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サイクル ロードレース コラム 2022年3月18日

【Cycle*2022 ミラノ~トリノ:レビュー】《マン島特急》こと36歳マーク・カヴェンディッシュが大会史上最年長王者に!「これぞ僕がよく知るウルフパックだし、彼らの一員であることが誇らしい」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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仲間の完璧なリードアウトで勝利を掴んだカヴェンディッシュ

仲間の完璧なリードアウトで勝利を掴んだカヴェンディッシュ

プロ生活15年目、プロ159勝目にして、36歳のマーク・カヴェンディッシュが真新しいタイトルを手に入れた。スプリンターのために生まれ変わった世界最古のレースで、史上初の英国人勝者として名を刻み、同時に大会史上最年長の覇者となった。

「僕はレースを勝つのが好きなんだ。それがなんだって構わない。すでにミラノ〜サンレモは制したけれど、今こうしてミラノ〜トリノも勝った。それほど多くのスプリンターにできることじゃない。だってこれまでは起伏のレースだったんだからね。こうして過去の大会勝者の横に、僕の名前が書き込まれるというのは、かなりスペシャルなことだよね」(カヴェンディッシュ)

1年前はプリモシュ・ログリッチの登坂勝利を祝ったというのに、この日のレースは、大集団スプリントフィニッシュへ向けて走り出した。スタート直後からスプリンターチームが厳しくレースを監視下に置いた。30km近い攻防の果てに、逃げを許されたのはたったの3人だけだった。

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つまり地元イタリアから参加した小さな3つのプロチームが、それぞれに1人ずつ前に送り出し、その背後では、巨大なワールドチームたちがこぞって牽引作業を引き受けた。エーススプリンターを勝たせるために、多くのチームが、作業分担を厭わなかった。

特にアレクサンダー・クリストフ擁するアンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオや、ナセル・のアルケア・サムシックが、クイックステップ・アルファヴィニルと共にせっせと先頭交代に励んだ。3人の逃げは最大4分ほどのリードを広げたが、健気なジャージアピールはフィニッシュ手前20kmで静かに終わりを告げた。

大胆な賭けを試みた者がいなかったわけではない。ヒュー・カーシーとエステバン・チャベスというグランツール級クライマーと、アルベルト・ベッティオルというツール・デ・フランドル元覇者は連れてきたけれど、勝てるスプリンター不在のEFエデュケーション・イージーポストが……残り17kmでタンデムアタックを仕掛けたのだ!ベッティオルが後輩引き連れ飛び出し、それからベン・ヒーリーが独走態勢に入った。

最初の逃げこそ力を合わせて吸収したプロトンだったが、このときばかりは少々共闘体制が乱れた。カヴ擁するクイックステップに、誰もがすべての責任が押し付けた。しかも21歳のタイムトライアル巧者は、粘り強く、手ごわかった。残り15kmで10秒だったタイム差は、残り10kmで15秒に開いた。

幸いにも、ウルフパックに、レミ・カヴァニャが戻ってきた。12月の大事故からの復帰一戦目だというのに、フランスチャンピオンは、かつてと変わりないパワフルな牽引を披露した。満を持して残り6kmで先頭に立つと、わずか2kmでヒーリーを引きずり下ろしてしまったほどのすさまじい威力だった。

「僕には力強くやる気に満ちたチームメイトがついていた。それが違いを生んだんだ。みんなは信じられないような走りを見せた。レースを1日中コントロールし、おかげで僕は落ち着いて過ごすことが出来た。これぞ僕がよく知るウルフパックだし、彼らの一員であることが誇らしい」(カヴェンディッシュ)

ついにプロトンは大きな1つの塊になった。直後にロータリーとカーブの多いラスト3kmに入ると、目まぐるしくポジション争いを繰り広げた。特にラスト400mの最終コーナーまで、新加入ペーター・サガンを連れたトタルエネルジーと、ブアニを引くアルケアとが、勢力的に攻め立てた。

しかしコーナーを抜け出し、ラストストレートに入った直後に、ミケル・モルコフが主導権を握った。かつてエリア・ヴィヴィアーニやサム・ベネットの大量勝利を補佐し、昨夏はツールでカヴの区間4勝をお膳立てした直後に東京で自らマディソン金メダルを獲得……という世界屈指の発射台が、パーフェクトな速度で先頭を駆け上がっていく。

他チームのエーススプリンターたちが、慌ててモルコフの動きに追随する一方で、後輪につけていたカヴェンディッシュはただ、体を小さく丸めて、自らのタイミングを待つだけでよかった。約200mで誰よりも先に加速を切り、残り150mで先頭に立った。すべてが後手後手のライバルたちを尻目に、悠々と勝利をさらい取った。

トロフィーを持つカヴェンディッシュ

トロフィーを持つカヴェンディッシュ

「モルコフと再びやってのけた。チームと上手くはまった。ワンデーレースでは、とにかく完璧にはまらなきゃならないんだ。だってチャンスは1度しかないんだから」(カヴェンディッシュ)

これまでプロ人生、すでに37の異なるレースで両手を挙げてきた「マン島特急」が、自らの勝利リストにミラノ〜トリノを書き込んだ。イタリアでの勝利は8年ぶり。この5月に……なんと9年ぶりに出場予定のジロ・デ・イタリアに向けて、大きな弾みになったに違いない。ちなみにツールではエディ・メルクスと並ぶ史上最多区間34勝を誇るカヴだけれど、ジロも過去5回出場で区間15勝という凄まじい戦績を有している。

2位には31歳ブアニが飛び込み、34歳クリストフがハンドルを投げ3位。つまり若手台頭が著しい昨今の自転車界だが、30代のベテラン3人が表彰台に上がり、健在ぶりを見せつけた。ティレーノ〜アドリアティコを体調不良でリタイアした32歳サガンも、新しいチームの新しい列車に乗って、5位に食い込んでいる。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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