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【Cycle*2022 ストラーデ・ビアンケ:プレビュー】現役世界チャンピオンのアラフィリップもマイヨ・ジョーヌのタデイ・ポガチャルも参戦!「白い道」が強く美しき英雄を選び出す。
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかアラフィリップとポガチャルが参戦
春がまた巡ってきた。行く手には白い道が伸びる。走る者たちの闘志を燃え上がらせ、見る者たちのロマンをかきたてる……そんなストラーデ・ビアンケが、今年も強く美しき英雄を選び出す。
クラシックと呼ぶにはいまだ新しすぎる大会ではあるけれど、16回目の今年も、伝統に則り例年と同じルートが用意された。中世の姿をそのまま残すシエナから走り出し、再びそのシエナへと帰り着く184kmの旅。途中プロトンがぐるりと一回りするのは、シエナ南部に広がるトスカーナの丘陵地帯で、ようやく萌えだしたぶどう畑や糸杉の合間を縫うように、白い道=ストラーデ・ビアンケがあちこちで待ち構える。累計獲得標高は3200mで、未舗装セクターは全11ヶ所・通算63km。
肝心の未舗装路は、スタート直後の17.6km地点から始まる。立て続けに襲いかかる4つのグラベルセクターを乗り越えるうちに、早くも集団はひと回り小さくなるだろう。特に第2セクターには平均6.4%・最大10%超の急坂もそびえ立つ。
60kmすぎから、プロトンは新たな試練に直面する。モンタルチーノの全長4km・平均5%の上りを全速力で駆け上る必要があるし、てっぺんから全速力で下り折りたら、直後にグラベル2連発に突っ込まねばならない。第5セクター11.9km(最長)+舗装路1km+第6セクター8kmの組み合わせは、長く、アップダウン満載で、わずかなミスやメカトラは命取りとなる。
やはり勝負が本格的に動くのは、フィニッシュまで54km地点から始まる第8セクターだろうか。全長11.5kmの白い道の、真ん中に突き出すサンテ・マリエの勾配10.3%の上りが、いつだってエースたちの真の実力をあぶり出す。まさに1年前も、この地で世界王者ジュリアン・アラフィリップの加速が炸裂し、メイン集団を粉々に破壊している。
最初から一瞬たりとも気が抜けず、中だるみする時間が一切ないのがストラーデ・ビアンケの素敵な特徴なのだが、ラスト50kmはまさに息つく暇さえない。アップダウンは細かさを増していき、選手たちの脚と集中力とを削っていく。特に残り25kmからの3つの未舗装路の、3つの短い急坂は、最大勾配10%、15%、18%、とクレシェンド。つまりライバルを試すのには最高の場所であり、昨大会はここでワウト・ファンアールトは限界を露呈し……最終第11ゾーンの最大18%の上りで、マチュー・ファンデルプールが大きな攻撃を振り下ろした。
白い砂埃をあげながら走るプロトン
もちろん真の勝者を決めるのは、いつだってフィナーレへと続く激坂なのだ。シエナ旧市街のカンポ広場へと誘う、石畳の狭き坂道は、ラスト1kmは平均勾配12.4%・最大勾配16%にも達する!
その激坂ですべてをねじ伏せて、昨大会の覇者となったファンデルプールは、残念ながら欠場。そもそも昨五輪以来引きずる背中の痛みで、今シーズンは未だ発進せず。少なくとも3月半ばまではレースを走らない予定だという。
2年前の勝者ファンアールトは、あえて走らない。1週間前の「オープニングウィークエンド」でオムロープ・ヘット・ニュースブラットを制し、脚の調子は最高だが、今後やってくるモニュメント連戦に向け体力を無駄遣いしない方針らしい。
幸いにも2019年王者にして昨大会2位、なにより現役世界チャンピオンのアラフィリップも、昨季2つの起伏モニュメントを手にしたマイヨ・ジョーヌのタデイ・ポガチャルも、白い道に勇んで乗り込んでくる。
過去5度参戦し優勝1回・トップ10入3回のティシュ・ベノートや、昨大会初挑戦で5位に食い込んだトーマス・ピドコックもまたスタートラインに並ぶ。ジャンニ・モスコンは6度目の参戦で初めてエースに指名され、ブノワ・コスヌフロワは念願叶って初めての挑戦だ。表彰台2回のアレハンドロ・バルベルデにとっては、41歳の春、人生最後のストラーデ・ビアンケを戦う。
また日本の中根英登も初参戦。同日に行われる女性版ストラーデ・ビアンケには、2019年大会で13位に食い込んだ與那嶺恵理も出走する予定だ。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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