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サイクル ロードレース コラム 2007年9月4日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2007】第3ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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まるでワンデークラシックのような、ゴール前の急坂。登坂距離700m・斜度7.5%と言われる登りを駆け上がって、ゴール前少数スプリントを制したのは、現役ではおそらく世界一の“クラシックハンター”パオロ・ベッティーニ(クイックステップ)だった。クラシックレース8勝、旧ワールドカップ3連覇、そして五輪金メダリストであり現役世界チャンピオンは、自らのスタイルに最適なコースで、自らのやり方で勝利を手に入れた。

ガリシア地方から3日連続スタートを切ったこの日、アンヘル・バジェーホ(リラックス・ガム)とダビ・デラフエンテ(サウニエルドゥバル)と共に、セラフィン・マルティネス(カルピン・ガリシア)が今大会2度目のエスケープに乗った。第1ステージの大逃げで山岳賞を獲得した生粋のガリシア選手は、今ステージでも登場した4峠全てでポイントを獲得。最後のバビア峠登りでは、すでに逃げ集団から脱落していたが、それでもプロトン前方に留まりしっかり3位通過を果たしてシルバージャージを堅守した。

その最終バビア峠の下りから、レースは大きく動き出す。ここまでマイヨ・オロのオスカル・フレイレ率いるラボバンクが集団コントロールに努めていたが、突如としてエウスカルテルがプロトン前方で急降下を始めたのだ。恐ろしい加速は粘り続けたバジェーホとデラフエンテを吸収し、さらにプロトンさえもあっという間に分断した。前方についていけたのはプロトンの半分程度。ステージ優勝の可能性もあったトム・ボーネン(クイックステップ)やアレッサンドロ・ペタッキ(ミルラム)は後ろに取り残され、最終的には先頭から8分16秒も遅れてしまった。

エウスカルテルの突然の加速は、チームリーダーのサムエル・サンチェスを勝たせるためだった。バスク地方出身者で固められているこのチーム内で、珍しくサンチェスはアストゥリアス地方出身である。そしてこの日のゴール地点は、アストゥリアス地方。今大会の総合優勝候補にも上げられるサンチェスが、総合争いで一歩リードを奪うためには絶好のステージだったのだ。ところがゴール前20km地点で、チームメイトのアイマル・スベルディアが落車。今ツールで総合5位と好成績を上げ、難関山岳ではサンチェスのアシスト頭となるはずだったクライマーを苦境から救うため、チームは先頭から下がらざるを得なかった。左肩と左鎖骨を痛めて11分遅れで完走したスベルディアは、ゴール後の検査の結果、レース続行を決めたようだ。

オレンジ集団の代わりに前に出たのが、クイックステップ。美しいマリーナを眼下に臨む小高い丘へと向かって、猛スピードで突入していく。ゴール直前の登りでは小さなアタックが数度見られたが、アルカンシェルは決して逃げを許さなかった。そしてカーブを曲がった先に広がる、300mのフラットストレートで最後のスプリント。アラン・デーヴィス(ディスカバリーチャンネル)の背後から飛び出したベッティーニは、前日はどうしても追いつけなかったフレイレを背後に抑えると、今年2月のツアー・オブ・カリフォルニア以来となる久しぶりの優勝を決めた。

ベッティーニとフェンスに挟まれて、身動きが取れないまま2位ゴールしたフレイレは、総合リーダージャージとポイント賞ジャージを守った。ただし第4ステージから早くも難関峠が登場するため、フレイレにとっては今大会最後のマイヨ・オロとなりそうだ。また総合優勝争いに名前を上げられる選手たちは、揃ってベッティーニと同タイムでゴール。第1ステージの落車の影響が心配されるダミアーノ・クネゴ(ランプレ)は、34秒遅れでステージを終えている。

パオロ ・ベッティーニ(クイックステップ・イネリゲティック) ステージ優勝

僕にとって、この勝利はとても大きい。だって2月からずっと勝っていなかったからね。今日は特別な日となるだろうし、自信になるよ。チームの皆も良くやっていたと思う。同僚のカルロス・バレードがこのコースを熟知していて、良く話して聞かせてくれていたんだ。それで出てみたいって思った。それに、シュツットガルトでの世界選手権に向けての格好のステップになると思ったからね。フレイレの邪魔をした!?とんでもない。レース展開上の事であって、決してわざとやったわけじゃないよ。それに、僕らはとても仲が良いんだ。いずれにせよ、僕はこのブエルタを世界選手権に向けての調整の場だと捉えている。だから最後のマドリードまで走らないかもしれない。最初の休息日にどうするか決めるつもりだけど、恐らく最終日の2〜3日前に切り上げることになるかもしれないね。

オスカル・フレイレ(ラボバンク) マイヨ・オロ、ポイント賞獲得

僕は本当に怒っている。ベッティーニは完全に邪魔をしたからね。だから最後は思い通りのスプリントが出来なかった。とても狭いゴールだったし、スペースが無かった。

カルロス・サストレ(チーム CSC)

今日の第3ステージは明日の“決戦”に向けて重要な日となったね。レースの肩慣らしが終わり、いよいよ本番に突入していく為の準備の場という位置付けだった。明日はいよいよコバドンガ。みんな、早くもここが大一番となることを分かっているから、僕らもしっかりと準備は出来ている。山に入ったら常にアタックが展開されることを期待している。最も、僕は真ん中で様子を見ながら行こうと思っているけどね。ブエルタ・ア・エスパーニャのような3週間にも及ぶ長期戦では、常に冷静にレースを進めて行くことが重要だ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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