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サイクル ロードレース コラム 2022年2月14日

【Cycle*2022 ツール・ド・ラ・プロヴァンス:レビュー】世界王者たちが競り合った濃厚な4日間 キンタナが19個目のタイトル獲得

サイクルロードレースレポート by 辻 啓
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タイムトライアル、平坦横風高速ステージ、丘陵登りスプリント、本格山岳フィニッシュという、ステージレースの要素を詰め込んだツール・ド・ラ・プロヴァンスが終わった。開催期間はたった4日間だが、毎日活躍する選手が異なり、毎日サプライズが起こる、これほどまでに濃度の高いステージレースを他に知らない。

存在感を見せたクイックステップ・アルファヴィニルとイネオス・グレナディアーズ

存在感を見せたクイックステップ・アルファヴィニルとイネオス・グレナディアーズ

現在ヨーロッパでは様々な新型コロナウイルス対策が施された上でレースが開催されている。開催状況はほぼパンデミック前に戻っているが、それでもやはりウイルス蔓延の影響はレースに出てしまう。今大会の中で最も影響を受けたのが、クイックステップ・アルファヴィニルとイネオス・グレナディアーズという二大チームだった。前者は、クラシックシーズンに向けてここプロヴァンスでシーズンインする予定だったカスパー・アスグリーンと、1年前に開幕ステージ2連勝を飾ったダヴィデ・バッレリーニの陽性が開幕直前に発覚したため、他チームより2人少ない5人での出走に。後者は順調に総合優勝に向けて駒を進めていたリチャル・カラパスが大会期間中に陽性となったため総合エースを失う事態に見舞われた。

それでもなお主役はクイックステップとイネオスだった。まずはタイムトライアル世界選手権2連覇中の「トップガンナ」ことフィリッポ・ガンナが初日のプロローグ(短距離個人タイムトライアル)で圧勝。平均スピード52.81km/hという猛烈なスピードで7.1kmコースを駆け抜け、チームメイトのイーサン・ヘイターとともにイネオスにワンツー勝利をもたらす。
さらに横風集団分断作戦が実行された平均スピード46km/h超の第1ステージで、イネオスはエリア・ヴィヴィアーニを集団スプリントに導いてステージ2連勝。カラパスの新型コロナウイルス陽性リタイアまで、大会前半戦のイネオスは順風満帆、波に乗っていた。

大会後半戦に入ると、主役の座はクイックステップに移る。数週間前の体調不良によりトレーニングキャンプをパスし、「100%の状態ではない」と語っていたロード世界王者ジュリアン・アラフィリップが前年度の総合2位からジャンプアップを狙って攻撃体制に。第2ステージの登りスプリントこそコフィディスのブライアン・コカールに及ばなかったが、ガンナから2秒遅れの総合2位というポールポジションにつけた状態で最終日の1級山岳モンターニュ・ド・リュール(全長13.4km/平均勾配6.74%)に挑むことになった。

大会を締めくくる標高1,570mの峠頂上まで4.5kmを残して飛び立ったのは、アラフィリップではなく、アルケア・サムシックのナイロ・キンタナだった。総合で32秒遅れのキンタナの加速に対応できたのはアラフィリップだけ。しかし、ポーカーフェイスを浮かべて何度も加速するキンタナの緩急のついた走りに、アラフィリップはついに遅れてしまう。

「小さなミスを犯した。(キンタナに)反応してついていくべきではなかった」と振り返る通り、オーバーヒートしたアラフィリップの視界からキンタナの背中が離れていった。

緩急のついた走りでアラフィリップを置き去りにしたキンタナ

緩急のついた走りでアラフィリップを置き去りにしたキンタナ

同日に母国コロンビアで開催されたナショナル選手権(イギータ優勝)ではなく、パリ〜ニースの準備レースとしてプロヴァンスにやってきたキンタナが1級山岳で圧勝。ステージ優勝と、まだ新型コロナウイルスの影響が出る前の2020年大会に続く2度目の総合優勝を果たした。過去にパリ〜ニースに登場した際のモンターニュ・ド・リュールと比較すると、2009年のアルベルト・コンタドールよりも、2013年のリッチー・ポートよりも登坂タイムは1分以上速かった。VAM(平均登坂速度=1時間で登れる標高差)も約1,700m/hと、ハイシーズン並みの数字を叩き出している。

2度目の総合優勝を果たしたナイロ・キンタナ

2度目の総合優勝を果たしたナイロ・キンタナ

19個目のステージレース(UCIクラス1以上)総合優勝のタイトルを手にしたキンタナ。これは現役選手の中でバルベルデ(24勝)に次ぐ数字で、フルーム(17勝)やニバリ&ログリッチ(14勝)を凌ぐ。ジロ・デ・イタリアは2014年に、ブエルタ・ア・エスパーニャは2016年に総合優勝を経験し、ツール・ド・フランスでは3度総合表彰台に登っているが、マイヨ・ジョーヌはまだ着用したことさえない。これまで一貫してスペイン語でインタビューを受けてきた32歳のベテランクライマーは、フランスチーム3年目の今年、フランス語での受け答えに切り替えている。プロヴァンスの次の目標はパリ〜ニース初制覇。そして自身9回目のツールではスロベニアの双璧を崩す存在になるかもしれない。

キンタナとアラフィリップに次いで、21歳のマティアス・スケルモースが総合3位、22歳のマッテオ・ヨルゲンソンが総合4位、21歳のイラン・ファンウィルデルが総合6位に入るなど、まだ年齢的にはU23カテゴリーの新鋭たちの活躍も目立った今大会。最終日までリーダージャージを着用したガンナは、カラパスに代わって総合成績を狙い、体重82kgと大柄ながらピュアクライマーに混ざって1分21秒遅れで健闘フィニッシュ(総合7位)。しかしレース中に補給地点でディスクブレーキバイクから軽量なリムブレーキバイクに乗り換えたため、「チームカー、共通機材サービス、サグワゴン以外から提供される自転車に交換するまたは許可されたゾーン外で自転車を交換する(UCIルール2.12.007 4.8)」に該当する行為であるとしてレース後に失格処分を受けている。

文:辻 啓

代替画像

辻 啓

海外レースの撮影を行なうフォトグラファー

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