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サイクル ロードレース コラム 2022年2月17日

【Cycle*2022 UAEツアー:プレビュー】UCIワールドツアー開幕!ロードレース最高峰シリーズはポガチャルら参戦のUAEで幕を開ける

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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前回大会王者のタデイ・ポガチャル

前回大会王者のタデイ・ポガチャル

ようやく…、ようやくUCIワールドツアーが開幕する。ここから10月まで続く、サイクルロードレース界最高峰の戦い。今年も中東はUAE(アラブ首長国連邦)で、そのスタートを切る。

本来であれば南半球・オーストラリアで開幕しているはずのワールドツアーだが、感染症予防にかかる国の指針に基づき、2年連続で中止の決定。昨年に続き、初戦はUAEツアーとなった。

UAEツアーとしての歴史は、これが4年目と浅い。ただ、それ以前にも同国ではアブダビ・ツアーとドバイ・ツアー、2つのハイクラスのステージレースが行われており、発展的な合併によっていまに至っている。中東のサイクルスポーツ熱の高さをさらに押し上げるべく、ジロ・デ・イタリアを主催するRCSスポルト社がこの大会の運営を担う。

主催者こそ異なるものの、今年のシーズンイン以降プロトンはサウジ・ツアー(サウジアラビア)、ツアー・オブ・オマーンとアラビア半島諸国を転戦。UAEツアーはその最後を飾るレースでもある。今回も、同国を構成する7つの首長国を満遍なく走るルートが用意された。

まず手始めとばかりに、開幕からの2日間は平坦ステージ。砂漠の中を突き進む、“ザ・中東”のレースが見られるだろう。続く第3ステージが、個人総合争いの第1関門。9kmの個人タイムトライアルで各選手の状態がチェックできるはず。第4ステージは今大会1つ目の山岳ステージ。昨年は大会後半に登場したジュベル・ジャイス(登坂距離19km、平均勾配5.6%)が上位戦線の人数を絞り込む。再びスプリンターの競演が第5・第6ステージで展開されると、戦いはいよいよ最終ステージへ。その第7ステージに、毎年好勝負が繰り広げられる山岳ジュベル・ハフィートが待ち受ける。頂上の標高は1025m、登坂距離10.6kmで平均勾配は6.6%。フィニッシュ前3kmで最大勾配11%に達する。主催者が最後の最後に持ってきたクイーンステージを終えたとき、2022年大会の覇者が決定する。

砂漠の中を走るプロトン

砂漠の中を走るプロトン

個人総合争いを左右する、大会名物の山岳2ステージ。例年サバイバルレースの様相を呈し、最終的に生き残った選手がそのまま総合上位を占めている。そして中東といえばもう1つ、砂漠で吹き荒れる強風もレースの流れを一変させる要素。昨年は第1ステージからプロトンがいくつにも分断され、結果的に前線に残った選手たちが最後まで上位で走り続けた。

そんな好勝負必至のワールドツアー開幕戦には、第1カテゴリーのUCIワールドチーム全18チームに加えて、第2カテゴリーにあたるUCIプロチームからアルペシン・フェニックス、バルディアーニCSFファイザネ、ガズプロム・ルスヴェロが参戦。21チームがスタートラインへ着く。

なんといっても注目は、タデイ・ポガチャルの出走だ。彼を擁するUAEチームエミレーツにとって、このレースはツール・ド・フランスと並ぶ最重要イベント。ここでの勝利は“国家命令”でもある。昨年の大会で勝利し、ミッション達成から1年。2連覇へ向けて、前回3位のジョアン・アルメイダ、山岳アシストのラファウ・マイカ、上りの走りが計算できるジョージ・ベネットらをしたがえて挑む。また、今季すでに2勝と好調のフェルナンド・ガビリアはスプリントステージで勝利量産へ。最強布陣でホームレースに臨む。

メンバーだけなら死角が見当たらないが、先ごろポガチャルに新型コロナウイルスの陽性反応が出て、今大会への調整変更を余儀なくされているあたりが本番でどう出るか。チームとしては、大会制覇へのファーストチョイスがポガチャルであることは揺るがないものの、状況次第ではタイムトライアル・山岳とも高いレベルで力を発揮できるアルメイダを代役として想定しているかもしれない。

前々回大会を制し、前回も個人総合2位。過去2回ポガチャルとの好戦を演じているアダム・イェーツもシーズン初戦。イネオス・グレナディアーズは総合エースのイェーツに加えて、フィリッポ・ガンナがタイムトライアルステージでの勝利を狙う。

ボーラ・ハンスグローエは、移籍加入組のアレクサンドル・ウラソフとジャイ・ヒンドレーの双頭体制。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで初のグランツール総合表彰台を収めたジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス)や、先のツアー・オブ・オマーンで個人総合優勝を果たしたヤン・ヒルト(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)にも注目。昨年半ばの戦線復帰から着実に復活ロードを歩むトム・デュムラン(ユンボ・ヴィスマ)は、本職のタイムトライアルで優勢に持ち込めるとおもしろい。

個人総合争いと並行して、ポイント賞争いも見ごたえ十分。前述のガビリアに加えて、サウジ・ツアーで2勝のディラン・フルーネウェーヘン(チーム バイクエクスチェンジ・ジェイコ)、ツアー・オブ・オマーンで1勝のマーク・カヴェンディッシュ(クイックステップ・アルファヴィニル)、ツール・ド・ラ・プロヴァンスで1勝のエリア・ヴィヴィアーニ(イネオス・グレナディアーズ)が最有力候補だ。

そこに、ヤスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス)やケース・ボル(チームDSM)といった今季初レース組、ここまで未勝利ながらも状態は良いアルノー・デマール(グルパマ・エフデジ)が加わる。古巣へ戻ったサム・ベネット(ボーラ・ハンスグローエ)は、故障が長引いた膝の具合がどうか。かつてチーム右京に所属し日本と縁があるジョン・アベラストゥリ(トレック・セガフレード)の動向も押さえていきたい。

レースは2月20日から26日まで。選手たちの走りはもとより、高層ビル立ち並ぶアブダビやドバイの街並み、一面に広がる砂漠、パーム・アイランド…といった、魅惑たっぷりのUAE名物にもレース映像を通じて触れてほしい。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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