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サイクル ロードレース コラム 2022年4月19日

【Cycle*2022 ジロ・デ・シチリア:レビュー】驚異の「アッズーリ旋風」 4日間に人生を賭けた男たちがシチリアの英雄カルーゾに勝利をもたらす

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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フジェフェルソン・セペダ / ダミアーノ・カルーゾ / ルイス・メインチェス

表彰台中央のダミアーノ・カルーゾ

これからの競技人生、生活、そして人生がかかっていた。所属チームの垣根を越えて集められた7人の男たちは、主催者特権で出場が認められる地元ナショナルチームとしてシチリア島へと乗り込んだ。

メンバー中5人が事実上無所属の選手たち。ロシアによるウクライナ侵攻で、同国籍だったガスプロム・ルスヴェロに所属していたイタリア人選手たちは、国際自転車競技連合(UCI)の決定によってチームの資格が停止するとともに、レース出場の機会がなくなっていた。

彼らには、無資格となったチームが新たなスポンサーを獲得することによる状況の変化を待つか、自ら新たな所属チームを探すしかプロシーンで競技を続ける方法はない。なかには「キャリアを終える」という究極の選択まで視野に入れている選手までいる。

だから必死だった。イタリアンカラーの青一色に染められた代表ジャージにすべてを乗せ、第1ステージから己の存在を誇示した。ともすれば早まったアクションに走りかねないメンバーをまとめるため、首脳陣は日頃バーレーン・ヴィクトリアスで走るダミアーノ・カルーゾを召喚。昨年のジロ・デ・イタリアで個人総合2位と躍進したシチリア島出身のスターをキャプテンに据え、意気に感じたカルーゾ自身もこの大会の個人総合優勝を目指しながら、無所属組の走りをサポートした。

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そうして気持ちが1つになった「アッズーリ」(イタリア代表チームの愛称)は、すぐにプロトンの主導権を握った。第1ステージでは最終局面で前線を固めると、マッテオ・マルチェッリを発射。行き場をなくしている28歳のスプリンターの勝利は、チームに勇気と希望を与える大きな光となった。

「これがプロキャリア最後の勝利にならないことを祈っている。チーム(旧ガズプロム・ルスヴェロ)の再生につながれば、よりうれしい」(マッテオ・マルチェッリ)

丘陵地帯に入った第2ステージでさらに勢いを増した。終盤の長い上りで二コラ・コンチとアレッサンドロ・フェデーリがペースを上げて集団の人数を減らすと、最後は“御大”カルーゾが総合系ライダーたちによるフィニッシュ勝負を制してリーダージャージを受け取った。

勝利を喜ぶカルーゾ

勝利を喜ぶカルーゾ

第3ステージこそ逃げ切りを許し、ジャージを手放したアッズーリだったが、「もともとエトナの上りに集中していた」とカルーゾが語った通り、大会最後にやってくるシチリアの名峰でもうひと勝負に出た。獲得標高3500mにも及んだ1日は、2回のコントラーダ・ジウラーナ峠を経て、全長17.4kmのエトナ登坂で総決算。ここで決めたのは、やはりカルーゾだった。無所属組のお膳立てによって終盤まで脚を残すと、「残り7kmで周りがどんな様子か見てみようと思って、軽くアタックしてみたんだ」と余裕まで見せて。

ジャブを打ってライバルの走りをうかがうと、きっちり勝負どころを見極めて頂上を前に独走態勢に持ち込んだ。カルーゾにとっては勝手知ったる上りだったとはいえ、今回ばかりはただの1勝ではない。キャリアの灯を消さぬまいと懸命に走る後輩たちに報いる、いつもとは異なる価値の勝利だった。

「私のために働いてくれたメンバーみんなに捧げる個人総合優勝だよ。彼らはそれに値するくらいの走りをしてくれだんだ」(ダミアーノ・カルーゾ)

この言葉がすべてを物語っているといえよう。彼らはまだ走れる。プロトンの一員であるべきだということを。

連覇はならなかった二バリ(写真左)

連覇はならなかった二バリ(写真左)

シチリアの栄に浴したアッズーリの陰に隠れる格好となってしまったとはいえ、先に待ち受けるグランツールへ好感触を得た選手たちの様子も見受けられた。個人総合2位に食い込んだジェフェルソン・セペダはジロ・デ・イタリアでの走りが期待できそうだし、過去2回ツール・ド・フランスの総合トップ10入りを果たしているルイス・メインチェスもエトナを2番目で上ってみせて健在ぶりをアピール。島の英雄ヴィンチェンツォ・ニバリは大会2連覇こそならずも個人総合4位とまとめて、同様にシチリア島を走るジロへ好感触。

また、UCIワールドチームから同コンチネンタルチームまで幅広いチームが集うレースには、ワールドツアーとは違った楽しみも満載。特にニュースター候補の走りが見られるチャンスで、実際に19歳のフラン・ミホリェビッチが見せた第3ステージでの大逃げは、世界にその名をとどろかせるには十分すぎる走り。父・ウラディミールも元トッププロ選手で、現在はバーレーン・ヴィクトリアスの監督。そうしたバックボーンからも、将来は約束されたようなもの。日本人選手4人をそろえたEFエデュケーション・NIPPOは、第1ステージで岡篤志がスプリントにチャレンジし、第2ステージでは門田祐輔が逃げグループにジョイン。織田聖、津田悠義もメイン集団内で走るシーンがたびたび国際映像で取り上げられるなど、しっかりと存在を示した。


文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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