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サイクル ロードレース コラム 2022年3月11日

スペアバイク満載が勝利の秘訣?ガンナの今後の挑戦に注目

サイクルロードレースレポート by 辻 啓
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フィリッポ・ガンナ

ティレーノ〜アドリアティコ 第1ステージ を制したフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)

「チームカーに何台スペアバイク積んでるねん!」

ティレーノ〜アドリアティコ第1ステージの個人タイムトライアルを視聴された方はきっとテレビ画面に向けてこうツッコんだはず。トップタイムで優勝したフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)の後ろを走るメルセデスのルーフキャリアには、所狭しとバイクが積まれていたのです。

「ああ、重要な選手だから、念には念を、きっとメカトラが連続して発生した時のために何台もスペアバイクを積んでるんだ」と自身を納得させた方もいらっしゃるかもしれませんが、13.9kmの個人タイムトライアルで何回もバイク交換している時点でステージ優勝に絡めないのは明らか。実は、密なバイク積載の裏には戦略的な理由があったんです。

ずばり、少しでもガンナが速く走れるようにするため。「え?スリップストリームに入るわけではないのに?」と疑問に思うかもしれませんが、しっかりと意味があるのです。ものすごくざっくり分かりやすく説明すると、チームカーが前方の空気を押し出すため、その前を走るライダーにかかる空気抵抗が軽減されるという理論。もちろんチームカーの抵抗が大きければ大きいほど(バイクを積めば積むほど)、そしてライダーとの距離を詰めれば詰めるほど軽減率が下がるので、スペアバイクを満載したチームカーがUCIルールが定めた10mギリギリの車間距離をとって煽り運転状態(日本で言うところの車間距離不保持違反状態)で走行していたのです。つまり中継用モーターバイクがライダーのすぐ後ろを走っている場合は損をしているということになります。

サイクリングニュースの分析記事によると、ライダーの10m後ろをチームカーが走った場合の空気抵抗軽減率は0.23%。これは50kmの距離を走った時に3.9秒のタイム短縮に相当する数値で、今回の13.9kmコースだと約1秒短縮できる計算だそう。たかが1秒、されど1秒。その1秒のタイム差が勝敗を分つ可能性だってあったわけです。

アワーレコード挑戦への期待がかかるガンナ

アワーレコード挑戦への期待がかかるガンナ

ちなみにイネオスと同様にスペアバイク満載のチームカーを走らせていたのは、確認できた範囲でクイックステップ・アルファヴィニル、ユンボ・ヴィスマ、ロット・スーダル、ボーラ・ハンスグローエ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ、トタルエネルジーといったところ。ステージ2位のレムコ・エヴェネプール(クイックステップ・アルファヴィニル)は満載スタイル、ステージ3位に入ったタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)は1台積載スタイルでした。チームカーにスペアバイクを満載することはUCIルールに抵触する行為ではないものの、公平さに欠けるという意見も出ているため今後UCIが台数を取り締まる可能性はあります。

ステージ優勝したガンナの平均スピードは54.569km/h。追い風基調だった後半の直線区間は常に500W前後で踏み続け、60km/h前後で巡航していたはずです。本当に途方もないスピードですが、ガンナにとって超高速巡航は得意分野そのもの。東京五輪団体追い抜きでは、4人で4kmの距離を3分42秒032で走り切って世界新記録を樹立。スタンディングスタートで平均スピードが64.8km/hなので、実際の巡航スピードは68km/hに迫ります。

そんなガンナに期待したのはやはりアワーレコード挑戦でしょう。現在のアワーレコードはヴィクトール・カンペナールツ(ロット・スーダル)の55.089km。一般サイクリストが1秒もキープできないような55km/hオーバーというスピードで1時間走り続けるという凄まじい記録ですが、ガンナは2021年10月のテスト走行で30分間にわたって57.5km/hで走行済み。さすがに57.5km/hをキープして1時間走り続けるのは無理だとしても、アワーレコード新記録樹立のポテンシャルが十分にあると言えます。ロードレースとの兼ね合いがあるので具体的な挑戦日時は決まっていませんが、今後のトップガンナの動向に注目です。

そして、初めてUCIワールドツアーのステージレースで対決するエヴェネプールポガチャルは、初日からガンナ以外のTTスペシャリストを退けるという衝撃的な走りを見せ、好位置につけたままティレーノ〜アドリアティコ後半戦へ。「壁」の第5ステージと「山」の第6ステージで果たして両者はどんな走りを見せるでしょうか。

文:辻啓

レース詳細ページ

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辻 啓

海外レースの撮影を行なうフォトグラファー

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