未舗装路や激坂も登場する、最も若い5日間の中東レース │ サウジツアー2022プレビュー

サウジツアー

2022年シーズンが始まった！定番の開幕戦だったツアー・ダウンアンダーの中止に伴って、シーズン序盤の存在感と重要度を増しているのが中東レース。その中で最も若く、最も時期が早いサウジツアーがサウジアラビアで開催される。UCIのレースカテゴリーはワールドツアーでもプロシリーズでもなくクラス1だが、ツール・ド・フランスと同じASOが手がけるステージレースだけに格下カテゴリーとは到底思えない規模と豪華さだ。

出場するUCIワールドチームは8チームで、しかも最多勝チームのクイックステップ・アルファヴィニルやUAEチームエミレーツというグランツール常勝チームまで勢揃い。そこにアルペシン・フェニックスやトタルエネルジー、アルケア・サムシックというUCIプロチームが加わる。バイクエクスチェンジ・ジェイコの宮島正典マッサーもこのサウジツアーでシーズンインする。

2020年の第1回大会（2021年は中止）はサウジアラビアの首都リヤドを中心に開催され、連日の平坦ステージでピュアスプリンターたちがボーナスタイムによる僅差の総合争いを繰り広げた。しかし第2回大会はリヤドの約1000km西に位置するアルウラー周辺に舞台を移すためガラッとレースの性質を変える。ざっくり言うと奇数ステージがスプリンター向きで偶数ステージがクライマー向き。国旗と同じ緑色の総合リーダージャージ着用者を決める第1ステージの終盤には、全長7.5kmのグラベルセクションが登場する。サウジアラビア初のユネスコ世界遺産『ヘグラ』を走る砂漠の未舗装路の荒れ具合は未知数。ここで『チーム移籍組』であるサム・ベネット（ボーラ・ハンスグローエ）とディラン・フルーネウェーヘン（バイクエクスチェンジ・ジェイコ）がまだ見慣れない新ジャージでの先頭フィニッシュを願っている。

しかしガッツポーズ評論家を納得させたい彼らの前には、カレブ・ユアン（ロット・スーダル）やナセル・ブアニ（アルケア・サムシック）、ダヴィデ・バッレリーニ（クイックステップ・アルファヴィニル）という一流スプリンターが立ちはだかる。リードアウトトレインのスピード対決ではボーラvsロットの様相か。中東レースだけにフェルナンド・ガビリア（UAEチームエミレーツ）やジョナサン・ミラン（バーレーン・ヴィクトリアス）にかかるプレッシャーも大きい。

残り10kmを切ってから高低差200m（全長1.7km・平均勾配9%）を駆け上がる第2ステージで総合優勝候補は絞り込まれ、さらに最終日前日の第4ステージでグリーンジャージの持ち主は明確になる。アルウラーの街を見下ろす展望台に向かって高低差370mを駆け上がる。2.7kmにわたって平均勾配12%が続き、最大勾配が22%まで跳ね上がる登りは、主催者の言葉を借りると「まるでブエルタのアングリル」。中東シリーズを代表する勝負所になりそうなこの登りで2代目チャンピオンが決まる。

サウジツアー

過去の戦歴を見る限りルイ・コスタ（UAEチームエミレーツ）やルーベン・フェルナンデス（コフィディス）、ビクトル・デラパルテ（トタルエネルジー）というベテラン勢がグリーンジャージ候補に挙がるが、ともに22歳のアンドレア・バジオーリ（クイックステップ・アルファヴィニル）とサンティアゴ・ブイトラゴ（バーレーン・ヴィクトリアス）、23歳のアントン・チャーマ（ウノエックス・プロサイクリング）という新鋭たちも見逃せない。さらに、飛び級でUCIワールドチームのボーラ・ハンスグローエ入りを果たした18歳キアン・アイデブルックスがJ SPORTS初登場。「その才能、レムコ以上」との呼び声高いベルギー人の鋭さや如何に。

サウジアラビアと日本の時差は6時間。ヨーロッパレースよりも数時間早く（おおむね22時前後に）フィニッシュするため、徐々にハイシーズンに向けて感覚を研ぎ澄ませたいロードレースファンにもおすすめの時間設定になっている。

文：辻 啓