。全長11.3kmの山道は、平均勾配は9.2%と険しく、序盤4kmは10%を超える。
逆転をもくろむ選手にとってもチャンスあり。というのも大会最後の2峠、つまり1級コロンビエールと超級プラトー・ド・ソレゾンの連続登坂は、2017年大会ですでに最終日逆転を演出している。しかもヤコブ・フルサンがひっくり返したのは、なんと1分15秒もの大差だった。
今年のパリ〜ニースを制したログリッチ
難度がぎゅっと凝縮された8日間には、当然のようにツールの総合本命たちが肩を並べる。中でも注目したいのはユンボ・ヴィスマのダブル総合エース体制。2020年ツール総合2位(ブエルタ3連覇中)プリモシュ・ログリッチと、2021年ツール総合2位ヨナス・ヴィンゲゴーとの、今年2度目のステージレース共闘は果たして上手く機能するだろうか。
またバーレーン・ヴィクトリアスは昨季グランツール表彰台に上ったダミアノ・カルーゾ&ジャック・ヘイグで、グルパマ・エフデジは2年前のブエルタ山頂2勝ダヴィド・ゴデュ&昨ブエルタ山岳賞マイケル・ストーラーで、総合争いに挑む。ちなみにユンボとバーレーンがツールでも同じダブルエース制を採用するのに対して、7月のグルパマはティボー・ピノを加えたトリプルエース制になる予定。
つい1週間前までジロでジェイ・ヒンドレーの総合勝利を支えた2020年ジロ総合3位ウィルコ・ケルデルマンや、ヒンドレーと同郷パース出身で、今度は自分が、と闘志に燃える昨ツール総合4位ベン・オコーナーもやってくる。ジロはわずか4日目にリタイアを余儀なくされたミゲルアンヘル・ロペスは、今大会から再びツールへ向けて調子を上げていきたい。そのロペスの昨季の同僚、エンリク・マスも、今季最大の目標=ツール表彰台乗りに向けて、前哨戦から気合を入れる。
また今年のツールへは出場しないけれど、昨U23版ジロ総合覇者の19歳フアン・アユソや、昨ラヴニール総合覇者トビアス・ヨハンネセンのツール前哨戦での戦いぶりを……近い将来に備えて改めてチェックしておきたい。
ところで肝心のツール・ド・フランス2連勝中のタデイ・ポガチャルはと言えば……6月はいつもどおり祖国に帰る。コロナ禍でシーズンが中断された2020年を除いて、2017年以降欠かさず出場を続けてきたツール・ド・スロヴェニアを走るためである。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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