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サイクル ロードレース コラム 2022年4月19日

【Cycle*2022 ラ・フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】最大勾配26%の激坂決戦!熟練のバルベルデやアラフィリップを相手にポガチャルが初の戴冠なるか

サイクルロードレースレポート by 辻 啓
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ユイの壁

ユイの壁をよじ登るプロトン

激坂と呼ばれる登りは数あれど「ユイの壁」ほどその表現が最も適切な登りは他にない。今年もラ・フレーシュ・ワロンヌが最大勾配26%の激坂に至る202.5kmコースで開催。爆発的に加速するクライマーたちが短時間高強度バトルを繰り広げる。

レース名が「ワロンを貫く矢」を意味する通り、ベルギー南東部ワロン地域の人口2万人の町ユイに至るコースはアップダウンの連続。ワロン最大の都市リエージュ近郊をスタートする2022年の86回大会は、119.1kmのライン区間を経てユイ周回コースに入る。そこから起伏に富んだ31.2kmの周回コースを2周半。フィニッシュラインが引かれているのは、1984年以降ずっと変わらない「ユイの壁」のてっぺんだ。

ユイ周回コースのコート・デレッフ(全長2,100m/平均5%)は継続だが、過去2年間使用されたフィニッシュ10km手前のコート・ド・シュマン・デ・ギーズ(全長1,800m/平均6.5%)は取り除かれた。代わりにコート・ド・シュラーブ(全長1,300m/平均8.1%)が残り5.7km地点に復活。いずれにしてもこれらの断続的な登りと下りで絞り込まれ、疲弊した集団が最後のユイの壁(全長1300m/平均勾配9.6%)に挑むことになる。

あまりにも「ユイの壁」が厳しすぎるが故に、たとえ逃げグループがメイン集団に対して1分差で登坂を開始しても逃げ切れるとは限らない。事実、逃げグループからの勝利は2003年のイゴール・アスタルロア以来果たされていない。思わず「ちゃん付け」で読んでしまいそうな「ユイ」という可愛い名前に騙されてはいけない。

心肺と筋肉が悲鳴をあげるラスト1kmからフィニッシュラインまでの所要時間は2分45秒前後。勝負はこのラスト数分間で決まるが、かと言って「ラスト数分間だけ見ればいい」というレースではない。周回コースの横風区間で勝負を落とすこともあるし、ポジション取りの悪さからくるインターバルの繰り返しで脚を使ってしまってるかもしれない。いかにトラブルなくフレッシュな状態で最後の数分間に挑めるかが勝負に鍵となる。

フラムルージュ(残り1kmアーチ)を経て徐々に増す勾配は、ワロン地域出身で1985年と1989年の優勝者から名前をとった「クロード・クリケリオン コーナー」でピークの26%に達するが、ここで動いてもまだフィニッシュまで400mあるため失速するのが常。熟練の勝負士たちは集団前方でこの連続コーナーを抜けた先、フィニッシュまでおよそ200mを切ったあたりで一気に仕掛ける。すべては集団内のポジションと仕掛けるタイミング。クライマーの中でも、長時間一定出力を出し続けるのが得意なディーゼルエンジン系ではなく、爆発力なパワーを短時間出力するターボエンジン系つまりパンチャー系の選手に有利なレイアウトだ。

参考までに、パリ〜ルーベ出場選手の平均体重が74kg前後だったのに対して、ラ・フレーシュ・ワロンヌ出場選手の平均体重は66kg前後。各チームともに横風を警戒して大柄な選手をメンバー入させているため、表彰台に登る選手に限定するとその平均体重は62kg前後まで下がる。ざっくりと言ってパリ〜ルーベのそれより20kg近く軽い。

最年長選手であり、15回の最多出場で、しかも歴代最多5回勝っているアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)にとっては最後のユイ登坂になる。4月25日に42歳の誕生日を迎える師匠ことバルベルデは2022年が自身最後のシーズンと宣言しているが、2021年に3番手でユイの壁を登り切っていることからもわかるように、決して力が落ちているわけではない。

2020年大会のタデイ・ポガチャル

2020年大会に出場したタデイ・ポガチャル

誰よりも勝ち方を知っているバルベルデの最多記録更新に注目が集まるが、絶好調なツール・ド・フランス覇者の前には通用しないかもしれない。グランツールだけでなく精力的にワンデークラシックのタイトルを狙い、今年ミラノ〜サンレモとロンド・ファン・フラーンデレンで圧倒的な登坂力を披露(結果は5位と4位)したタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が2年ぶりにユイに挑戦する。新型コロナウイルスの影響で9月に開催日を移した2020年大会は9位で、2021年は優勝候補に挙げられながら新型コロナウイルスの陽性者がチーム内に出たため欠場した(その後のリエージュで優勝)。2020年大会の優勝者マルク・ヒルシをはじめ、UAEチームエミレーツには自分でも勝利を狙えるアシスト陣が勢揃い。チーム力と登坂力では頭一つ二つ抜け出ている。

前回大会で優勝したジュリアン・アラフィリップ

優勝した前回大会レース直後のアラフィリップ

これまで3回勝っているディフェンディングチャンピオンのジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・アルファヴィニル)は1週間前のブラバンツペイルを途中リタイア。世界チャンピオンはコンディションが上がり切っていない印象もあり、初出場レムコ・エヴェネプールの指南役を買って出ることになるかもしれない。とにかくクイックステップ・アルファヴィニルは春のクラシックで低迷しているだけでなく、シーズンの勝利数でUAEチームエミレーツとイネオス・グレナディアーズに先を越されており、パトリック・ルフェーブルGMの堪忍袋が切れないうちに結果を残さないといけない。

アムステルゴールドレースとブラバンツペイルに続いて念願のパリ〜ルーベ制覇を果たし、春のクラシックシーズンで快進撃を続けているイネオス・グレナディアーズは、これまで4回トップ10フィニッシュ(最高位は2014年の3位)しているミハウ・クフィアトコフスキを軸に、ダニエル・マルティネスやトム・ピドコックという役者を揃えてきた。ここにヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ)やマイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)、ブノワ・コスヌフロワ(アージェードゥーゼール・シトロエン)といった面々が加わって、熾烈な激坂バトルを繰り広げることになりそうだ。

文:辻啓

代替画像

辻 啓

海外レースの撮影を行なうフォトグラファー

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