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サイクル ロードレース コラム 2022年3月5日

【Cycle*2022 パリ~ニース:プレビュー】欧州でのワールドツアーステージレース第一弾「太陽へと向かう」レース!8日間のレースは、真のオールダウンダーを選び出す。

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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前回大会2度の落車で総合優勝を逃したログリッチ

前回大会2度の落車で総合優勝を逃したログリッチ

灰色の空から逃れるように、プロトンは南を目指す。日を重ねるごとに、気温は和らぎ、ステージが進むに連れ、花芽は膨らんでいく。「太陽へと向かう」レースが、今年も、自転車界に春を連れてくる。

1月末から欧州各地や中東で足慣らしを続けてきた選手やチームにとって、いよいよ「本番」がやってきた。なにしろ3月6日(日)に開幕するパリ〜ニースこそ、欧州でのワールドツアーステージレース第一弾。しかも伝統的に「ミニ・ツール・ド・フランス」と呼ばれる8日間のレースは、真のオールダウンダーを選び出す。隣国で同時期に行われるティレーノ〜アドリアティコと並んで、その年のグランツール勢力図を占う重要な材料となる。

ただし序盤3日間はいわゆるスプリンター向け。だからこそファビオ・ヤコブセン、サム・ベネット、ディラン・フルーネウェーヘンといった「ピュア」度の高いスプリンターはもちろん、ワウト・ファンアールト、ソンニ・コルブレッリ、マッテオ・トレンティン、ブライアン・コカール、マッズ・ピーダスン、ビニヤム・ギルマイ……と上れるし悪路もこなせる俊足たちが、スタートラインにこぞって集結する。

パリの西郊外から走り出す初日は、決して単純ではない。マント・ラ・ヴィルを中心に大小2つの周回をこなし、フィニッシュ手前約6kmには小さな急坂が待ち受ける。また2日目は「強風の通り道」ボース平原を南下するし、3日目は後半アップダウン含みに加えて、フィニッシュはかなりの上り基調。総合を狙う者たちも、中切れや横風分断には最大限に警戒せねばならない。

総合を巡る争いは、いよいよ4日目から本格化する。とは言えこの日の個人タイムトライアルは、距離は13.4kmと極めて短い。しかもラスト700mは勾配8.6%の急坂。つまりクライマーたちが大きくタイムを失う危険性はなく、パリ〜ニースの魅力のひとつである「僅差を巡る争い」を揺るがすこともなさそうだ。ちなみに過去10大会の、総合首位と2位の平均タイム差は19秒。最大が2013年の55秒で、最小は2017年の2秒だった。

雄大なな山並みを望む

雄大な春の山並みを望む

中央山塊を通過する第5ステージと、一気に地中海に接近する第6ステージは、無数に散らばる山岳ポイントを収集しつつ、逃げ切りを試みる者たちに要注意。

最難関ステージは、大会7日目の土曜日に待ち受ける。フィニッシュの舞台は1級山岳コル・ド・テュリニ。ツールでも何度か使用されたことのある峠だが、この山で勝負が決するのは2019年大会に続く史上2回目。山道の平均勾配は7.3%で、10%を超えるゾーンもあちこちに散らばる。また正式な登坂距離は14.9kmながら、実質は約40kmかけて、標高146mから標高1607mの高みへと上り詰めねばならない。

それにしても、ニースに再び大会が帰ってくるというのは、なんと喜ばしいことだろう。2020年大会は第7ステージのスタートこそニースから切られたものの、新型コロナウイルスの急速な感染拡大により、日曜日のニースステージは中止された。また2021年大会はニースに一歩も足を踏み入れなかった。厳しい外出制限が布かれた市街地を避け、人里離れた山奥に急遽周回コースが用意された。

2022年のニース市民は、第7ステージでスタートを、最終第8ステージではスタートとフィニッシュを見届ける。特筆しておくが、フランスではすでに、屋外でのマスク着用義務は撤廃された(主催者等の指定がある場合は除く)。ファンたちもかつてのスタイルで観戦を楽しむことが許される。

ニースフィニッシュが3年ぶりならば、エズからのダウンヒルフィニッシュは5年ぶり。最終日115.6kmの短距離コースには5つの山が詰め込まれ、締めくくりに鷹の巣村のてっぺんから、海岸道路までの15.3kmを一気に駆け下りる。手に汗握るスリリングな戦いが、保証されている!

そもそもパリ〜ニースの最終日は、どんな地形であろうが、例年はらはらドキドキの展開となる。大胆な者たちが、数秒差をひっくり返そうと、超攻撃的な走りを見せるおかげだ。過去10年で優勝者が入れ替わったのは3回。表彰台が1人も入れ替わらなかったのは、たったの2回だけしかない。

そして2年前は初日から最終日まで首位を守り通し、1年前は最終日に大逆転を果たしたマキシミリアン・シャフマンが、3連覇目指して大会に乗り込む。一方で(落車で)逆転負けを喫したプリモシュ・ログリッチも、失った黄色いジャージを取り戻しにやってくる。

昨ブエルタ総合表彰台に上ったジャック・ヘイグとブエルタ新人賞ジーノ・メーダーのバーレーンコンビや、チームこそ違えどサイモンとアダムの2人のイエーツは、間違いなく手強いライバルとなる。また今年こそジロ総合表彰台に乗りたいジョアン・アルメイダの総合力や、再びツール総合表彰台乗りへの野心を燃やすナイロ・キンタナの登坂力も見もの。

もちろん地元フランスは、25年ぶりの仏人覇者を待ち焦がれる。ギヨーム・マルタン、ダヴィド・ゴデュ、ピエール・ラトゥール、オレリアン・パレパントルにクレマン・シャンプッサン……と上れる選手は揃っている。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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