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【Cycle*2022 パリ~ルーベ:プレビュー】我らが新城幸也も初参戦!蘇った春の地獄巡りが真の強者を選び出す
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか選手を苦しめるパヴェ(石畳)
復活祭を祝う日曜日に、春の地獄巡りが蘇る。荒れた石畳が魂と肉体を激しく痛めつけ、壮絶なるパッションーー受難と情熱ーーの終わりに、天国への門へとたどりつけるのはただ1人だけ。秋の泥んこ大戦からわずか6か月。3年ぶりの「春」パリ〜ルーベが、今季最後の石畳戦として、審判を下す。
フランス大統領選挙の関係で、アムステル・ゴールドレースと順番を入れ替え、シーズン3つ目の「モニュメント」は例年より1週間遅い開催だ。それ以外は、ほぼ完全に、コロナ禍以前のいつもの姿を取り戻す。沿道でのワクチンパス検査は解除され、国境を越えて、お隣ベルギーからは大量の熱狂的なファンが帰ってくるはずだ。明るい太陽の下で、もうもうと立ち込める砂埃とも……懐かしい再会を果たすことになりそう。
パリ北部のコンピエーニュから、フランス北部ルーベの屋外自転車競技場まで。全長257.5kmのコース序盤は、しかしアスファルトの道をひたすら北上する。本物の激闘が始まるのは、スタートから96.3km地点で、いよいよ最初の石畳セクターに飛び込んだ瞬間から!
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レース詳細情報 | サイクルロードレース | J SPORTS【公式】
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以降、フィニッシュまでの行程の約3分の1で、選手たちはパヴェに苛まれることになる。全部で30の石畳セクターは、通算54.8kmに渡って繰り返し襲いかかる、日々トラクターが往復するせいで恐ろしくデコボコな農道もあれば、市街地のお上品なペーブメントだってある。
中でも3つのセクターが、開催委員会から「5つ星=最難関」の評価を下された。まずは161.9km地点で突入する、第19セクター(最初から12番目)のトゥルエ・ダランベール。
つまりアランベールの一本道には、絶対に先頭で突入せねばならない。なにしろ鬱蒼とした森を突っ切る全長2300mの直線路は、いつでもじんわり湿っていて、どころどころに雑草が顔を出し……そのくせ序盤が微妙な下りのせいでとてつもなく高速が出る。しかも両脇にフェンスが張り巡らされているせいで、どこにも逃げ場はない。もしも目の前でメカトラや落車が発生したら、その瞬間、戦いは完全に終了する。
フィニッシュまで48.6km地点から始まる第11セクターのモン・アン・ペヴェールは、全長3kmと、屈指の長さを誇る。畑のど真ん中に敷かれた石畳は、いつだって土にたっぷり覆われている。ほんの微妙ながらアップダウンが繰り返され、道はつねにくねくねとうねり、しかも鋭角カーブも2ヶ所登場するから厄介だ。ハンドル捌きとブレーキタイミングのミスは、間違いなく命取りとなる。
そして、クライマックスは、カルフール・ド・ラルブル。すでに240kmも走り続け、石畳の振動を約50kmも耐えてきた選手たちにとって、第4セクター・全長2100mの石畳こそが勝利の分かれ道だ。
いくつものうねりと、直角カーブと、その先に続く長い直線。前半は舗装状態があまりに最悪で、走行可能なラインに誰もが詰めかけ、長い一列棒状になることもしょっちゅう。後半はバーベキューの香りと、耳をつんざくようなクラクションと歓声と、両脇に壁のように連なる大量の興奮し切った観客たち。あまりのカオスで、時に選手は周囲の状態が一切分からなくなるという。
前回大会王者のソンニ・コルブレッリ
ライバルたちとの攻防に生き残り、あらゆる石畳上での不運を跳ね除けても、しかし戦いは終わりではない。パリ〜ルーベの勝敗は、いつだって自転車競技場で決するのだ。過去10大会で7回が、2〜6人の少人数スプリントで締めくくられてきた。
昨秋、まさに3人の競り合いを制したのが、ソンニ・コルブレッリだった。しかし現役欧州チャンプは、3月21日のカタルーニャ一周初日のレース直後に一時心肺停止状態に陥った。その後、皮下除細動器の埋め込み手術を受たコルブレッリは、残念ながら「テレビでルーベを観戦する」ことになる。
2018年覇者ペーター・サガンも、体調不良のため欠場を選んだ。また今シーズンのクラシックの「台風の目」タデイ・ポガチャルは、この夏の石畳戦@ツールに向け試走には出かけたが、さすがにルーベ本番には登場しない。
もちろんマチュー・ファンデルプールは大本命としてやってくる。フランドル2連覇中の石畳巧者は、あまりに悔しすぎた昨大会3位のリベンジを果たすため、あらん限りの攻撃を仕掛けてくるはずだ。
優勝候補の一人マチュー・ファンデルプール
そのフランドルをコロナ陽性で欠場したワウト・ファンアールトも、2週間の猶予があったおかげで、無事にスタートできそうだ。果たしてシクロクロス時代から続く「マチューvsワウト」の因縁対決へと、発展するだろうか。病み上がりの本人は、むしろ今季の相棒クリストフ・ラポルト支援に徹すると宣言する。
クイックステップ・アルファヴィニルにとっては、まるで良いところのなかった2022年石畳シーズンを救う、文字通り最後の機会となる。元フランドル覇者カスパー・アスグレーンと元ジュニア版ルーベ覇者フロリアン・セネシャルを中心に、ウルフパックがウルフパックたる所以を証明せねばならない。
やはりマッズ・ピーダスンもジュニア時代に小さな石畳トロフィーを手にしているし、フィリッポ・ガンナはアンダー時代に、やはり年代別ルーベを勝ち取った。狙うは大きな大人用の石畳トロフィーだ!
またE3表彰台、フランドル6位、アムステル8位とこの春素晴らしい快進撃を続けるシュテファン・キュングは、長年目標に掲げてきたルーベをついに勝ち取る準備はできている。一方でサンレモ2位と好調にクラシック月間に乗り込みながらも、落車でフランドルとアムステルを途中棄権したアントニー・テュルジスは、「勝利をイメージしながら」ルーベのスタートを切る。
グレッグ・ファンアーヴェルマート、フィリップ・ジルベール、ジョン・デゲンコルプ、ニキ・テルプストラといった大ベテランの元ルーベ覇者も勢揃い。序盤からの大逃げで2位に食い込んだフロリアン・ヴェルメールシュ、ニルス・ポリッツ、シルヴァン・ディリエも、再びの快挙を夢見て走り出す。
コルブレッリ不在のバーレーン・ヴィクトリアスは、今ミラノ〜サンレモ覇者のマテイ・モホリッチ中心に北の地獄へと攻め入る。なんと我らが新城幸也も……37歳で初めての地獄ツアーへ参戦だ!
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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