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サイクル ロードレース コラム 2022年3月15日

【Cycle*2022 ミラノ〜トリノ:プレビュー】現存する最古の自転車レースが再び春に完全復活!伝統と新たなアイデンティティを身にまとう全長199kmのレースに名だたるスプリンターが集結

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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プリモシュ・ログリッチが前回大会を制した

プリモシュ・ログリッチが前回大会を制した

秋の急坂フィニッシュから、春の平地クラシックへ。まるで正反対のレースへと生まれ変わったミラノ〜トリノが、スプリンターたちを誘い出す。わずか3日後に控えるミラノ〜サンレモへ向けて、最後の足慣らしの機会となる。

「現存する最古のクラシック」であるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュよりも、さらに16年早い1876年に産声を上げた「現存する最古の自転車レース」は、決して気まぐれで日程を変えたのではない。あくまで輝かしい「伝統」に立ち返ったのだ。

そもそも、開催時期を変えることすら、ミラノ〜トリノにとっては伝統のひとつ。第1回大会は5月に執り行われた。17年後に行われた第2回大会は6月で、1911年からしばらくは春と秋とを行ったり来たり。ただし1919年以降は春に固定され、1937年頃から「サンレモの数日前〜10日前」に定着した。トリノで表彰台に上った選手が、サンレモでも表彰台に上がることもしばしば。1957年は両大会ともに1位がミゲル・ポブレトで、2位がアルフレド・デブルイネだった。

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1975年からまたしても秋と春で揺れ始める。そして1987年、当時の開催委員会は、秋で腰を落ち着けることに決めた。理由はずばり、3月序盤〜中旬は天気が悪すぎるから。こうして落ち葉の舞い散る季節の恒例行事となり、直後に行われるグラン・ピエモンテ、さらにはイル・ロンバルディアと合わせて「トリティコ・ディ・アウトゥンノ(Trittico di Autunno、秋の3連作)」と呼ばれることに。

UCIプロツール(現ワールドツアー)が導入され、レースカレンダーが世界的に再編成された2005年に、再び春への復活を試みた。しかし2007年にモンテ・パスキ・エロイカ(現ストラーデ・ビアンケ)が誕生したことで、2008年にまたまた秋へと引っ越しを企て……そのままなし崩しに消滅。ようやく2012年に、秋で復活を果たした。

復活と同時に、それまでコース最終盤に組み込まれていた平均勾配9%超のスペルガ坂が、フィニッシュ地として選ばれた。当然、激坂巧者たちがこぞって脚試しに訪れるようになり、コンタドール、ウリッシ、カルーゾ、ロペス、ウラン、ピノー、ウッズ、ログリッチetcとため息の出るような名前が勝者リストに連なった。

ところが、である。新型コロナウイルス禍によるシーズン中断で、2020年は8月5日に開催。そう、ミラノ〜サンレモの3日前だった。それに合わせコースもスプリンター向けに調整し直し、平坦に。さらにはトリノでスプリント3位に飛び込んだワウト・ファンアールトが、サンレモでは勝利をつかみ取っている。

そして2022年。開催委員会は春への完全復活を決意した。ティレーノ〜アドリアティコの日程をわざわざ前に倒してまで、ミラノ〜トリノをサンレモの3日前に挟み込んだ。ちなみにティレーノ最終日に、約10年ぶりにスプリントステージを用意したのも、もしかしたら世界で唯一の「スプリンターズモニュメント」に対する主催者側の戦略なのかもしれない。

平坦な道をひたすら突き進む

平坦な道をひたすら突き進む

全長199kmのコース上に、特筆すべき起伏はひとつも存在しない。例年通りミラノ西郊外のマジェンタから走り出すが、荘厳なスペルガ聖堂への参道登山は、もちろん廃止された。

ただ新たなフィニッシュ地、トリノ西郊外のリヴォーリには、イタリア王室サヴォイア家の王宮が建つ。なんでもこの王宮のてっぺんから、遠くを眺めると……眼前にまっすぐ伸びるのは全長12kmのコルソ・フランシア(フランス通り)。そして、その線上にあるのは、まさしくスペルガの丘!

このコルソ・フランシアで、スプリントフィニッシュが繰り広げられる。プロトンはこの長く真っ直ぐな道に、ラスト300mほどで突入する。つまり最終3kmからは4つのロータリーが連続で登場し、残り1kmで2度の急カーブをこなさねばならない。

伝統に立ち返り、しかし新しいアイデンティティを身にまとうミラノ〜トリノ。14のワールドチームを含む全20チームが参戦する。マッテオ・モスケッティやアルベルト・ダイネーゼ、ニッコロ・ボニファツィオ、アンドレア・ヴェンドラーメ等々のイタリア人スプリンターにとっては、再び大会が方向転換してしまう前に……威厳あるタイトルを手に入れる絶好のチャンスとなる。

マーク・カヴェンディッシュにとっては、プロ生活16年目にして初めての参戦だし、9年前にスペルガ山頂フィニッシュを勝ち取ったディエゴ・ウリッシは、たとえ平地だろうが同大会に乗り込んでくるらしい。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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